表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方転妹録〜悪魔なんて言わせない!!〜  作者: 愛式未来
第2章 ~雨降って、地固まるか?~
113/283

壊れかけた訪問者、叫びの抱擁

どうも、東方転妹録最新話です!



今回は寅丸星視点onlyで進みます!

……ようやく、ようやくオーエン、というかフラン自身から本音が……!




それでは楽しんでいってください!!

ゆっくりしていってね♪



ーーーーー数十分後、廃寺。

ーーーーside 星



少し早めの夕方の祈祷を終え、縁側に出て赤く染まりつつある空を見つめる。

今の日の高さから、おそらく日が沈むのは一時間後ぐらいだろう。

それだけ確認して、私は夕食の用意のために寺の中に戻った。



「今日の夕飯は何にしましょうか……?

……よし、浸けておいた山菜があることですし、それを少しばかりいただきましょう」



聖が封印されて以降、人間の参拝客はいない。

時折知り合いの妖怪か師匠がらみの方々がお裾分けをしてくれる程度で、実質私一人で食材の調達から調理までこなしている状態だ。

だからこそ私は質素に日々を過ごしている。

……フランが何ヵ月か毎に遊びに来るようになってからは、さらに質素にしているのは秘密だ。



「……フランが最後に来たのは、確か四ヶ月ぐらい前でしたね。

そろそろ遊びに来そうな頃合いですし、日持ちするお菓子でも作っておきましょうか」



日持ちするお菓子と言えば、やはり煎餅が一番だろう。

貯めておいた食材を消費するのは痛いが、これもフランのためだ。

それに煎餅なら工夫すれば沢山の種類ができる。

……どうせならフランが煎餅を持って帰れるように少し多目に作ってあげましょうか。


そんなことを考えながら台所に向かっていると、こんな時間に珍しく玄関から戸を叩く音が聞こえてきた……。



ーーー……トンッ、トンッ…………。


「おや? もうすぐ夕暮れだという時間なのに……一体どなたでしょうか…………?

はっ! も、もしや参拝客では!?」



貴重な参拝客が来たのであれば礼を欠くわけにはいかない。

そう思った私は急いで踵を返し、早足に玄関に向かう。

そして玄関に着いた私は軽く息を整えてから、なるべく凛々しい表情をしながら戸を開けた。

すると、そこにいたのは…………。



「……やっほー、星……」


「えっ、あっ、フランでしたか!

てっきり参拝客の方かと思いましたよ!

……って、その血はどうしたのですか!!!?」



戸を開けた先にいたのは薄く微笑むフランだった。

失礼な話ではあるが、フランを参拝客と間違えるのはいつものことだ。

だからこそ間違えたことを気にすることなく、すぐにフランを中に迎え入れようとして…………そこで、フランの服に付いている沢山の血に気付いた。



「この血は……ちょっと狩りをしてきただけだよ。

ほら、私って吸血鬼だし、普通の食事以外にも吸血しないとお腹が空いちゃうから……」


「あぁ、そうでしたか!

フランが怪我をしたのかと焦ってしまいましたよ。

……あっ、フラン、こちらに来てください」


「えっ、何、星?」



きょとんとした表情をしながらも私の言う通り傍まで近寄ってくるフラン。

そんなフランの頭を左手でゆっくり抱えつつ、右手で懐から手拭いを取り出し、私はフランの口周りに着いた血をぬぐってあげた。



「にゃう……んぅ…………んっ、ありがとう星……」


「どういたしまして!

さぁ早く中に入ってください、今から夕飯の支度を……」


ーーー…………ギュッ。


「………………」


「? どうしました、フラン?」



口に着いた血をぬぐった後、夕飯に誘おうとフランを寺の中に招き入れようとすると、突然フランが私に抱き着いてきた。

一体どうしたのかとフランに尋ねても返事は返ってこず、顔の表情を伺おうにもフランは私の体に顔を埋めてしまっていて伺うことができない。

どうしようもないのでとりあえずフランの背中に手を回して、抱き締めながらゆっくりと背中を撫でてあげていると、数分ぐらいしてから不意にフランが話しだした。



「……ねぇ星、私ね、星に言ってない大事なことがあるの」


「私に言ってない大事なこと、ですか?

それは、一体……?」



私に言ってない大事なこととは何だろうか?

何か悩んでいるような暗い声でフランは話し始めたから、明るい話ではないとは分かるが……。



「私には、前世の記憶があるんだ……。

……そしてその記憶の中には、この世界の未来の知識があるの」


「前世なのに、未来ですか……。

それはどんな知識なのです?」



前世の記憶なのに未来の知識があるとは一体どういうことなのか、そしてその知識とは何なのかをフランに尋ねると、フランは私にとって驚くべきことを話した……。


「……紅い悪魔のレミリア・スカーレット、亡霊の姫の西行寺幽々子、幻想郷管理者の八雲紫、永遠の時を生きる姫の蓬莱山輝夜、地獄の裁判長の四季映姫ヤマザナドゥ、諏訪大社の主神の八坂神奈子、天界の不良天人の比那名居天子、旧地獄管理者の古明地さとり…………そして、死を恐れて魔法使いになった聖白蓮」


「っ!!!? な、何故それを!!!!!?」



途中の名前はほとんど分からず驚くこともなかったが、最後の一言が酷く私を驚かした。

……フランに聖が封印された話は軽くしたことはある。

しかし聖が死を恐れて魔法使いになったことは言ったことはない。

だからこそフランはそのことを知り得ないはずなのに……。



「今のはね、私の前世にあった玩具に出てくる登場人物の一部だよ。

ちょっとした説明付きの、ね。

……これで分かったでしょ?

未来がどうとかは置いておくにしても、私は色々知っているって」


「……え、えぇ、フランが色々と知っているのは、よく、分かりました…………」



今のフランの発言、その中に疑問に思うことはいくつかある。

しかし聖の秘密を知っていたのだから、今それは置いておいてもいいだろう。

……そして気が付けば、フランは埋めていた顔をあげていて、私とフランは見つめあう形になっていた。



「……ねぇ星、私ね、本当に色々知ってるの。

知ってて色んな人に近付いたんだよ?

もちろん初めてこの寺に来たときも、既に私は星のこと知ってたの。

どう、最低でしょ、私……いや、『フラン』って。


「フラン、そんなことは……」



私はようやく気付いた。

今私の腕の中にいるフランの瞳に、深い悲しみに彩られた狂気が潜んでいることに…………そして、その狂気の矛先が私に向いていることに。



「私は生まれ変わらなくちゃならないの。

最低で皆に受け入れてもらえない『フラン』から、皆に受け入れてもらえる『オーエン』に……。

じゃないと皆と一緒にいられないから、皆と一緒に笑えないから!!!!」


「フラン…………!」



その胸の内に秘めた想いと言う名の悲鳴を、私に訴えるように叫び出すフラン。

そして、それと同時にフランが私を抱き締める力が一気に強くなりだした。



「だから私は壊すんだ……!

求められない『フラン』を、『フラン』に関係するものを、全て!!

そして私は『オーエン』になるの!!!!

求められる『オーエン』になって、もう一度、もう一度皆と遊ぶの!!!!」


ーーーググッ…………ミシッ……。


「かっ、ふっ…………フ、フラン……!」



私の目を見つめながら叫び続けるフラン。

苦しそうに歪められたフランの口から溢れてくる言葉は、一つ一つがフランの悲しみを背負っていた。

……そして、その悲しみを受け止めている間もフランの力は強くなっていき、早くも私の背骨は限界を迎えつつあった。



「だから、だからお願い星……!!

『フラン』から『オーエン』に変わるために…………『フラン』と一緒に壊れて!!!!」


ーーービキッ……バキャァァァ!!!!!!


「ッ!!!!!? クッ、アァァ!?」



フランの最後の叫びと共に私の背骨が砕け散る。

立っていた私の体は、全身の力を失って小さいフランにもたれ掛かるように崩れ落ちた。

その体勢になるとちょうどフランの頭と私の頭が同じ高さに並び、フランの肩に私が頭を預ける形となる。

……そしてそれは全身に力がほとんど入らなくなった私にとって、幸運な体勢でもあった。



「……フラン…………私の話を……聞いて、ください……」


「何の、話……?」



背中に走る激痛と全身の倦怠感。

しかしそれは上位の妖獣である私にとっていずれ完治する程度のものでしかない。

だからこそ私は激しい痛みを無視して、フランの耳元でゆっくりと話し始めた。



「フラン……わ、たし、は……フラン、が、最低…………とは、思い……ま、せ……ん……。

相、手を……知ってるから……近付いて、みた、い…………そう、思う、の……は、自然…………な、ことです……」


「でも、でも私はこいしに拒絶されたんだよ!?

知ってて近付いて、そのせいで拒絶されたの!!!!」


「そ、れは……フラ、ンが悪い……訳で、は、ない、です……よ?

きっと、いきなり…………の、ことで、こい、しさん……も、びっくり…………した、だけです、から……」



突然物凄いことを言われてしまえば、混乱して心にもないことを言ってしまうのは往々にしてあることだ。

だから、こいしさんもきっと今後悔して、反省しているだろう。

……しかし、これ以上は痛みで頭が回らない。

もっと、もっと伝えなければならないことがあるはずなのに……無情にも意識までもが遠ざかり始める。



「……例え、星の言う通りだとしても…………私は、私はもう戻れないの!!

私は、詩を紡いで『オーエン』になるの!!!!

……Three little Indian boys walking in the zoo;

(3人のインディアンの少年が動物園を歩いていた。)

A big bear hugged one and then there were two.

(大熊が一人を抱きしめ、2人になった。)

……これで、これで八人目!!

後は……レミリア・スカーレットのみ!!!!」


「ま、待っ、て…………フ、ラン……!!!!」



何かの詩を読んだかと思うと、もたれ掛かる私を振り払いながらフランは玄関を出ていった。

その後ろ姿に私は崩れ落ちながらも手を伸ばしたが、フランは赤くなった空に消えていく。

そしてフランの後ろ姿が霞んで見えなくなった時、私は遂に意識を失った…………。





ーーーーー

以上、フランと星回でした!



あれですね、前まではフランならフラン、オーエンならオーエンとフラン自身が分けていましたが、今回は遂にフランでもオーエンでもない、本心をフランが語ってくれました!!



……後五話か六話でシリアス終わる、はず!!




それではまた次回にてお会いしましょう!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ