何があろうと大切なことを忘れたら……絶望するわよ? byレミリア
どうも、東方転妹録最新話です!
今回はフラン&レミリアでお送りしますが……皆さん、どなたか大切に人に隠し事をして、さらにそのことを忘れていたりしませんか?
忘れていることに気付いたなら、即手を回した方が良いですよ(笑)
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー十分後、紅魔館地下。
ーーーーside フラン
暗く、静かすぎる空間に響く二つの足音と少しだけ辺りを照らす二つの灯。
さとり達はそろそろ出発した頃だろうか、そんなことを思いながら、私は左手にレーヴァテインを持ちつつ右手で、同じく右手にグングニルを持つ御姉様の左腕にしがみついて地下への階段を降りていた。
……ここに来るのって、とても久しぶりだなぁ…………。
なんだかんだで1度目の家での後御姉様と再会してから、1度も来てなかったもん。
「御姉様、ここって久しぶりだね」
「そうね、私も閉じ込められたフランを追って来た時以外、あまり来たことはないわ…………正直、用途も必要性も無かったもの」
メイドは紅魔館内に休憩室や四人から八人ごとの部屋が割り当てられているし、倉庫だって上に十分な大きさのものがある。
非常時のための脱出経路もそこら中に窓があるし、万が一紅魔館の奥にいても大体の者が簡単な魔法を使えるから壁を壊しながらでも進むことができる。
とはいえ私や御姉様の一撃にも出来るだけ耐えられるよう設計してあるから、妖精であるメイドは1度ピチュることになるけど…………まぁそんな感じで、御姉様の言う通り、地下に必要性はなくなってるのが現状だ。
「じゃあ、『あの』部屋もそのままあるの?」
「そうよ、定期的にメイドに掃除させていたからすぐにでも使うことはできる位にはなっているはずだけれど…………あまり思い出したくないわね。 あぁ、フランの手紙もあそこにあるわ! 私が地下に幾度か来たのも、その手紙のためなのよ?」
「…………御姉様、レーヴァテインで燃やし「それはさせないわよフラン? あれはもう私の物で、私の大切な物なんだから」ても、って…………うぅ、見たくないよぉ……!」
「ふふっ、フランからしたら恥ずかしいのかもしれないけれど、私にとっては教訓と思い出をくれた大切な物なのよ。 私のためと思って、我慢してくれないかしら?」
「うぅぅ……は~い…………」
最早私の黒歴史と言っても過言ではないレベルの物が『あの置き手紙』なんだよね…………。
字はあまり上手くなかったし、内容も今思い返せば家出の前の置き手紙としてはあまり良いテンションじゃなかったし、何より月面戦争の前に御姉様との再会で教訓を得た今の私にとっては恥ずかしい物以外の何物でもないもん!
……そうして私は悶々と、御姉様は私をエスコートしながら地下を降りていき……遂に、最も下にある『あの部屋』の前に辿り着いた。
「うわぁ…………なんだか、懐かしいなぁ……!」
「まぁあまり良い思い出はないけれどね? それでも自分に喝を入れる時には世話になってきたわ」
目の前にそびえ立つ大きな扉。
それは私が御父様に連れてこられた時と一切変わっておらず、異様な雰囲気が辺りに漂っていた。
……うぅ、この部屋の中に『あの置き手紙』があるんだよね?
出来れば消し去りたいけど、御姉様がさせてくれないし、無理矢理したくもないしなぁ…………。
「さっ、見たくないものがあるのは分かっているけれど早く入るわよ? ここからが一番地下に繋ぎやすいもの」
「は~い……部屋じゃなくて、ここから掘るっていうのもダメだよね?」
「別に構わないけれど、階段が崩れたりするのは避けたいでしょう?」
御姉様の言葉に、納得はしながらも渋々と扉に向けて足を進める私。
当然私にしがみつかれている御姉様もほんの少しだけ引きずられる様に着いてきて、そして、私はゆっくりと扉を…………。
ーーーガチャッ、ギギィ…………グイッ! ガッ!
ゆっくりと扉を開け始め、中がハッキリと見えるようになった瞬間、急に大きな音をたてた扉。
その原因となった御姉様は扉を必死に閉めようと私の手の上から取っ手を引っ張っていて、対してもう一人の音の原因である私は扉を全力で開け放とうと体全体で扉を押し、私ごと扉を引っ張る御姉様に抵抗していた。
何故なら、一瞬だけ見えた部屋の中にあったのは…………。
「お・ね・え・さ・ま? 中にある大量の本の山、あれは一体何なのかな? 手前に一冊、タイトルが見えるように落ちてたよ……?」
「落ち着きなさいフラン、貴女が見たのはここに仕掛けられた幻惑魔法によって見えた幻よ! だからここは私に任せて部屋の外でしばらく待っていなさい、先に私が部屋の中を片付…………危険を排除してからフランは入ってくるのよ!」
「いやいや、それだったら御姉様だけに任せるのは不安だから私も一緒に入るよ! 良いよね、お・ね・え・さ・ま?」
「いやいやいや、もし他にトラップが仕掛けられていたらどうするの? それなら私とフラン、二人いるのだからいざという時のために一人残っていた方が良いわ!…………だから、扉を閉めなさいフラン」
「……そっか、なら…………燃えちゃえ!!!!」
ーーゴオオォォォォォォ!!!!!!!!
「っ!? あ、あつっ!!!!!?」
言葉通りの押し問答の末、出来るだけ御姉様だけを払う様にレーヴァテインから炎を吹き出させる私。
それに驚いて御姉様が私から離れた隙に、私は勢いよく扉を開け放って部屋の中に飛び込んだ。
ーーバタンッ!!!!
「ま、待ちなさいフラン!!!! フラァァァァァァァァァァァァン!!!!!!!!!?」
「……………………っ!?」
恐らく御姉様は最近色々あったせいでここでしていた事を忘れていたのだと思う。
部屋にある家具とは別に、床に置かれた沢山の本の山。
そのわきに見える魔方陣……いや、御姉様が使えた覚えがない錬金術の陣が書かれた紙。
何より大量にある本の内の一冊のタイトルは…………。
ーー『フラン観察日記ver110:著レミリア・スカーレット』
もしかして、これの復活のためだけに錬金術を覚えたの御姉様!!!!!?
ーーーーside レミリア
終わった、正にこの一言に尽きるだろう。
ここ最近フランが把握していた分の、八雲紫裁判以降の観察日記とは別に錬金術で灰から再構築していた過去の分の観察日記。
これらのためだけにさとりにすら気付かれぬよう影で錬金術の勉強をしてきて、つい先日、フランが三度紅魔館を飛び出す直前に完成したばかりの宝を…………きっと、一昨日取り付けたばかりの交換日記の約束と共に私は失うのだろう。
それほどにフランの背中からは凄まじい威圧感が溢れてきていて、十分に私の未来を暗くしていた。
もちろん能力なんて使っていないけれど。
「…………ふーん、そっか、そこまで御姉様は……」
「……………………」
ポツリポツリと聞こえてくるフランの声。
それが何を示しているかを考える余裕など、今の私にはない。
これから起こるであろう惨劇を前に、頭が真っ白になっていて何も考えられずに、私はフランの声をただ聞いていた。
「……ねぇ御姉様…………あれ、御姉様?」
「……………………」
私に何か言おうとして、返事がないことに疑問を感じたのか何時も通りの可愛らしい表情でこちらに振り向くフラン。
しかし今の私に返事をする余裕もあるわけがなく、ただただその可愛らしい表情が怒り狂った悪魔の顔になるのを待ち続けるだけだった。
「あー……もしかして、私に怒られると思ってるのかな?」
「……………………」
「……うん、これは完璧にそうだね。 全く、しょうがないなぁ…………?」
ゆっくり、ゆっくりとフランがこちらに歩いてくるのが見える。
いや、ただ単に私がゆっくりに感じているだけなのかもしれない。
それに、足音が全く聞こえてこない…………これもまた、フランの声以外の私の耳に入ってきた音を私が認識できていないだけなのだろう。
「ほら、御姉様? 私を見て?」
「あっ………………」
いつの間にかその場に座り込んでいた私に高さを合わせるように、少し屈んでその華奢な両手で私の頬を包むフラン。
その表情はどこまでも優しく慈愛に溢れていて…………そして、暫く見つめあっていたフランは、唐突に言葉を投げ掛けてきた。
「ねぇ御姉様、私と御姉様のお部屋、一緒にしようか!」
ーーーーー
以上、レミリア燃え尽きた?回でした!
もうあれです、レミリアの執念は凄いです…………が、やらかしましたね(笑)
さてさて最後のフランの一言はどんな意味を持つのか?
それではまた次回にてお会いしましょう!