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静寂

文字訂正です!すみませんでした!!


パチリと目が覚めた。


ノロノロと身体を起こし、ぼんやりとした頭で 、ロゼリアはまだ日の光が差し込まない窓の外を眺めた。


静けさに包まれた部屋の中、自分がいつもより幾分早く起床してしまった事に気付く。


この時間ではメルリもまだ寝ているのだろう。小さく名前を呼んでみたが、こちらに来る気配は無い。


侍女の部屋は、主の隣に位置付けられており、メルリも例外なく、ロゼリアの部屋の隣で寝泊まりしている。本来ならば何人かと同じ部屋で生活するのが常らしいが、生憎とロゼリア付きの侍女は彼女以外には誰もいない。


メルリが休日の時は、別の者が臨時でロゼリアに付くが、基本はメルリのみ。


そのためメルリは部屋を一人で使用しているようだ。


・・・そう言えば、メルリが今度新しい侍女が入る事になるかもしれないと言っていた。


皇妃付きの侍女が一人だけなど、笑い話もいいところだ。


自分の身の低さを、そのまま表している。


沢山の侍女が欲しい訳ではけしてない。元々、男爵家にいた頃から身の回りの事は自分でしてきたのだ。不自由はない。


そういえば、嫁いで来た当初メルリがあれこれと世話を焼くのに、酷く戸惑ったような気がする。


ロゼリアの口からクスクスと笑いが漏れる。


そして、不意に息を詰めて肩を震わせた。


思い返されるのは、昨夜の事ーーー。


『陛下が、その・・・』


メルリの言いにくそうな表情にいち早く理由を察して、ロゼリアは一瞬固まらせた表情を何事も無かったかのように笑顔で繕った。


完璧だったその表情は、けれどメルリには無理をしていると一目瞭然だったのだろう。


気遣わしく接する彼女に断って、ロゼリアは早々に寝台に潜り込んだ。


そのまま色々と考えを巡らしている間に、どうやら寝入ってしまったようだ。こんな時にでも寝れる自分に呆れてしまう。


ーーーそれ程ショックでは無かった?


それは無い。


ただ、心構えの差だろうと思う。こうなることは、昨日の朝から覚悟していた。


寧ろ、陛下は普通だったのだとすら、寝入る寸前に思っていたような気がする。


・・・私ったら、何て事かしらね。


陛下が男色だなんて実はひっそりと考えていただなんて。以前寵愛を受けていた方は女性だが、その方が亡くなり、悲しみの為に心が狂い、同性を求め出したとしてもおかしいことではない。


どうしても女性では、亡くなられた寵妃の面影を求めてしまうだろうから。


男色が悪いとは思わないが、男同士では子供を望めない。その場合、ロゼリアはどうすればいいのか・・・。それこそ途方に暮れただろう。


男との違いに比べられながら抱かれるなど冗談ではない。その点、女性ならばその心配は無い。


同時に、ロゼリア自身に、その手が伸ばされる事も無くなった。


それは後宮に住まう他の側室方も然り。


つまり、レイファ様の独壇場となった訳だ。


ーーーとなれば、益々私は邪魔者だわ。


ふっと息を吐くと、ロゼリアは寝台から立ち上がった。恐らく、陛下は未だ後宮でお過ごしだろう。


いつものように陛下の自室に赴いた処で、意味が無い。起こすべき相手は、後宮のレイファ様の傍にあるのだから。


それに身支度もしていない姿で、彼の所へ行くべきでもない。


ーーーそうは分かっているのだが。


クロゼットからどうにか自分で着れる範囲のドレスを引っ張り出し、袖を通す。


髪は簡単に櫛で梳くのみで、そのままにしておいた。どうせ会わないのだろうし。


けれど、行く気は微塵も無いのに、長年の習慣は、ロゼリアを陛下の自室へと急き立てる。


いつもと違い、早すぎる時間だ。


まぁ、構わないか。


どうせ誰もいないし、ただ陛下の部屋に行き、壁に掛けられてあるユリアナ様の絵にでも浮気の報告でもしておこう。


すぐ戻るけれどーーーメルリに一応陛下の部屋に行って来ると書き手紙を残しておこう。


手近な所から紙と筆記用具を取り出して、内容を紙に書き込み、それを確認し寝室から出ると、隣の部屋に移動した。


いつも紅茶を飲む白いテーブルの上にメルリに分かるようにその紙を置いておく。


これでいいかしらね。


ロゼリアは一人でに頷くと、薄暗い部屋から扉を開けて廊下に出た。すると、両脇にいた部屋の護衛達が驚いたようにこちらを見てくる。


彼らが何事かと尋ねようとする気配を察し、ロゼリアは口元に人さし指を当てる。


「少し、陛下のお部屋へ行ってくるわね。メルリが起きたらそう伝えて頂戴?」


「「ーーーは、はい」」


何か言いたげな彼らを勢いで黙らせたまま、ロゼリアはドレスの裾を翻して歩き出した。








「ロゼッ・・ロゼリア様」


「お早う」


陛下の自室に着いたロゼリアは、何故か驚きに目を見開き、吃る兵士に会釈をしつつ挨拶をした。


お早う、というには早過ぎる時間帯だ。


然し、彼らは疑問に思わずに、それぞれバラバラに返事を返してくる。


「お、お早うござっ御座います!」


「お早う御座います」


二人の護衛の兵士うち、一人はいつも通り落ち着いていた。・・・というか、何故もう一人の兵士の方は、こんなに驚いているのだろう。


ロゼリアは微笑んで、部屋に入ることを告げると、先程から言葉を詰まらせていた兵士が、悔しげに呻いた。


それをもう一人の兵士がニコリと笑って、その肩を叩く。


「ーーーすみません、只今開けます」


「ええ、お願い」


何故そんなに悔しがっているのかは不明だったが、後ろ髪を惹かれつつも、ロゼリアは主が不在である陛下の部屋へと足を踏み入れた。


いつもより時間が早いからか、より薄暗い。


気を付けなくちゃ・・・。ていうか、灯りをつけようかしら。誰もいないから、別に問題はないし・・・。


いつもはリヴァルトに気を使って、部屋に灯りを灯すのを遠慮しているロゼリアだったが、それも気を使う相手が居ないとなると話は別だ。


そう思って、そろそろと動き出したロゼリアの背後で、静かに扉が閉められる。


扉が閉まる一瞬、


「俺の勝ちだな」


と、兵士の一人が言ったように聞こえた気がした。


何か勝負でもしていたのだろうか??


ロゼリアは首を捻りつつ、寝室へと移動した。


扉を開けて、まず視界に入って来るのは、ユリアナ様の肖像画だ。


暗い寝室で、闇に囚われずに存在を主張する彼女は、変わることのない静かな微笑みを浮かべたまま、じっとロゼリアを見つめていた。






補足ですか、分かりにくかったと思うので、前話の時間軸は、ロゼリアとレイファが会う直前の話になってます。


あの後執務室を出て行った陛下が向かった先はロゼリアの私室です。部屋の前で蹲ってたあれです。


何故蹲ってたのかはご想像にお任せ致します!


今回はそれから夜が開けたーーというかかなり早めの明け方?3時ごろ?あたりです。


というか、ロゼリア、陛下をそんな風に思っていたのね・・・。


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