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侍女の密やかな野望

寝室でロゼリアがある決意を固めていた頃、隣の部屋に控えていたメルリは、部屋の扉を開けて、廊下に出た。


ロゼリアに聞こえないように、注意して扉を閉めると、すぐ両脇にいるロゼリアの部屋担当の護衛それぞれに顔を向けた。


「お疲れ様です、サハラ様、エクス様」


淡々と言うと、二人の護衛ーーサハラ・メルベールと、エクス・ラグアが、軽く頭を下げてくる。


「「どうも」」


ピタリと同じタイミングで声を揃えて挨拶が返され、メルリは口元を緩めた。


扉の右側に立っているのがサハラ・メルベール。


扉の左側に立っているのがエクス・ラグア。


まだ若く、どちらも性別は男。


皇妃付きの護衛でもある彼らだが、若いと言っても心配は微塵も必要ない。一見してパットしない顔立ち(失礼)の二人ではあるがその腕は確かだと認識している。


護衛を決める際、ありとあらゆる者達を掻き集め、ちょっとした・・・と言っていいのか分からないが、武闘大会が催されている。


集められた人数は千人弱。


トーナメント戦で競わせて、それぞれの区画で生き残ったのがこの二人だ。だが、優勝した者はいない。何故かというと、この二人、一向に勝負がつかず引き分けとなってしまったらしい。


ーーー因みに、あの銀髪の変態野郎は出場していないそうだ。この二人が、戦ってみたいと嘆いていたのを聞いたことがある。


あの変態も腕は立つと聞くのでーーーでないと陛下の騎士なんて立場にはいないんだろうしーーー大会に出場していたら、確実に上位にのめり込んで、優勝をもぎ取っていてもおかしくは無い。


非常に腹立たしいが、あの変態の腕だけは賞賛に価するのだろうと素直に思える。ーー腕だけ、は。他は色々気に食わないが。


話がずれてしまったが、そんな訳でこの二人が護衛でも納得がいく。


何せ千人弱の猛者を押し退けて、このポジションを獲得したのだから。


それに、メルリとしてはこの二人がロゼリア様の護衛で嬉しかった。


同郷で、顔馴染みでもあり、この二人とは普通に話す事が出来る。と言っても、口数が少ないため、彼等から話しかけることは殆ど無いが、この二人はメルリにとって、唯一、ロゼリアを抜かして気を緩めて話せる者たちだった。


毎日のように顔を合わせるし、異性であっても何故か気にならない。


それにーーー


「先程、陛下がいらしてませんでした?」


大事な情報源でもある。


側室のレイファ様・・・様などつけたくはないが一応の礼儀は守らないといけないため頑張ってつけます、が、ロゼリア様の部屋へ入るのに躊躇しているようにも見えた先程の不審な行動・・・だが、彼女がチラリと右の廊下の方を見た時、扉付近に居たメルリには、遠くの方にこちらへ向かって歩いてくる陛下の姿があったような気がした。


見たのは一瞬で、もう一度確認しようとしたところ、レイファ様が部屋へと入ってしまわれたため、確認する事は叶わなかった。


それが気になり尋ねてみると、メルリの質問に、二人は互いに顔を見合わせ頷くと、口を開いた。


「「はい」」


返ってきた返事は、数秒の狂いもなく互いの声に重なる。


返事はYesだ。


「何をなさっておられました?」


やはり、と思いながら再び尋ねると、彼らは今度はバラバラに答えを返した。


「ここの部屋の前で立ち止まって、暫くしたらしゃがみ込みました。」


「暫くブツブツと何かを呟いて、頭を抱えたかと思ったら、いきなり勢いよく立ち上がって向こうへ足早に去って行きましたね」


向こう、と言いながら二人とも右の廊下を指で指し示す。


二人とも、不審な行動を取るリヴァルトに、声を掛けるべきか逡巡していたが、迷っているうちにリヴァルトが去って行った為、結局そのまま警護に当たっていた。


「あちらに?」


「「はい。後で後宮にどうのと呟いて・・・」」


ーーー後宮?


メルリは首を傾げた。


あの陛下が後宮に何の用があるとー・・・


・・・


・・・・・


・・・まさか。



嫌な予感がする。


今日、新しい側室の方がそこに入られた。


今までが今までなため、忘れかけていたが。



「確かに、陛下が後宮・・・と?」


その後宮には、レイファ様が居られるではないか。他でもない、陛下が心を寄せておられると専らの噂の・・・。




メルリの問い掛けに、護衛の二人は鷹揚に頷いた。


愕然と立ち尽くし、そっと私室の寝室にいるであろうロゼリアの姿を思い浮かべる。


側室の方と顔を合わせるだけであの状態だ。


それなのにまたもやその心に傷を負わせてしまうかもしれないとは・・・。


まだ推測の域を出ていないので、もしかしたらこの予想は外れているかもしれないが、しかし当たっている確率の方が高いだろう。



というか




ーーーあの腐れ外道。


メルリの胸に、素敵なほどどす黒い感情が溢れ反り、口に出した時点で胴体と頭がさよならをすること確実な言葉をふつふつと幾度となく思い浮かべる。


そんなメルリに、面白そうな声が掛けられた。護衛の二人だ。


「「メルリ様、お顔が大変ですよ」」


「ーーーごほんっ」


「「・・失礼、メルリさん」」



顔を揉みほぐしながら、恨めしげな目で、護衛二人を睨みつけると、二人は慌てて顔を逸らす。


「ーーーロゼリア様には、内緒にしとくようにお願いします。もし言ったらーーただじゃ済ましません!!」


小声で二人にクギを刺すと、コクコクと壊れた人形のように首を縦に振っている。


隠す気は無い。隠したとしても、ロゼリアの耳に入るのは分かり切っている。


だが、もう暫く。


ほんの少しの間は、言わなくてもいいだろう。


乱れに乱れたその心が、立ち直るまでの間だけは。


そして同時に思う。


陛下と離縁されるべきだろうと。ならばある意味、これはメルリにとってはチャンスである。


あの陛下と、ロゼリア様を引き離す。


正直、ロゼリア様があのアホーーー・・違った、陛下のどこに惚れたのか未だに分からない。


だが、それはロゼリア様の事なので仕方が無い。メルリはロゼリア様にどこまででもついて行く所存だ。


そう、例えばロゼリア様が離縁されてこの城から出ようとなされたら、メルリも喜んでその後に続こうと思う。


ロゼリア様は断るかもしれないが、メルリにとってはロゼリア様が全て。


例え何と言われようと後に続く。





ゼクセンーーー?



誰でしたっけ、それ?




リヴァルト大丈夫??


メルリは陛下も嫌いみたいですね。


ゼクセンはロゼリアより上になれる日が、果たして来るのでしょうか・・・。無謀な気が。


少し真面目に頑張った方がいいと思うよ、ゼクセン。このままだと勝ち目無いね!



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