勝負は相性、魔剣と植物
どうも、東方転妹録最新話です!!
今回は決着回になっていますよ!
さて、フランと幽香、どちらが勝つのやら……?
それでは楽しんでいってください!!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー数十分後、太陽の畑の外れ。
ーーーーside フラン
ーーーガッ、ゴッ、バキィ!!
「ちっ、すばしっこくて当たらないわね……!」
「レーヴァテインと打ち合っても平気な傘になんて当たりたくないよ!!!?」
戦い始めてから暫くして、光線を撃っても当たらないことに苛立ってきたのか近接戦に持ち込み始めてきた幽香さん。
速さなら私の方が上だけど、一撃の重さは幽香さんの方が強いから、正直幽香さん相手に近接戦は辛い。
……というか、あの傘は本当にどうなってるんだろう?
幽香さんも妖力で傘を強化してるんだろうけど、それにしても丈夫すぎるよ!?
「私の鍛えた手作りの傘よ? そんじょそこらのナマクラ刀なんて目じゃないわ!!」
「手作りで傘を鍛えるって…………」
いやもうなんで傘を武器に選んだのとか案外家庭的すぎるとか色々ツッコミたいけど…………とりあえず、あまりにも比較する物を間違えてるよね?
「……とにかく、打ち合うのがダメなら燃やすだけだよ!!」
「燃やす?…………っ!?」
レーヴァテインに妖力を送り込んで炎を噴き出させ、右手に握るレーヴァテインは瞬く間に一本の火柱となる。
そして、それを見た幽香さんは目を見開かせて硬直した。
「……いつかのあれね、私の技を相殺した…………!」
「うん、そうだよ。 レーヴァテインは炎の魔剣、その刃は神すら切り裂き、その炎は神すら焼き払う……ってね!」
ーーーゴォォォォォォォ!!!!!!!!
「なっ!? くぅっ!!」
言葉の終わりと同時に火柱を振り下ろせば、レーヴァテインに気を取られていた幽香さんは焦りながらそれを避けた。
その様子を見た私は、今が好機とばかりに一気に距離を詰めて炎をまとったまま幽香さんに切りかかる。
「それっ! やぁっ!! えいっ!!!!」
ーーーブン、ヒュン、ブォン!!!!
「くっ、こうなったら……!」
斜め、横、縦と順番にレーヴァテインを振るうと全部ギリギリのところで避ける幽香さん。
その様子は余裕綽々といったものではなく、むしろ体勢を崩したところを攻められて苦しそうな様子だった。
「ほら、これならどう!?」
ーーー『花鳥風月、嘯風弄月』
「そんなの、レーヴァテインの炎の前じゃ意味ないよ!!」
ーーー『クランベリートラップ』
「なっ!? えぇい……!!!!」
苦し紛れに幽香さんが放った技は植物主体の弾幕、だからこそレーヴァテインの火柱の前にあっという間に燃やし尽くされてしまう。
さらに追い討ちとばかりにクランベリートラップを放てば、近距離戦になっていたおかげで上手く幽香さんが弾幕の真ん中に収まってくれた。
「……こんなもので私を捉えられると思うな!!!!!!」
ーーードォォォォォォォ!!!!!!!!
「うぅ!? ま、また!!!?」
突如放たれ、クランベリートラップの前方を吹き飛ばしながら私に迫ってきた巨大な光線。
それを私はレーヴァテインの火柱で、ギリギリのところで受け止めて相殺した。
「ふふ……それっ、もう一発!!!!」
ーーードォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!!!
「っ!!!!!?」
受け止めた反動でまだ動けない私に放たれた二発目。
幽香さんの勝利を確信した微笑みと言葉に気がついた時には、最早避ける暇はないぐらいまで迫っていて…………。
ーーー『そして誰もいなくなるか?』
……これが、今回の勝負を決める最後の一手となった。
―――――
ーーーーside 幽香
冬の風がゆっくりと私の頬を撫で、そろそろ冬眠するべきだと告げてくる。
……そして、私の体も休息が欲しいと強く訴えかけてきていた。
「……えっと、大丈夫? 幽香さん……」
「……えぇ、大丈夫よ。 少し体が痛むだけだから」
先程の戦闘のせいでぐちゃぐちゃになった地面に横たわる私に、フランが私の肩を揺すりながら心配してくる。
……察しの通り、先程の戦闘の勝者は私ではなく、今私を心配してくれているフランだ。
確実に仕留めた、そう確信した最後の一撃は消えるように姿を消したフランには当たらず、そのことに驚いている間に私は無数の妖力弾に周りを塞がれてしまっていた。
只でさえ妖力の消費が大きいあの光線を連発していた私にはその檻を突破する術はなく、結果避けきれずに蜂の巣状態となって負けたのだった。
「……全く、私も衰えたものね…………」
「ううん、幽香さんは本当に強かったよ!! ただ、幽香さんは炎と相性が悪かったから……」
「それでも負けは負け、勝負の世界で言い訳は出来ないわよ?…………って、敗者の私が言うことではないわね」
元々は私の暇潰しと退屈しのぎのために持ち掛けた勝負…………だというのに、私は暇潰しどころか敗北してしまった。
そんな私が、何故勝者を諭しているのか…………考えたら、思わず笑いが込み上げてくる。
「ふふふっ……ふふふふふっ!」
「ど、どうしたの、幽香さん?」
「いえ……ふふっ……なんでもないわ、少しおかしかっただけ……!」
私の言葉に疑問符を浮かべるフランを尻目に、私はゆっくりと痛む体を起こしながら立ち上がる。
そんな私を再び心配に思ったのか、フランはすぐに立ち上がると私の手を取って支えてくれた。
……まったく、まるで親を心配する娘みたいなことをするのね?
「そうなると、私は母親かしら……」
「えっ? 今何か言った、幽香さん?」
「そうね、このままフランを家まで連れていきましょうって言ったわ」
「本当!? やったぁ、幽香さんのお家にお泊まりできる!!」
……本当、この子は大丈夫かしら?
まだ出会ってから二度しか顔を合わせていない私に簡単に着いてきて、その上私は『お泊まり』とは言ってないのに本人は『お泊まり』するって思ってしまっているし…………。
……まぁ、敗者である私が勝者であるフランに意見することなんてないし、第一これだけ喜んでいる子を落ち込ませるのもあまり気持ちいいものでもないから、これで良いわね。
「それじゃあ早速行きましょうか、勝者さん?」
「うっ!? えっと、もしかして根に持ってる……?」
「いいえ? 別に寝首を掻こうとか思ってないわよ?」
「うぅ……幽香さん、絶対根に持ってるよぉ……!!」
妖力が尽きたせいで飛べない私に付き添いながら歩くフランは、私が先程の勝負を根に持っていると不安になったのか必死になって両手で私の左手をつかんでくる。
そんな姿が微笑ましく感じられて、もっとこの小さな勝者をからかいたくなるのは、きっとしょうがないのだろう……。
「さっ、早く帰るわよフラン? 大丈夫、本当に根に持ったりしてないわ」
「本当? 本当に根に持ってない?」
「えぇ、本当の本当よ?」
「……えへへ! よかったぁ!!」
……無邪気な笑顔というものは、本当に良いものね。
―――――
ーーーーー同刻、人里。
ーーーーside 慧音
……誰でも良いから分かりやすい答えをくれる人に問いたい。
「……どうしてこうなった?」
「だから、フランがいなくなったから探すために拠点を人里に置くって何度も説明してるじゃん!!!?」
目の前で封獣ぬえが私に叫びながら理由を伝えようとしてくる。
その後ろには、恐らく紅魔館から連れてきたのであろう制服を着た妖精達が、着々と布と木で簡易な作りの拠点を作り上げていた。
「あー、どうして人里が拠点に選ばれたかを聞きたいんだが……その前にレミリアさん達はどうしてるんだ?」
「皆なら昨日からずっと紅魔館でドンパチやってるわ。 フランがいなくなって混乱してるのは分かるけど、本当に馬鹿ばっかりなんだから…………あっ、それと人里を選んだのは色んなところに連絡がとりやすいからね」
「そうか…………」
思わず私が頭を抱えてしまったのはしょうがない、というか必然だろう。
レミリアさん達はあてにならなそうだし、封獣の言い分は納得できるがそれでも色々と困る。
……人里の人々にどう説明すればいいのだろう?
「……まぁ人里に私達が暫く拠点を置くのは迷惑だと思うからさ、人里にいる間は警備とかするからそれで許してくれない? それに妖精メイド達も拠点が出来上がったらほとんど紅魔館に帰すから、拠点に残るのは私を含めて十人くらいだし」
「そうか……それなら人々への説明もなんとか出来そうだな」
「よしっ、じゃあそれで決まり!! ってことで今から村長に挨拶行くから、またね!!」
「あ、あぁ…………」
唐突にやらかしてくれる割には律儀なところがあるのか、ちゃんと村長に挨拶に行く封獣。
そんな封獣なら、暫くの間なら人里にいても大丈夫だろうと、そう私は感じた。
「ギャァァァァァァァ!!!!!? よ、妖怪だぁぁぁぁ!!!!!!!!」
「あぁもう、村長のとこに行くだけってのにうっさいわね!? 黙らないとその口吹っ飛ばすわよ!!!?」
……前言撤回、やはり不安でしかないな。
ーーーーー
以上、決着&和解&拠点設置回でした!!
今回、フランが勝った訳ですが…………祝☆強豪相手初勝利!!!!
今までは奇襲だったり雑魚相手の無双だったりでしか勝利を納めておらず、まともに戦って勝ったのも修行前のこいしや幼い妖夢だったりと、色々散々な戦績だったフランですが…………今回遂に実力者に勝ちました!!
もうね、相性が良かったとはいえ感極まりましたよ!
……まぁ書いたのは自分ですが(笑)
それではまた次回にてお会いしましょう!!