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東方転妹録〜悪魔なんて言わせない!!〜  作者: 愛式未来
第3章 ~デンデンデデデン地霊殿!~
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潜入するなら音に御用心……ん? 保護?

どうも、東方転妹録最新話です!



前回のラスト、誘拐犯ではないと言いながらフランを抱えて逃げていた椛。

今回はそんな椛がメインの話となっていますよ!



それでは楽しんでいってください!

ゆっくりしていってね♪

ーーーーー<椛の回想>数分後、紅魔館廊下。

ーーーーside 椛



「ふむ……? 誰も、いませんね?」



流石に真っ正面から侵入するのもあれだと思って二階の隅の方の窓からこっそり侵入してみたが、その必要も無かったんじゃないかと思えるくらい誰もいない。

今は紅魔館の中央部分にある二階と一階を繋ぐ大きな階段の所に来ているが、ここに来ても尚誰も見掛けることは出来なかった。



「階段の踊り場には玉座の間という所に繋がる通路もあるのに、誰も警戒していない?…………いや、『出来ていない』?」



今までの経験上、普通なら美鈴さんの案内で屋敷に入った時点で連絡がなくともフランさんやこいしさん、ルーミアさんが私の尻尾を狙って現れていたし、それを見ながら微笑むレミリアさんやさとりさんがフランさん達に続いて妖精達と一緒に現れていた。

最近はそれに呆れ顔の封獣ぬえも加わっていたが…………。



「まぁ、文さんの言う通りならこいしさんやさとりさん、ルーミアさんに封獣さんはいなくても分かりますが……フランさんやレミリアさんもいないとは…………」



ゆっくりと音をたてずに踊り場まで行き、静かに扉を開けて玉座の間へと続く通路に入る。

このまま進めば十字路型の分岐が現れて、左手にフランさんやこいしさん達の部屋、右手にレミリアさんとさとりさんの部屋があったはずだ。

因みに右手の奥に進めば妖精メイド休憩室とやらがあるらしく、普段通りならここで妖精の一人や二人と出会ってもおかしくはないのだが…………今は全く気配がない。

まるで、何かの術に掛かってしまったような錯覚に…………錯覚?



「そういえば、妖精が得意とする分野は悪戯……となると幻惑系の妖術は得意のは、ず!!」


ーーシュッ、ガキィィィィィィィィィィン!!!!


「バレた!? くっ、全員戦闘配置!!!! この侵入者を排除して妹様を御守りするわよ!!!!」


「「「「「はいっ!!!!」」」」」



ここに来て、ようやく私の能力ーーー千里を見渡す程度の能力が役に立った。

この隊長格と思われる妖精、恐らくは私が妖術に掛かりきったのを確認して両刃刀で斬りかかってきたのだろうが、能力の確認できる範囲に両刃刀の閃きが見えたことでギリギリ防ぐことが出来た。

真っ正面から斬りかかれたことと丁度妖精の習性を思い出していたことも、それぞれ突然の事態に対処できた要因の一つだろう。



「妹様を御守りする、ですか…………今は主であるレミリアさんはいないのですか? それと、一応私はレミリアさんやフランさんの友人のはずなのですが……」


「今は厳重警戒体制です!! 如何に御嬢様方の御友人とあれど、紅魔館の住人以外は排除させていただきます!」


「なんとまぁ、物騒な……」



厳重警戒体制にまでなっているとは、本当に紅魔館(ここ)で何が起きているのだろうか?

切り結んでいる妖精の言葉によれば、妹様ーーフランさんは今紅魔館内にいるようだが、当主であるレミリアさんはいないらしい。

恐らくはさとりさん達と同様に地下にいるのだろうが…………とりあえず今は、ここを切り抜けるしかなさそうだ。



「とにかく、この場は切り抜けさせてもらう!!」


ーーキンッ、ズダダダダダダダダダッ!!!!



切り結んでいた両刃刀を弾き、割りと大量の弾幕を放つ。

普段からルーミアさん達に鍛えられているはずの妖精達だが、流石にこれくらい放てば幾ら鍛えられている妖精といえどもある程度数は減らせる…………なーんて、思っていた私が馬鹿でした。



「……えっ? あれっ?」


「「「「「この程度の弾幕になんて当たりません!!!!」」」」」



ある程度数を減らすどころか、一発もかすりもせずに避けられる私の弾幕。

確かに牽制するために放った密度の低い弾幕だったとはいえ、量はかなりの数あったはずなのだが、見事に軽々と避けられていた。

……哨戒天狗としての誇りがとか、まさか妖精ごときにとか、色々思うことはありますが……と、とにかくここを突破しましょう!

じゃないと、分岐にも辿り着いてないのにこんな一本道で、もし挟撃なんてされたらーーー。



「C班並びにD班突入!! 侵入者を挟撃します!!!!」


「E班突入! 接近して侵入者を迎撃します!!!!」


「ちょっ、ルーミアさん達はどれだけ鍛え上げているんですかぁ!?」


ーーズダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!!!!!!!!!!



人海戦術を用いて前後から降り注ぐとてつもない量の弾幕。

複数の種類の妖精から撃ち出された色とりどりの弾幕は、まるでフランさんの『スターボウブレイク』を思い出させる程に凄まじい弾幕だった。

この弾幕を見た感じ20人程の妖精達だけで撃ち出しているのも驚きだが、さらに驚いたのはこの弾幕の中をすり抜けながら手にした両刃刀で斬りかかってくる妖精が5人程いることである。

最早紅魔館の妖精達は、一般的な妖精とはかけ離れすぎていた。



ーーキンッ、ガキンッ!!


「くっ、多少の怪我をしても無理矢理にでも切り抜けないと……!?」


「「「「「覚悟ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


「貴女達は本当に妖精なんですかぁ!!!!!?」



私の視界を埋め尽くすこの光景は、最早私にとっての地獄絵図に違いなかった。

哨戒天狗のみならず、天狗全体の中でも優秀と言われることのある私でも本気で死を覚悟してしまうこの状況。

それが普段ならとるに足らない妖精の手によって引き起こされているのだから、思わず質問してしまったのもしょうがないだろう。

というか、普通に考えてもしょうがない。


……そんなどうしようもない思考回路を何とかまとめて、特攻になるが無理矢理前方を突破することを思考の端で私は決めていた。



「くぅっ……でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


ーービシッ、バシィッ……ドンッ!!!!


「えっ、なっ!? ぜ、前線、侵入者を突破させないで……きゃあっ!?」


「「「「は、班長!?」」」」



……これは痛い、本当に痛い。

特攻の甲斐あって確かに包囲網は突破できたが、おかげで私は満身創痍に近くなった。

弾幕を避けることもせずに前方の弾幕係の妖精達に突っ込み、運良く隊長格を切りつけて抑えることが出来たおかげで追撃はすぐに来ないものの…………妖術を用いてある程度の弾幕なら軽く凌げるように編んだはずの服は、上半身がほぼ跡形も無くなり、下半身部分もあちこち焼け焦げて穴が開いている。

その上、上半身に着込んでいた紺色の布も千切れとんでしまっていて、実質上半身は胸に巻いているサラシ以外服として意味を成していない。

怪我も、体のあちこちから血が溢れているし、頭部も怪我をしてしまったのだろうか、左の視界が赤く染まってしまっていた。

この様子だと、帽子も無くなっているのだろう。



「つぅっ……!? と、とにかく今は追手が来る前に距離を……いや、何処かに隠れないと……!!」



隊長格を抑えたことで指揮系統が混乱したのか、思ったよりも追撃が来ない。

妖精達は幾つかの部隊に分かれていたが、あの隊長格は本当に全体を統括していたのだろう。

そんなことを考えていると、玉座の間やフランさんの部屋に繋がる分岐に辿り着いていた。



「そういえば、当初の目的はフランさんの部屋だったっけ…………まぁ、流石に血だらけで入って汚す訳にもいかないから、ここは…………」



左手に行けばフランさんの部屋があるが、どんなに気になっても汚すのはいけないと思って右手の奥にあるメイド休憩室へと向かう。

まぁ元々追われている時点で、相手が守ろうとしている方の所に行くことはすぐに見つかってしまうことになるだろうし、何よりこの満身創痍な状態で見つかってしまっては本当に死んでしまう。

血を垂らさないようにしてきたから、後は出来るだけ重要度が低いところに行けば、隠れやすいはずだ…………そう考えている内に、私はメイド休憩室に辿り着いた。



ーーガチャッ、バタンッ…………。


「はあっ……はあっ…………これで、暫くは安全かな…………?」



なるべく音をたてずに扉を開け、休憩室の中に入る。

そして扉を閉めてから部屋の中を確認すれば、そこには誰もいなかった。



「ふぅっ……と、とにかく怪我を治さないと……妖力を集めて……!」



部屋の隅にあった二段式の寝台の一段目に腰掛け、息を整えてから以前勇儀さんに教えてもらった通りに患部に妖力を集める。

すると傷口はみるみる内に塞がっていき、やがて体の痛みも徐々に引いていった。



「左の視界も、大分戻ったかな……? さて、これからどうするか……」



部屋に外に通じるような窓はなく、丁度私一人なら通れそうな大きさの格子が掛けられた通気孔の様な物しかない。

となると脱出は扉からしかないが、扉の外からは未だにドタバタしている音しか聞こえてこないから今外に出れば即殺られるだろう。

よもや妖精がここまで育て上げられているとは思っていなかったから、色々と無念に感じるところである。


……そんなことを考えていると、上から音が聞こえてきた。



ーーー……ギシッ…………。


「っ!? 誰かいるのか!?」


「………………」



おもわず声を掛けてしまったが、扉の外はあいもからわず騒音しかしないし、上から聞こえた音の原因からは返答がない。

二段式の寝台の一段目に腰掛けていて、上から音が聞こえてきたということは二段目に誰かいるのだろうが…………そう思いながら、二段目に繋がる短い梯子に手と足を掛ける。

そして、ゆっくり二段目の寝台を覗き込むと…………。



「んみゅ…………すぅ…………すぅ……」


「フラン、さん? 寝てる……?」



そこには、本当に愛らしく可愛らしい寝顔で穏やかな寝息をたてるフランさんがいた。

そんなフランさんを起こさぬよう、ゆっくり二段目に登りきり、そっと寝台の上に乗る。

そしてフランの側まで来ておもわず頭を撫でると、より気持ち良さそうに頬を緩めて寝ながらフランさんは笑っていた。

どうしてこんな妖精達の休憩室で眠っているのか、そんな疑問がふと頭をよぎっていたけど今の私には本当にどうでもよく感じられて…………そして、背徳的な欲求が私の心を覆っていったのも、同時に感じていた。



「そっ……と、起こさないように……っと…………」


ーーー……ギュッ…………。



私の心を覆っていった背徳的な欲求、それに簡単に負けた私は軽々と従い、暖かそうな布団でフランさんをくるみながら懐に抱き抱える。

すると私の温もりを感じてくれたのだろうか、フランさんが甘えるように、しっかりと私のサラシの隙間を掴んだ。

……最早、少し大きめな赤子にしか思えない。

つまり、私はこのひたすら可愛い赤子をしっかりと保護しなければ一人にしていては危ない!



「よしっ、それではいきますか!」



敷き布団に敷いてあった薄い布を紐状に巻き取り、フランさんの体を私の体にしっかりと固定させてなるべく揺らさないように寝台の二段目から降りる。

そして私は扉の前にフランさんを抱えながら歩いていき、扉の前で一旦立ち止まって深呼吸をしてから扉の取っ手に手を掛けた。



「ふぁ…………すぅ……すぅ…………」


「本当に可愛らしいですね…………まぁこれも白狼天狗、妖怪としての性分です。 ちゃんとお持ち帰りさせてもらいますよ、フランさん」



そうだ、これは妖怪としての性分であり別におかしなことではない。

現に勇儀さんも一度フランさんを拐ったことがあるのだから。

第一こんな赤子を一人にしておく妖精達が悪いのだから、これは誘拐でなく保護でしかない。

そう、保護だから当然のことであって悪いことでもないのだ。

……そうやって色々と思いながら、私は扉を開け放ったのだった。




ーーーーー

以上、誘拐じゃないんだ保護なんだ回でした!



……ゆ、誘拐じゃないんです、保護なんデス!?

何度でも言います、保護なんです、フランが可愛いのがいけないんです!


……さて、次回は(下手な妖精より)最強レベルの妖精達にどう立ち回るのかなぁ?

アタイサイキョーさんですか?

そ、素質は最強の妖精ですよね!



それではまた次回にてお会いしましょう!

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