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追って追われて追い詰められて

ロゼリアが居なくなった後、侍女と騎士は睨み合っていた。


いや、実際は睨んでいるのは侍女だけで、騎士の方は口元に優しげな笑みを浮かべているのだが・・・。


「随分、嫌がるね?」


そう言って侍女に詰め寄る騎士ーーーゼクセンは、うっすらっと目を細めた。


メルリは引きつりそうになる顔面の筋肉を総動員して、果敢に睨みつける。


正直、視界に入れたくは無い人物だ。


メルリは男が大の苦手である。そして、このゼクセンという騎士は、その中において、メルリが一番苦手と言える人物だった。


もう、トップをひた走っている。


何故かは分からないし、知りたくも無いが、事ある毎にこうして話しかけてくる。


・・・だが、それだけならまだいい。メルリだって普通に異性と話す事は出来る。


だが、この男は話すだけでは飽き足らず、何かとメルリをからかってくるから厄介だった。


しかも腹の立つことに、それは決まってメルリと二人の時のみときている。


他に人がいる場合は、好青年という猫を頭の先から足の先までフル装備していた。


一寸の隙も見せないから、隙をつこうにもつけない。なんとも歯痒いものだ。


どうせならば、メルリの前でも猫を被っていて欲しいものだ。


「そんなに眉を寄せてると、皺になるよ?」


ゼクセンはそう言って、すっと人差し指でメルリの眉間を突ついてくる。冷えた指先にビクッと肩が跳ねた。


これが奴に恋心を抱いている少女だったなら、顔を真っ赤にして俯くなりしただろうが、生憎と、メルリはより一層眉間に皺を寄せただけだ。その表情には、デカデカと不快、と描かれてあるのが目に見える。


「触んないで下さい」


メルリは伸ばされた手を軽く叩いてどけると、小さく鼻を鳴らす。


ゼクセンはその様子にクッと口端を吊り上げた。


メルリはそれを見て数歩後退り、背中が壁に当たった所で足を止めて背後を振り返った。


そこは当然壁際で、これ以上下がることは出来そうに無い。


「言ってくれるね、メル」


「貴方に愛称で呼ぶ事を許した覚えは有りませんが?」


ロゼリア様にだって呼んでもらっていないものを、何故こんな奴に・・・。


憎々し気に睨みつけるが、ゼクセンは面白そうに笑うだけだ。


「ーーーそう?」


「そうです」


こくこくと頷くメルリに、相手はにぱっと能天気な笑顔で告げた。


「ま、気にしないで」


「気にします!!」


ぐっと身を乗り出して、慌てて身体を引っ込める。自分から相手に近付いてどうするというのか・・・。


取り敢えず、一旦深呼吸でもして落ち着くべきだ。


はい、吸ってー吐いてーまた吸ってー吐いてー・・・ダメだ。


全然落ち着かない。


当たり前だ。大体、何でこんなに近くに突っ立っているんだろう。


床を見ると、すぐ近くに相手の爪先が視界に入る。あと一歩でも相手がこちらに近付けば、それぞれの身体が密着してしまう距離に、彼らは互いに向かい合わせなって立っている。


見知らぬ人から見られたら、あらぬ誤解を招き兼ねない距離である。喜べないことに・・・。


離れて欲しい。


欲を言うなら、そのまま何処かに行って欲しい。そして帰って来ないでいいと思う。


だいたい私が何をしたというのか・・・。


陛下直属のエリート騎士と、こう毎回話すほど親密な間柄になった覚えは微塵も無い。


皇妃付きの侍女とはいえ、他の侍女と何ら変わった事はしていない。


だというのに、この目の前の騎士が話しかけて来る侍女は自分だけだ。理解できない。


何故よりによってメルリなのだろうか。


「そんなの、気になるからに決まってる」


「ーーーは?」


「これだもんなぁ。まあ、その分楽しめるからいいけどね?」


苦笑するその姿に頭を抱えそうになる。


意味がわからないしーーーー大体、人で遊ぶんじゃ無いと言いたい。


「よく分かりませんが、貴方は一度性格を矯正するべきだと思われますが・・・」


「へぇ・・・言うね」


すっと相手の声音の温度が下がったのを肌で感じ、メルリは慌ててゼクセンと距離を取ろうとしたーーーが、失敗した。


「ーーーひゃっ!?」


グッっと腕を掴まれて、引き寄せられる。


身体中で誰かの温もりを感じとり、それが一体誰の温もりであるかを理解して、顔を上げた。


「ーーーうん、かなり好みの感触」


「なっなっなん・・・!!」


言葉が上手く話せない程、動揺するメルリ。


ゼクセンはニヤリと笑って、その首筋に顔を埋めて大きく息を吸い込んだ。


甘い匂いと暖かな太陽の匂い。


彼女の匂いが肺一杯に満たされていく。


抱きしめた小さな身体は、動転していて忘れているのか、抵抗をみせなかった。


「あー、メルリさん?」


「ーーーーーー」


顔を離してメルリの顔をみると、絶句したまま固まっていた。どうやら意識が抜けているようだ。


それなら、もう少し堪能するべきだとゼクセンが再び顔を埋めようとした瞬間、パチリとメルリが目を瞬いた。


ぼんやりとその視線が足元を彷徨い、足を伝って徐々に上へーーー。


「・・・・」


「・・・・」


その視線がとうとうゼクセンのものと絡まると同時に、メルリの顔から表情が抜け落ちた。


ゼクセンはさっと手を離して、メルリから距離をとり次いで耳を塞ぐ。


「一応言っとく、ごめんね?」


そうしてヘラっとゼクセンは笑った。


「ーーーーーっ!!!」


メルリの目が最大限に見開かれ、ゆっくりと唇が開かれる。





次の瞬間、辺り一帯に壮絶な悲鳴と共に罵詈雑言が響き渡ることとなったーーーー。








というわけでメルリとゼクセンです。


ちょっとあとで書き直す可能性ありますが、取り敢えず載せときます。


しかし、登場人物の名前を間違いそうになる。ここでも下手したら間違ってるのがあるかもです。見直しはしましたが・・・。

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