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9.妻の葛藤

拡散された異星人のメモを見て、美咲は<これを書いたのはあの男>だと確信した。同時に<本当に異星人なのだろうか>と疑問に思った。美咲は真剣に考えた。

あの男に頼まれて宇宙にいる夫に電話をしてメッセージを伝えた。夫は異星人の事を否定しなかった。夫はあの男に地上で合っている。宇宙飛行士が彼を受け入れていたのだ。一般人が評論するのとはレベルが違う。

美咲は、夫があの男とどんな会話をしていたのか知りたくなった。彼の書斎にあるノートパソコンを開くと、デスクトップには、「月1会合」と書かれたフォルダがあった。普段なら決して開けないフォルダだが、夫のいない今、彼の知らない世界を少しでも知りたいという思いに駆られ、彼女はパスワードを入力した。

そこには、夫が書いた簡単なメモがあった。

「月1の会合、場所:喫茶店。相手:謎の男」「男は私が記憶喪失したことを知っている」「宇宙船は異星人に占拠されている」「私は異星人かも知れない」「異星人が田中飛行士に成りすまして地球に帰還」「地球人の技術は幼稚」「着陸時の事故」「中村飛行士の帰還は、偽装?」「宇宙船は、宇宙ステーションの核」「私は宇宙に戻る」

美咲は、メモに書かれた内容を読んで、息をのんだ。夫が話していたのは、すべて真実だったのだろうか? 夫は、記憶を失い、自分が何者なのか分からなくなっていた。だが、ある時彼が漏らした「別の星から来たかもしれない」という言葉は、冗談ではなかったのだ。

美咲は、ノートパソコンを閉じ、窓の外を見た。

夫が宇宙にいる。そして、彼は何者かと戦っている。

彼女は、夫の言葉を思い出した。

「私が誰なのか分からない。この胸を締め付ける感情が、地球のものなのか、それとも、別の星のものなのか…」

美咲は、夫の苦しみを、初めて理解した。彼は、ただ記憶を失ったのではない。彼は、自分の存在意義を、そして、自分の愛する家族が、偽りの存在かもしれないという、深い悩みを抱えていたのだ。

美咲は、夫の苦しみを、そして、彼が一人で背負っていた、重い運命を、初めて知った。

彼女の知らないところで、夫の人生は、とんでもない方向に進んでいた。

「…私の知らない世界で…」

美咲は、小さく呟いた。夫が宇宙に行くことになったのは、彼女の知らない、大きな衝動があったからだ。そして、彼女もその衝動に巻き込まれることになった。夫を失うかもしれない。

しかし、彼女は、夫を信じた。夫が異星人であるはずがない。夫が選んだ道は、決して間違いではない。彼は、自分の真実を知るために、宇宙へと旅立った。そして、彼女は、夫が真実を知るまで、彼の帰りを待つ。それが、彼女にできる、唯一のことだった。



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