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相対、前

文字訂正です!すみません!!

城、ロゼリアの部屋にて。


「・・・・・」


コツコツコツ


「・・・・・」


コツコツコツ


「・・・・・」


コツコツーーーコツンッ


「ーーロゼリア様」


「ーーーはぁ」


メルリに呼ばれて、ロゼリアは両肩を落として溜息を吐いた。


時計を何度も繰り返し見て、自分の装いを確認し、所在無げに部屋の中を歩き回っていたのだから当たり前である。


「ああ、どうしましょう。ねぇ、私、変ではないわよね?」


今日何度目かの質問に、メルリはニッコリと笑う。


「大丈夫です」


そう言われても、ロゼリアは自分のドレスをじっと見下ろした。日頃から華やかな衣装を身につけていればこんなに戸惑わずに済んだのだろうが、普段は質素な装いをーー皇妃として最低限の基準はあるがーー好んでいるから、わりかし地味な色合いのドレスを着ることが多かった。


勿論、華やかなドレスを着た事がない訳では無いが、今日身につけているものよりは幾分か落ち着いた感じだ。


目に痛いほどの毒々しい深紅のドレスは、正直ロゼリアの好みでは無かった。真紅のふんわりとした薄いシフォンを幾重にも重なり合う様に縫い付けた、薔薇の花びらをモチーフにして作られたこのドレス。胸元にはフリルの黒いバラが縁を沿うして縫い付けてある。


腰を覆うように垂れ下がる黒バラと同じ色のリボンは、ロゼリアの腰をより細く見せていた。


コルセットも、うっとおしいくらいに締め付けているのだが、こればっかりは取るわけにもいかない。


正直息苦しくて仕方が無いのだが。


「コルセットって、存在しなくてもいいと思うの。苦しい」


「少々緩めましょうか?」


「・・・いいわ」


普通に返されてしまい、ロゼリアは引き下がる。腰は細ければ細いほどいい、というのが、この世界の常識。


ロゼリアはそんなにこだわらなくても・・・と言いたいが、世の中の女性の常識を誤る事はしない。


自身の恥は陛下の恥。


「ーーー私、大丈夫かしら?」


この質問も最早口癖のように何度も繰り返している。


メルリを見ると、困ったように苦笑した。


「勿論です。ーーですが、緊張なさるのも致し方ございません。今日は側室の方が後宮に入られる日ですから」


ーーーーそう。


今日だ。


新しい側室が、後宮へと入るのは。


側室はまず陛下に顔を合わせる。その後、ロゼリアの元へと参上する手筈となっている。


名前は疎か顔さへ分からない。


ロゼリアは後宮ではなく、城の皇妃の部屋の方に住んでいる。もともと側室は後宮の方に住み、皇妃となれば王と同じ城に住むのがこの国では通常。


皇妃の部屋は陛下の部屋の隣にあるのだが、今のロゼリアの部屋は、皇妃専用の部屋ではなかった。


どうしても、気が進まなかったのだ。


『彼女』のものになる筈だった部屋だと思うと。


だから、皇妃となり、その本来の部屋を与えられた時、無理を承知で部屋を変えてもらった。


今の部屋は、妃の部屋としては狭く質素なものだが、それでも、あの本来過ごす筈だった部屋よりは余程いい。


もとより、部屋の狭さは気にならない程度にはあるし、ロゼリアにとってはそれでもまだまだ広い。十分過ぎる。


それに、陛下だって嫌だろう。


隣に望んでもいない妃がいるなど。


私を愛して下さるなんて、あり得ない。心を向けてくださるとしても、それは愛ではなく、親愛の情・・・。


贅沢は言わない。ーーーそれでも、十分だと思うから。


望まない、望んではいけない。


何度も何度も、自分に言い聞かせてきた。




ーーーー側室、か・・・。




朝、例の如く陛下を起こしに行ったら、陛下が妙に浮き足立っていたように感じられた。


部屋に入ったら既に陛下が起きていて、ロゼリアは驚いた。毎日同じ時間に部屋に訪れていたが、ロゼリアに起こされる前に起きているなど初めての事だった。


思わず固まってしまったけれど、変に思われたりはしなかったかしら・・・。


特に変な顔をしたりもしていなかったから、大丈夫だとは思うのだけれど。


それにしても、眠れない程に側室の方の後宮入りが待ち遠しかったのね。


ロゼリアはひっそりと息を吐き出す。


仕方のない事だとはいえ、やはり胸の内側は

痛む。けれどどんな気持ちでも、顔に出さず笑みを浮かべる事だろう。


それが、自分の為すべき事なら。


仮初めの立場の自分。


寵愛を受けているという新しい側室の方。


「ねぇ、メルリ」


「はい」


「もし、私が一人になっても、貴方は私の傍に居たい?」


問いかけると、メルリの茶色の瞳が揺らぐ。


「ーーーメルリは、ずっとずっと、お傍に。ロゼリア様、貴女様の、傍に居ます。いさせて下さい」


「ーーー有難う」


未だ、自分を支え続けてくれる彼女の為にも、頑張らなくてはいけない。


臆する事なく。


例え先はわからずとも・・・今はまだーーー・・・。




コンコンッ





ノックに、ロゼリアはメルリと顔を見合わせる。


メルリが扉に歩み寄り、ロゼリアに許しをこう。


ゆっくりと頷き、ロゼリアは口を開いた。







「ーーーーどうぞ」







次回側室様登場です。


猫被り??


ロゼ、とことん落ちて・・・。



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