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東方転妹録〜悪魔なんて言わせない!!〜  作者: 愛式未来
第2章 ~雨降って、地固まるか?~
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信じたくない可能性と誰かの影

どうも、久々更新の東方転妹録最新話です!!



……今年のセンター、何故難化したんだろう?

とりあえず六割強は取ったわけですが、関東圏の大学、どこがいいんでしょうか?

やはり、水戸黄門に似た都市がある県の大学かなぁ……?



……まぁ、とりあえず今夜は二話更新しますね!



それでは楽しんでいってください!!

ゆっくりしていってね♪


ーーーーー数時間後、こいしの部屋。

ーーーーside レミリア




月面戦争の出発点となった湖の畔にフランに関する何かが無いかどうかを探して帰ってくると、メイド達が私に詰め寄ってきた。

どうやら血にまみれたさとりを抱えてルーミアがこいしの部屋に向かうのを何人かが見たらしく、心配そうに報告してきたのだ。

それを受けて、私は即座にこいしの部屋まで来たのだけれど…………部屋に飛び込んで最初に見たのは、抱き合うこいしとルーミアの姿だった……。



「……それで、さとりの命に別状も無く、二人も仲直りできたということ?」


「うん!!……その、御義姉様。

今まで心配をかけてしまってごめんなさい!!!!」


「私もごめんなさいなのだー……!!!!

生意気なことを沢山言ってしまったのかー…………」



この一ヶ月の事を謝ってくるこいしとルーミア。

それを聞いた私は言葉も返さずに、ただ強く、強く二人を抱き締めた。


……正直、私の心中には、フランの紅魔館に対する攻撃があったかもしれないという可能性と、命に別状は無いとはいえさとりの容態が気になる気持ちで一杯だ。

この一ヶ月で私が恐れていたこと、それがフランによる攻撃だった。

こいしに拒絶された悲しみから自暴自棄になってしまえば、純粋で優しいフランとて何をし始めるか分からない。

それこそフランの持つ『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を使って暴れまわるかもしれないし、能力や弾幕を使わずに己の四肢やレーヴァテインで殺戮の限りを尽くすかもしれないのだ。

もちろん、フランが襲撃したなどとは思いたくもないし、ましてやフランが狂ったとは思っていない。

……いや、私はそんなこと、信じたくない。



「二人が仲直りできたなら、私はそれで良いわ。

時にはこんなこともあるだろうし、二人ともちゃんと反省できてるもの!

……それにしても『U.N.オーエン』、ね。

これが、フランからの何かのメッセージ…………」


「……あっ、うん、フランの筆跡なのは間違いないから、それはフランからのメッセージだと思うよ?」


「さとりが気絶する前に必死に手を伸ばしていたのもその書類だったのかー」



紅い文字で書かれた『U.N.オーエン』の文字。

ちゃんと羽根ペンで書いたのだろう、線の一つ一つがとても整っている。

……しかし、これが示すメッセージとは一体何なのだろうか?

パッと見た感じは何かの名前に見える…………もしかして、どこかの地名?



「こいし、ルーミア、このメッセージに何か心当たりはあるかしら?」


「私は、何も…………。

あっ、でもお姉ちゃんなら何か知ってるはずだよ!

ルーミアが見た通りなら、お姉ちゃんはルーミアにこれを見せたかった理由があったから必死に手を伸ばしたはずだし!!」



こいしの言葉を聞いて、未だにベッドの上で横たわっているさとりに目をやる。

目を閉じた顔に浮かぶその表情は、苦悶に歪んでいるわけでもなく、何か真剣味を含んでいた……。



「それと、多分その文字は血で書かれてるのかー。

メッセージが書かれた書類はそこにあるから、御義姉様にも見てほしいのだー!」


「血で、書かれている……?」



一度私から体を離しながら、さとりを見る私の袖を掴んで引っ張り始めるルーミア。

そんなルーミアに、私は多少の疑問を感じながらこいしから体を離しつつ着いていく。

そしてルーミアが指差す先には、例の書類が机に置かれていた。



「これがそうなのかー。

ほら、血みたいに少し黒ずみ始めちゃってるのだー」


「……本当ね、わずかだけど、臭いも血の物だわ。

一体誰の血なのかしら……?」



一枚の書類に書かれた血文字。

それは既に乾くのを通り越して黒ずみ始めていたけれど、確かに血の鉄ぐさい臭いが漂っている。

……しかし、これはフランの血の匂いではない。

こいしがフランの筆跡を見分けられると言うならば、私もフランの血の匂いを見分けられる。

だからこそ、私は自信を持ってこの血がフランの血ではないと言い切れるのだ。



「若い、生娘の血かしら……?

でも、それにしては匂いが強いわね」


「誰のか分からないけど、妖気も漂ってるのだー。

フランの血じゃないのかー?」


「いえ、フランの物とは匂いが違うわ。

そうなると、若い女の妖怪の血かしら……」



妖気までは気を配っていなかったから気付かなかったけれど、確かに血文字からわずかに妖気が漂っている。

しかしこれだけでは、フランの血では無いのは確実だから、若い女の妖怪の物とまでしか分からないが…………。



「ねぇ、若い女の妖怪って言ったら沢山知り合いがいるけど、もしかしてその中の誰かの物なのかな……?」


「……そうね、こいしの言う通り、その可能性は高いわ。

フランの筆跡だと断定した以上、フランの知り合いの誰かも関わりがあるのかもしれないもの」


「でも、それだとさとり以外に誰かが襲われたことになるのかー!」



確かにルーミアの言う通り、この流れならフランの知り合いの中の誰かが既に襲われたことになってしまう。

それを前提に血の臭いから断定すれば、八雲紫や八雲藍、そして最近出会った西行寺幽々子や八意永琳のような見た目が老いている妖怪は外れる。

射命丸文や犬走椛、多々良小傘やチルノなどが当てはまる見た目の年齢層だろう。


……しかし、その考えは一人の声によって足蹴にされた。



「……その血の主は、私達の知り合いではありませんよ。

フランが、一人目は私だと言ってましたから」


「えっ、お、お姉ちゃん!!!?」


「お、起きても大丈夫なのかー!!!?」



突如後ろから聞こえたさとりの声に驚く私とこいしとルーミア。

こいしとルーミアは酷く弱っていたさとりが起きたことに驚き心配の声をあげたけれど、私は心配以上にさとりの言い放った言葉の一部に驚きを感じていた。



「……おや、二人とも仲直りできたようですね!

本当に、本当に良かった……!!」


「あっ……その、心配かけてごめんなさい、お姉ちゃん…………」


「私も、ごめんなさいなのかー……」



……さっきの言葉の中に気になることがあるけれど、今はこの空気に水を指すのはよしておきましょうか。

それに、私もさとりに謝らなければならないことがあるもの。



「体はもう大丈夫なのかしら?

妖力、一度は枯渇しかけたのでしょう?」


「えぇ、もう大丈夫ですよ。

ルーミアが手早く妖力を分けてくれたので助かりました」


「そう……それなら、良かったわ。

……それと、私もさとりに謝らなければならないわね」



そこまで私が言うと、ベッドの上で体を起こしたさとりは訝しげな表情を私に向けてくる。

おそらく、まさか私が紅魔館の運営をさとりに任せっきりにしたことを謝るのか、とでも思ったのだろう。

多分さとりは、紅魔館の運営は確かに大切だけれどフランを探し出すことも紅魔館の総意であり、総意ならば当主である私の仕事にも当てはまるのだから気にすることはないと思っているはずだ。

そして私もそれに気付いている、或いはそう考えているとさとりは信じているからこそ、私が何を謝るのかが分からずに訝しげになっている。

……長年家族として、そして当主と秘書の関係として共にいたのだからこれぐらいは分かるというものだ。



「そう探るような視線を向けないで頂戴、さとり。

これは確実に私の油断が招いたことだもの」


「…………これ?

これとは、フランが紅魔館から去ったことですか?

それとも、私が襲撃されたこと……?」


「両方……と、言いたいところだけれど、謝るのは後者だけね。

さとりなら私が前者のことで謝らない理由、分かるでしょう?」



さとりに声をかけながら、私はゆっくりとベッドに近寄り、その端に腰かける。

そしてそのまま体を倒しながら、起き上がっているさとりの上体に寄り添った……。



「……前者に関しては、レミリアだけの責任ではないですからね。

謝る必要が元からありません。

ですが、後者は不意をつかれて抵抗出来ずにいた私に責任があるでしょう?

強いて言うなら、警備メイド達が襲撃を許したことぐらいだと思いますが……?」


「何を言ってるのかしら?

当主とは付き従ってくれる者を守らなければならないでしょう?

それに私は……フラン、こいし、ルーミア……そして、さとり…………貴女達を守り抜くことを、自らの魂に誓っていたもの。

……それなのに、私はさとりもフランも守れなかったのだから、せめて謝ることくらいさせてくれないかしら…………?」



既に私とさとりの距離は零だ。

私の視界はさとりのアメジスト色の瞳に埋め尽くされ、まるで宝石の中にいるような錯覚を起こしてしまっている。

顔も、後ほんの少し動くだけで互いの唇が触れ合うだろう。

……この距離こそ、今の私の弱さを表しているのだと思う。

今の私は誰かにすがりたくて堪らないのだ。

自分でも、はっきりと分かってしまうくらいに…………。



「……それこそ無用の謝罪なのでは?

まだ全てが終わったわけではありません。

レミリアは、結果を、運命を手にいれたわけではないでしょう…………?」


「まだ私は守れている、と?

……さとりって、こういう所も意地悪なのね…………」



後ろから二人分の足音と扉の開閉音が聞こえた。

おそらく何かの雰囲気を察したこいしとルーミアが出ていったのだろう。

……まぁ、今の私にとってはありがたく、好都合なことなのだけれど。



「……弱り過ぎですよ、レミリア。

今は真実を知ることなく、少しだけ休んでください。

せめて、今だけでも…………」


「……そうね……少しだけ、休ませてもらうわ。

おやすみなさい、さとり…………」


「……えぇ、おやすみなさい、レミリア…………」



フランもこいしもルーミアも、私にとって弱い姿を見せたくない支えるべき存在だ。

……だけどさとりだけは違う。

さとりだけは、私を支えてくれる、弱さを見せられる存在。

だからこそ私は、今はさとりに甘えながら、穏やかな、暖かい、深い眠りに落ちていった…………。






ーーーーー

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