見えた心の限界、振り払った二つの想い
どうも、東方転妹録最新話です!
更新が遅れた理由ですが、正直に言うと今回投稿する話を何度も見直していました。
……作品の主題変えた方がいいですかね?
さて、それでは楽しんでいってください!
ゆっくりしていってね♪
ーーーーside オーエン
「アハハッ……ハハッ…………ハァ……ハァ……」
ルーミアを貫いた二つの剣先から、剣を撫でるようにゆっくりと血が滴り落ちていく。
そして、私の牙からも同じ様に飲み込みきれなかった血が滴り落ちていた……。
「ルーミア……そんな……」
「オーエンお疲れ様、何だか疲れてるみたいだけど大丈夫なの?」
ふと声がする方を見てみると、そこには意識を失ったルーミアを見ながらショックを受けている古明地こいしと、激しい争いの後に笑い過ぎて息を乱す私を心配するぬえがいた。
「心配してくれてありがとうぬえ、私は大丈夫だよ」
「そう? なら別に良いんだけどさ……」
別に良い、そう言いながらもぬえは私の傍に近寄ってくる。
そんなぬえに血濡れた顔で軽く微笑みながら、私はルーミアの体からレーヴァテインを引き抜き、ダーインスレイヴはそのままに左手をルーミアの首から離した。
すると支えを失ったルーミアの体は、その身にダーインスレイヴを突き立てたまま地上へと落ちていく……。
「あっ、ル、ルーミア!!」
「……させないよ、回復なんて!」
「っ!? フ、フラン……!」
地上へと落ちていくルーミアを見た古明地こいしがルーミアを保護しようと飛び出そうとする…………しかし、そんなことを易々と見逃すわけがない。
私は飛び出した古明地こいしと落ちていくルーミアの間に割り込んで道を遮る。
……闇そのものであり、原作とは違い封印をされてはいないルーミア。
そんなルーミアを殺すには体と妖力を同時に全て消し飛ばさないと、時が経てば幾らでも復活してしまう。
体だけ消し飛ばしても残留した妖力とあちこちにある闇で再生してしまうし、妖力だけであっても闇はいつも近くにあるという利点から即座に生存に必要な妖力を回復してしまうのだ。
だからこそ、私はルーミアの妖力を破壊してからすぐにルーミアの意識を奪い、妖力の自然回復と共にルーミアの体が完全再生しないようにダーインスレイヴを突き立てたままにした。
そうすればルーミアの意識が戻るのが、少しだけかもしれないけど遅れるはずだから……。
「フラン、どうして……」
「フフッ、私は当然の事をしてるだけだよ。
自分の味方を助けにいく敵をそのままにしたりしないでしょ?」
そうだ、普通は敵のそんな行動を見逃すわけがない。
見逃す人がいるとしたら、その人は本当にお人好しのバカか、或いは裏切り者でしかない。
……しかし、古明地こいしの『どうして』とは、私の想像したものとは全く違うものだった…………。
「……違う、違うよフラン。
私が言いたいのは、違うの……!」
「違う……? 何が違うの?」
私、どこか間違ったようなことを言ったかな?
……ううん、私は基本的なことを言っただけ、間違ったことなんて…………。
「……フラン、ごめんね!
私があの時あんなことを言ったから、フランを拒絶するような、傷つけることを言ったから!!!!
だから、だからお願いフラン!
……もう、もうそんな悲しそうな顔をして泣かないで!!!!!!」
「…………えっ?」
何馬鹿なことを言っているんだろう、私は泣いてなんか…………。
……何気無しに自分の頬に触れた指先に感じる冷たい感触。
それは触れた指先を包み込むように広がり、指には冷たい感触が広がっていく。
いや、それだけでなく、指先に冷たい何かを感じた途端に顔にも冷たい何かを感じるようになった……。
「こ、これは…………?」
指先を頬から離して見つめると、そこには水のような物がついていた。
空は晴れている、雨なんか降ってはいない。
ということは、これは、本当に…………!
「う、嘘!? わ、私、泣いて……!!!?」
「……オーエン…………」
どうして、どうして私は泣いているの!?
私が泣くようなことなんて無いのに、どうしてなの!!!?
……あり得ない、そう思っていたことが本当だったことに驚き声をあげてしまう私に、ぬえが何故か哀れむようにこっちを見てくる。
どうして私は、こんなことになっているのだろうか…………?
「フラン、フランは分かってるんでしょ?
これ以上はフランも限界だって、フラン自身、どこかで分かってるはずだよ!」
「……オーエン、私も今のオーエンはもう限界だと思う。
その大粒の涙、怪我してるわけじゃないのに流れてるじゃん。
私はこの一ヶ月のオーエンを傍で見てきたから今やってることをやめろとは言わないけどさ……せめて、今日はもう戻ろうよ。
もう、休んだ方がいいって…………」
「なっ…………!!!?」
ぬ、ぬえまで何を言ってるの?
私がもう限界?……そんなわけない!
私はまだ戦える、ルーミアから血を吸ったから妖力だって少しは回復したんだよ!!
レーヴァテインだってある、怪我もしてない……。
……私の心だって、何も苦しんだりしてない!!!!
「フラン……! もう、もう良いんだよ!!
私はもうフランを拒絶したりしない!
それにフランをしたこと、誰も怒ったりしないから、謝ったら皆許してくれるから…………皆、皆フランを大好きだから!!!!!!」
「オーエン、もう今日は休もう?
今のオーエン、見てられないよ……。
大丈夫、私はオーエンの傍を離れたり絶対にしない。
体も心も、ずっとオーエンの傍にいるから」
……うるさい……うるさい、うるさい、うるさい…………。
「……うるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!!!
私はまだ戦える、まだ壊れたりしない!!!!!!
私の邪魔をするなら、古明地こいしごとぬえも壊してやる!!!!!!」
「「っ!!!!!?」」
右手にあるレーヴァテインを閃かせながらぬえに向かって駆け出す。
咄嗟にぬえが槍を正面に構えたけど、私も同時に左手に槍の種を集めて握り潰した。
ーーーバァァァァァァン!!!!
「つぅっ!? し、しまっ……!!!?」
「封獣!!!!!?」
突然破裂した槍を見て顔が固まるぬえ。
そんなぬえの姿を見て、堪らず古明地こいしがぬえに向かって飛び出した。
……こいしがぬえにたどり着くのより私の方が早く間合いにぬえが入るね。
でも、このまま行けばこいしも一緒に間合いに入るから…………フフッ、手間が省けるよ……!!
「二人まとめて、燃え尽きちゃえぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」
「オ、オーエン、私は…………」
「封獣避けてぇぇぇ!!!!!!」
こっちを見たまま固まるぬえ。
そんな避ける気配の無いぬえに呼び掛けながら、古明地こいしがスピードを上げる。
……しかし手加減無しに妖力を籠めたレーヴァテインから溢れだした炎は、二人を確実に捉えていて…………。
「私は、私はオーエンを……!」
「封獣ぅぅぅぅぅ!!!!!!」
ーーーゴァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!
……固まるぬえにたどり着いた古明地こいしが庇うように抱き着いた時、レーヴァテインの炎が二人を飲み込んでいった…………。
ーーーーー
「……フフッ、フフフッ!
私の、私の邪魔をするから!!」
風も雲も、そして二人も、何もかもをレーヴァテインの炎が飲み込み終わって消えた後、そこに残ったのは晴れた空だけだった。
これでここに用は無くなった。
後は、寅丸星とレミリア・スカーレットだけ。
……さぁ、早く次に行ってしまおう。
「Four little Indian boys going out to sea,
(4人のインディアンの少年が海に出かけた)
A red herring swallowed one and then there were three.
(一人が燻製のニシンに飲まれ、3人になった。)
……もうすぐ終わる、後三つ進めれば…………」
七色の宝石が付いた翼を大きく広げ、私は次の目的地がある方向に向き直る。
そして広げた翼で新たな風を捉えた私は、風に乗るように速くその場を去っていった…………。
ーーーーー
以上、フランとオーエンの限界回でした!
さて、こいしとぬえがヤバイことになりましたが、それは以降更新用に置いておきましょう。
……自分で執筆していてなんですが、フラン(オーエン)に申し訳なくなってきました。
それと連絡です!
そろそろ時間がとれそうなので、以前に寄せてくれた方には申し訳ありませんが、これからいただいた感想に返事を再開したいと思います。
それではまた次回にてお会いしましょう!