泣く子も黙る大妖怪 = 説教上手な大妖怪
どうも、東方転妹録最新話です!
えー、今回はぬえ視点でいきますよ!
そして今回ボケるのはなんと……!
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー1時間後、地霊殿、玉座の間。
ーーーーside ぬえ
玉座の前、これからは主に屋敷の主に謁見する者が立つ位置になるであろう場所に私は立ち、ある人物を後ろに拘束しつつ目の前の光景に目をやっていた。
「……こいし、私はこの罪をどう償えば良いのでしょうか? まさか、あんな…………」
「お、お姉ちゃん…………ま、まぁ私達も『あれ』にやられてフランの前でおかしくなっちゃったりしたし、それに私なんか『あれ』にやられてる間に御義姉様と口付けしたりしちゃったりしてるからお姉ちゃんも気にすることないよ!」
これから地底を管理する屋敷の主の為の玉座、そこにゆったりと腰掛けつつ絶望に身を任せ、俯きながら自らの妹へ懺悔を続ける屋敷の主ーーー古明地さとり。
姉の懺悔を聞きながら古明地さとりの妹である古明地こいしが必死に励ますけど、古明地さとりは絶望の表情を消すことはない。
そんな二人から視線を外し、二人の脇、玉座の横へと視線を向ける。
「御姉様! 目を覚ましてよ御姉様!」
「フ……ラン、は…………まも……れ……た…………わ…………」
「御姉様!? 御姉様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
「御義姉様…………おいたわしやなのだー……」
そこにいるのは全身を震わせながら必死に姉へと呼び掛けるフランと、1時間程前の騒動で本人にとって悪夢の修羅場をくぐり抜け満身創痍となり今にも朽ち果てそうなレミリア・スカーレット、そしてそんなレミリア・スカーレットが実際朽ち果てる訳もないと分かってか妙に自然な反応でボケているルーミアの3人だった。
おなじみの五人と私、そしてさとりすら狂わした『犯人』以外の他の面々は部屋の壁際に散ってそれぞれ玉座とその隣で繰り広げられる光景に苦笑を浮かべつつのんびりとしている。
ただ一人、黒谷ヤマメだけはあの大馬鹿によって首根っこを掴まれて捕まっているけど。
「……さて、再犯を犯したことへの弁明は何かある?」
後ろへ振り向きながら声を出し、今回騒動を起こし続けている『犯人』へと問いかける。
全身に貼り付けてやった私の札により、妖力はおろか能力すら現在封印されている『犯人』は、そんな絶望的な状況にあって尚ーーーー
「他人の不幸は蜜の味! 他人の嫉妬は最高だわ!!」
「はぁ…………ほんっとに、少しは反省の色見せろってのこの魔眼女ーーーー!!!!」
「ちょっ!? 電撃は駄目、電撃はぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?」
ーーーードヤ顔を私に向かってぶちかまし、私の全力の雷撃に悲鳴をあげていた。
……1時間程前の騒動、それは結局さとり自身が原因ではなく、今目の前でグッタリとしながらも黒い笑みを浮かべている水橋パルスィが原因だった。
パルスィの持つ魔眼、それはパルスィの能力の源であり、嫉妬を感じとることに関してはフランのような吸血鬼の瞳はおろか、犬走の千里を見渡せる瞳にすら打ち勝つ程の物らしい。
特に強い嫉妬程どんなに遠く離れていても感じることが出来るらしく、要は黒谷ヤマメに全力で嫉妬していたさとりの嫉妬は地上からでも感じ取れたということだ。
まぁ感じ取れても能力を使える範囲は届かなかったらしいから、さとりに能力を使ったのは最後に皆で地霊殿に向かってきていた時のことらしいけど。
つまり、私達が糸に絡めとられている時のさとりは素の嫉妬だったということだから…………まぁ、さとりは素でも恐ろしいことには変わりない。
「さて、馬鹿3号も地べたに突っ伏してる訳だし、次はっと……」
「うーん、封獣さんも結構容赦無いですね! 追撃も加えようとしてますし、流石フランさん親衛た……失礼、流石紅魔館の住民です!」
「ちょっ!? 私は追撃を加えようとしてるんじゃなくて次にすることを考えてただけだから! そして本音がだだ漏れだし!?」
「あやや、個人的な本音を漏らすとは記者として駄目です…………でも、私の本音は実際当たっていますよね?」
「……あんたもその一員、外部支部の一員みたいな立場だってこと覚えとくといいよ」
肯定も否定もせず、ただ一言そう告げただけの私に向かって右手を見せながら握りしめ、親指だけ立てる射命丸。
そしてその表情は見事なまでに輝く笑顔であり、射命丸の隣では犬走が頭を抱えて溜め息をしていた。
……犬走、あんたも今日紅魔館からフランを誘拐したことを考えれば溜め息なんてつける立場じゃないからね?
むしろ頭を抱えたいのはこっちだって…………どんだけフランの周りには変な奴が集まってんのよ……!
「……まあいっか、どうせこれで二人は暫くいなくなるし………… それで、今日はこれからどうすんのフラン?」
「うぅ、御姉様…………あっ、えっと、さっきの騒動の後に地霊殿も完成したし、一先ず地霊殿完成祝いの宴会かな? 勇儀達とか、もう別の部屋にお酒を用意してるみたいだし」
「にゃはははは!! 食料貯蔵庫を作ってから即座に酒とつまみの材料は置いといたからね! 何時でも宴会は出来るよ!」
「調理室はもちろん、調理用の器具だって完備済みだ! それときちんとフランの為の別の飲み物も用意してるぞ!」
「あんたらいつの間にそんな準備してたの!? 少なくとも私みたいに地上と地底を往復したりしてないよね!?」
「「宴会に関して、鬼に不可能という文字はない!!!!」」
駄目だ、このまま大馬鹿とちび馬鹿に付き合ってたら私の方がやられる。
そういえばちび馬鹿の能力は『何か』を集めることが出来たっけ…………まぁそれとフランの為の行動は素晴らしいということで納得しておこう。
納得しておかないと余計頭が痛くなりそう……。
「……小町、これは私も付き合わないといけないでしょうか? ここも出来上がったことですしそろそろ元の業務に戻らないと後が怖いのですが…………」
「なぁに言ってんですか映姫様! せっかくここまで付き合ったんですから最後までしっかりと付き合うのが筋ってものですよ! それに酒があるってのにみすみすそれを逃がす馬鹿な死神なんていやしない…………おっと、今のは聞かなかったことにしてくれません……?」
「「最後まで言い切って何を言うかこの駄目死神!」」
馬鹿過ぎる鬼達には付き合いきれないと逸らした視線の先にいた閻魔と死神。
二人の会話を聞いていて、思わずツッコミを入れてしまったのはしょうがないとしても、閻魔と同じことを同じ瞬間に一字一句違わず言ってしまったことが非常に悲しく感じる。
フランと出会って以降、普段から紅魔館での説教役に回っていたけど閻魔と一緒の練度にはなりたくなんか…………あぁ、閻魔の輝かしいほどの仲間を見つけた喜びの視線が私に突き刺さってくる!?
「名前は封獣さんでしたね! 今の私と寸分も違わぬキレのいい指摘っぷり、見事なものです!! 如何ですか、私と共に世界中の者達へ徳を積むための説法をして回りませんか!!!?」
「ちょっ!? 勘弁してよ! 私は妖怪、泣く子も黙る大妖怪のぬえ様よ!? どうして仏の真似なんかしないといけないのよ!!!?」
「妖怪だのなんだのと、種族は関係ありません! フランはその良い例です! 確かに妖怪らしい一面はありますが、普段は可愛く優しい子でしょう!?」
「そりゃフランは当然だけどさ!? って話しながらどんどん近付いてくるなぁ!!!!」
くぅぅ!! 私が一歩下がる度に閻魔が二歩近付いてくる!!
ってかここまでしつこくなるって、どれだけ自分の同類に飢えてるのよこの閻魔!?
と、とにかくフランの近くまで逃げないと……!
「あんたには同じ閻魔仲間か菩薩に説法仲間はいないわけ!? どうしてそこで私を選んだぁ!!」
再びきょとんとしているフランの側まで逃げて来てから、閻魔に向かってそう私が言い切ると閻魔の歩みが止まる。
同時に閻魔の顔には悲壮な表情が浮かび上がり、レミリア・スカーレットと古明地さとりの微妙な空気と混ざりあって周囲に変な緊張感を与え始めた。
その緊張感に反応してか、ルーミアとこいしもゆっくりと私の側に来て、フランを守るように位置取りをしている。
そしてそんな微妙な空気が数秒続いた後、閻魔はゆっくりと口を開きーーーー
「……だって…………」
「「「「だって……?」」」」
「だって、他の同職の皆さんは私の説教が長すぎるからって誰も一緒に説法を解いて回ってくれないんです!!!!」
「よしフラン、こいし、ルーミア、宴会の準備してこようか!」
「う、うん、そうだね!」
「それじゃあ私は一回紅魔館へ行って前掛けを取ってくるついでに、お客さん達を呼んでくるよ!」
「なら私は先にお酒を用意してくるのかー! 御義姉様とさとりに先に飲ませて軽く元気にしておくのだー!」
「えっ!? ちょっ、ま、待ってください!? 封獣さん、封獣さーん!?」
蓋を開けてみればとてつもなくしょうもない理由。
というか自業自得過ぎる理由に一発で放置することに決定した私達。
フランでさえ私達に合わせてるから、そのしょうもなさも分かるというものだ。
そうして後ろでひたすらに私の名を呼ぶ声を無視し、私はフラン達と一緒に我慢しきれなかった鬼と天狗、そして死神の笑い声が響く玉座の間を後にしたのだった。
ーーーーー
以上、ぬえのツッコミ祭り回でした!
いやー、ぬえにとてつもない苦労をさせてしまいましたね(笑)
しかしこれでぬえも以前のフランの苦労がわかるはず…………まぁフランは物理的ツッコミ祭りでしたが(笑)
映姫は…………まぁ、しょうがないですよね!
それではまた次回にてお会いしましょう!