表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/30

プロローグ

 初めて出会った貴方は、とてもとても冷たい目をしていた。


「お前を愛する事は無い」


 皇妃としての私しか、貴方は必要とはしないと、開口一番に言われたのを今でも忘れられずに覚えている。

 本来、貴方の傍にいたのは私では無かったから、貴方にこう言われても仕方がないと思ったわ。

 貴方は未だに忘れられないのでしょう?

 まだ、愛しているのでしょう?

 他でもない、彼女の事を。

 先日亡くなられたという側室が、彼の寵愛を一身に受けていたと聞いたのは、ここに来てすぐの事で、本当ならば、今日、ここで微笑んでいたのは彼女だった。

 貴方もきっと笑って彼女の手を握ったことでしょう。

 でも、彼女は死んで、代わりに私が仏頂面の貴方の隣にいる事になってしまった。

 貴方はいつも沈んでた。心の拠り所を失い、絶望に目を塞いでしまっていた。

 私は思う。

 私が貴方に出来る事はあるだろうかと。

 ボロボロになった貴方に、私が出来る事は………。


「陛下、お早うございます」


「陛下、お休みなさいませ」


「陛下、今日はとってもいい天気ですわ」


「陛下、ご機嫌が優れないのでは有りませんか?」


「陛下」


「陛下」


「陛下」


 誰もが陛下を腫れ物のように扱う中、私はせっせと、人形のような貴方に呼びかける。

 貴方からの返事は「ああ」だとか「そうか」だとかばっかりで、会話にさえならないけれど、それでも私は根気良く話しかけ続けた 。

 貴方は私を愛さない。

 でも、それなら、私以外では……?

 貴方には休息出来る止り木が必要だと、私は考えたの 。

 彼女はもういない。ならば、別の方を愛するようになるまで、貴方が、人を再び愛することが出来るようになるまで、彼女の代わりに私が貴方の傍にいます。

 貴方はいい顔をしないだろうけれど、あなたの妻として、これくらいしか私が出来ることはないだろうから。

 怖がらないで

 泣かないで

 絶望に落ちてしまわないで

 私がずっと、傍にいるから。


 貴方が再び、人を愛するその日までーーーーーーー。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ