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11.拒否された肉声

田中飛行士の頭の中で、全てのピースがはまりつつあった。

謎の男は、宇宙環境局の内部の人間だ。彼が語った「異星の記憶」や「自然の消滅」は、おそらく予算獲得や組織の計画を推し進めるための狂言であり、彼の個人的な妄想が多分に含まれている。宇宙環境局の真の意図は、私を利用して「地球の危機」を国民に訴えさせ、組織の裏の計画を達成することだ。

これで、自分の記憶は異星のものではなく、地球の失ったものだという結論に達した。彼は異星人ではない。

しかし、一つの衝動が田中を突き動かしていた。それは、中村飛行士の安否だ。どんな小さな疑問も残しておくと脳を傷める。

男は、私との会合で、「中村飛行士は無事に帰還する」と断言した。だが、素直にその言葉を信じて良いのか?中村は彼らの計画に巻き込まれている可能性もあり得る。

田中は、すぐに宇宙ステーション管理局に連絡を取り、中村飛行士との交信を求めた。

「中村飛行士と直接話したい。私は彼のミッションの引継ぎ人だ。技術的な確認をしたい」

しかし、管理局の応答は、冷淡なものだった。

「田中飛行士。中村飛行士は現在、別の重要な任務の最中にあり、交信はできません。交信内容は、全て管制官を通じてください」

田中は食い下がった。

「短時間で構わない。彼の肉声で確認したい事がある」

「規約により、交信は認められません。田中飛行士の任務は、ステーションの核の調整です。私的な交信は、任務外です」

事務的な拒否の言葉は、彼の疑念を膨らませるに十分だった。

<なぜ、そこまで頑なに拒むのだ?まるで、中村の存在そのものを隠しているようだ>

彼の頭の中に、一つの恐ろしい可能性が浮かび上がった。

中村はすでに、謎の男の計画に巻き込まれているのではないか? そして、その計画とは、男が私に語ったように「中村飛行士に成りすまして地球に潜入する」ことではないのか?

もしそうなら、謎の男が言っていた「中村は無事に帰還する」という言葉は、文字通りに取ると、**「中村の肉体は、別の誰かを乗せて地球に帰還する」**という意味になる。そして、それが虚言であっても、別の陰謀にかかわっていると想像できる。

田中は、窓の外に広がる、青く輝く地球を見つめた。

この地球には、自分の愛する家族がいる。そして、今、その地球に、大きな危険が迫っているかもしれない。

彼の胸の内で、新たな決意が固まった。

<私は中村の安否を確認し、背後の陰謀の全てを暴き出す>

田中にはもう1つ分かった事がある。仮に、異星人と言っている男の要求をきくことも簡単ではないということが分かった。なぜなら田中の独断で地球にメッセージを出す事は簡単には出来ないということである。



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