目覚めた雷獣、一応の和解
どうも、東方転妹録最新話です!!
今回はぬえ視点onlyでこいし達との一応の和解回となっています!
……まぁ、今回はとてつもなくツッコミ所が多いと思います、多分。
それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーー二十分後、妖怪の山の勇儀宅。
ーーーーside ぬえ
静かだった意識に、ふと音が響き渡ってくる。
「……ン……こ…………の……」
「あ……に…………って……」
途切れ途切れに響いてくる音は、どうやら誰かの声のようだ。
でも誰が話しているのだろうか。
「……それ……の……聞けば…………」
「でも…………めない……」
さっきとは違う高さの音が響く。
何人いるのか分からないけど複数人が話しているみたいだ。
「……分からないわね…………どうして藍は……」
「慧音も…………紫だけ襲われ……」
藍、慧音、聞こえてきたこの二つの名前は分からない。
でも紫というのは分かる、オーエンが二番目に襲っていた妖怪だ。
「…………は、やっぱり萃香なのかー?」
「萃香さん…………美鈴さんかもしれませんね」
ほとんどの音が聞き取れるようになってきた。
名前が複数上がっているから、多分次にオーエンから襲われるのは誰かを話し合っているのだろう。
「他に妹様と付き合いが長くてかなり親しいと言えば……うーん、小傘さんでしょうか?」
「お姉ちゃんは真っ先に襲撃されたし…………当てはまるとは思えないけど、時々遊んでいたチルノや大ちゃんもいるよ。
一体、誰が次の目標なのかな……?」
……そろそろ動き出しても良いだろう。
悔しいけど私はオーエンの襲撃目標がどこにいるか分からないから、ここは彼女達の協力を得るしかない。
「……へぇ、こんなに集まってるんだ。
本当にオーエンってモテるんだね」
「おっ、目が覚めたようだね!
目覚めの気分はどうだい?」
「オーエンがいないから、最悪に決まってるじゃん……」
私が目を開けて声を発した途端、あちこちから聞こえてきていた声が止む。
そして寝ている私の側にいたらしいあの大馬鹿が声をかけてきた。
その声に返事をしつつ、私は自分に掛けられていた布団を退けながら上体を起こす。
……どうやら布団一式を用意してくれていたようだ。
「えっと、どこか痛い所とかない?
鈴仙さんが手当てをしてくれたんだけど……」
「別に……まぁ治療をしてくれたならお礼は言っておくわ」
あれほど罵ったというのに、大馬鹿の次に声をかけてきたのは意外にも古明地こいしだった。
古明地こいしの言葉を受けて体を見回してみればあちこちに布のような物が剥がれないように付けられていて、ふと手を頭に持っていってみると額辺りに包帯のような感触がある。
「……ねぇ、これってもう外して良いの?
ってか鈴仙って誰よ?」
「私が鈴仙ですが、もう外しても大丈夫だと思いますよ。
妖力もかなりあるようですし……」
「そっ、ならもう外すよ。
それと、治療してくれてありがとう」
体のあちこちにある手当ての跡を煩わしく感じた私は、手当てをしてくれた鈴仙という兎のような奴に一応お礼を言いながら包帯や布を外していく。
そして見付けた分だけ外し終わると、外した布をまとめて布団の脇に置きながら槍を取ろうと辺りを見渡し…………。
「あっ、壊されたんだっけ、あれ……。
……まぁ別に良いか」
「……さて、起きてすぐに申し訳ありませんが、話を聞かせてもらって良いですか?
私達も出来るだけ早く動かないとレミリアが危険ですから…………」
槍をオーエンに壊されたのを思い出していると、古明地こいしと同じ紫の目玉みたいなものが体にある女が話し掛けてきた。
あれがオーエンが言っていた、こっちの考えを読める古明地さとりなのだろう。
「……その通り、私が古明地さとりです。
喋るのが辛いのなら考えていただくだけでも良いですよ」
「もう話せるから別に良いよ。
ってかオーエンから話は聞いてるけど、全然分からない奴もいるわね……」
「それなら一度自己紹介をした方が良いですわね。
では私からさせてもらいますわ。
私はスキマ妖怪の八雲紫と申します。
よろしくお願いしますわ」
古明地さとりに返事をしつつ顔を確認しようと周囲を見渡していると、私に自己紹介をするどこか胡散臭げな八雲紫。
すると八雲紫に続くように、他の奴等も自己紹介を始めた。
「私は紫様の式である八雲藍だ、よろしく頼む」
「じゃあ次は私が自己紹介をさせてもらおう。
この山に一番近い人里で教師をしている上白沢慧音だ。
よろしく頼むよ」
「鬼の四天王の伊吹萃香だよ!
フランの件が終わったら一杯やらないかい!?」
沢山の尻尾を持った狐みたいな奴、白っぽい銀髪で堅苦しそうな奴、小さい体の割に角がデカイ奴。
……とりあえず、萃香という奴は大馬鹿と同じ様な雰囲気だ。
そういう意味で警戒しておくべきだろう。
「それじゃあ次は私がしようかしら。
永遠の時を生きる姫の蓬莱山輝夜よ。
あっ、貴女とこいしを助けたのは私だから、その事、ちゃーんと覚えておきなさい!」
「永遠亭で薬師をしている師匠の弟子の鈴仙・優曇華院・イナバです。
……その、八雲紫さんも姫様と一緒に貴女を助けていました」
「ちょ、ちょっと鈴仙!
その辺りは伏せておきなさいよ!!」
鬱陶しいくらい高圧的な奴だったけど、その従者らしき奴にツッコまれていた。
まぁ、あんな我が儘な奴の下にいたら従者がしっかりしているのも道理だろう。
「さぁて、次は私だねぇ!
私は萃香と同じ鬼の四天王の星熊勇儀だ、よろしく頼むよ!!」
「じゃあ次は私がいきますね。
この山で哨戒の任に着いている白狼天狗の犬走椛と言います。
それでこちらにいるのが新聞記者の鴉天狗である射命丸文さんなんですが…………」
「……はぁっ…………。
私、絶対にフランさんに嫌われた……。
……これからどうすれば…………」
「文さん、フランさんに怒鳴り付けながら扇で切りかかったのを思い出して落ち込む気持ちは分かりますが、今はこの後のことを先に考えましょうよ」
「考えてますよ…………フランさんとどう仲直りするかを……」
「「うん、駄目だこりゃ」」
遂に大馬鹿の番かと思っていたら、大馬鹿以上に気になる奴がいた。
狼みたいな奴がどうにかしようとしているけど、鬼の二人が匙を投げるくらい黒髪の奴は落ち込んでいる。
……まぁ、あれはしょうがないと思うんだけど。
「あらら……ま、まぁ次にいきましょうか!
私はレミリア御嬢様が治める紅魔館の門番、紅美鈴と申します。
妹様のため、よろしくお願いしますね!」
「……となると次は私ですか。
まぁ先ほど一度言っているので簡単に、覚り妖怪の古明地さとりです」
「で、その妹の古明地こいしだよ、こいしって呼んでね!
よろしくね、封獣!」
射命丸の方を見ながら苦笑いをしつつ自己紹介をする見た目は完璧な人間な奴。
そいつに続いて古明地さとりと古明地こいしが自己紹介をしてきた。
やけに古明地こいしが親しげなのは、一体どうしてだろうか?
……そして最後、こいつは私が起きてからずっとこっちをにらんでいる。
「……宵闇の妖怪、ルーミアなのかー。
よろしくする前に、こいしに言ったあの言葉を撤回して欲しいのだー」
「それは遠慮するわ、私は事実を言っただけだし。
今私はするのは限界が来たオーエンを止めることだけ、そしてそのために必要なことをするだけよ。
……で、あんた達が知りたいのは次の目標よね?」
ルーミアとかいう奴の要求を流しつつ話を元に戻す。
するとばらばらになりかけていた視線が皆一気にこっちを向いた。
落ち込んでいた射命丸でさえも視線を向けている。
「オーエンの詩は七人目まで進んだわ。
残ってるのはオーエン自身、それとレミリア・スカーレット、そして寅丸星……。
オーエン自身は最後、姉であるレミリア・スカーレットはオーエンの前だろうから、次は多分寅丸星とか言う奴よ」
私の言葉にほとんどの奴が呆気にとられた顔をした。
呆気にとられてないのは古明地こいし、それとルーミアだけだ。
「……寅丸星って、フランが家出した時に身を寄せた寺にいた妖怪だよね?」
「あれから時々フランが一人で遊びに行ってたのかー」
どうやら寅丸星を知っているのは古明地こいしとルーミアだけだったらしい。
しかし、その二人も意表をつかれたようではあったけど。
「まぁあんた達と寅丸星って奴の関係は放っといて、寅丸星の居場所を教えてくれない?
私、早くオーエンを止めに行きたいけど、寅丸星って奴の居場所を知らないから動けないんだよね」
「それなら封獣も皆と一緒に行こうよ!
私とルーミアなら寺の場所を知ってるから案内も出来るよ!」
「……そうですね、今はフランのことが優先です。
それでは案内をお願いね、こいし、ルーミア」
「むぅ、少し納得がいかないけど、分かったのかー。
それじゃあ早速出発するのだー!」
古明地こいしが声が上げると、古明地さとりを始めに皆が立ち上がり始めた。
最後にルーミアがその腰を上げ、ルーミアと古明地こいしを先頭に皆屋敷を飛び出していく。
そしてその一番後ろに、静かに私も着いていった……。
「……オーエン、これ以上はオーエンが…………」
ーーーーー
以上、ぬえとこいし達の一応の和解回でした!
……さて、なんでぬえとこいしが生きてるのとか紫眠ってたんじゃないのとか色々ツッコミが来そうですけど、種明かしはちゃんとしますから御安心ください!
まぁぬえとこいしが生きているのは、輝夜の能力を考えただけでもわかるかもしれませんね。
それではまた次回にてお会いしましょう!!