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担任はクール、クラスメイトはクルクル

このイケメンは本条(ゆたか)、いやみったらしくない笑顔が似合う好青年である。


頭脳明晰、容姿端麗、スポーツ万能な社長の御曹司とくるカーストトップだ。

今日もイケてるオーラを無駄撃ちしている。

周囲できゃーきゃー騒いでいるところをみると既にクラスメイト何人かのハートを撃ち抜いたらしい。


「なにあのイケメン?悔しいが俺の地位を譲らなくてはいけないらしいな」

「だがそんな悪く思っていない自分がいる」

「ボクの方がかっこいいんだからね」

「「「なんつって〜」」」


このアホな会話を聞くに入学式前に騒いでいた変態集団3人組と同じクラスらしい。

できるだけ関わり合いにならずに過ごす方向で進めたいものである。


考え事をしている間に、裕は正面まできていた。

流石に無視するわけにもいかないので話しかける。


「お前、なんでこの学校にいるんだよ」

「?みのるが進学するのを耳にしたからだが」


この春から地元を離れて引っ越した先にこいつが現れるとは内心すごく驚いている。

しかも、当然のようにいっているが同じ高校に来た理由が重い。

こいつはなぜだか俺に関わろうとしてくるきらいがあり、腐れ縁となっているのだ。


とはいえ、いいやつであるのは間違いなくホッとしているのも事実である。


「まぁ、なんだ、またよろしく」

「っ、ああ!よろしく!!」


なんかめっちゃ笑顔。

豆柴が尻尾ぶんぶんしとるみたく、いいお返事するわ。

俺にそっちの気はないが、美形というものは目線をもっていくものである。


バタバタっ


大勢のない乙女たちはノックアウトされたらしい。

後頭部を打っていないことを祈ろう。


ガラガラ、ピシャ


「着席しろ」


入ってきた人物は凛とした声で短く指示を出した。

クラスの雰囲気は一瞬で引き締まり、電子回路のように美しく己の定位置におさまる。


みたところ、20代後半でいかにもクールな教師といった風貌の女性である。

表情が固く、ポニーテールの髪型からシゴできオーラが漂ってくる。

状況からすると、この人が担任なのだろう。


「今日からお前たちの面倒を見ることになった新田花蓮(かれん)だ。担当科目は数学。

 規律を守らない奴には厳しく指導してくので、覚悟するように。だが、色々な失敗を積み重ねるのも諸君の特権だ。ほどほどに羽を伸ばすように…」


こほん、と軽く咳払いをして語った内容は可愛らしい。


クラス中は静かに先生の話を聞いていた。

そして全員がこう思ったに違いない。


(((((あ、絶対いい人だ。この先生についていこう)))))


あの3バカに至っては既に虜になっているだろうな。

先生のデレイベントが早すぎる気もするが現実世界でタイミングを求めるものではない。

クラスメイトの結束が強まったのは確実だろうしやり手なのかも知れない。


そういえば、自分の隣の席が空いたままである。

初日から席を外しているとは剛気な人物もいたものだと思ったが、

事情があるのかも知れないし特に気に留める必要もないだろう。


その時、ある男子生徒が挙手をしながら勢いよく質問をした。


「お母さん。空席の机があるようですがどうしたんですか」

「ある事情により欠席している。明日には来ているはずだ。」


男子生徒は言い淀んだり、照れたりしていない。

ニヤニヤしているところをみると確信犯のようだ。


(小学生のようなことをするな。恥ずかしい)


先生は先生で顔色を一瞬変えながらも特に触れなかった対応から生徒思いなのだろう。

こいつに丁寧な対応をしていやる必要はなさそうだったが…

ちらっと見ると【ピザって10回いってみて】を初めて成功させた子どものような表情をしている。


少なくとも男子に限っていえば、うちのクラスの個性はかなり強いようである。


その後は特に合いの手が入ることもなく、

淡々と業務連絡が続いた。

花蓮先生の澱むことのない流麗な演説がおわり本日のホームルームはお開きとなった。


(今日に必要なことは済んだし、俺も帰るとしますかね)


その矢先、

「では、一緒に帰るとしようか」

未来の義弟が腕をとりながら共連れを提案してきた。


説明していなかったが、この坊々はうちの佳織と付き合っている。

中学時代は美男美女カップルとして校内でも有名だった。


今更ながら、彼女と離れ離れになることが嫌で進学を俺と揃えたのだと独り納得する。


両人は俺からみてもお似合いのうえ相性も良さそうなので、割と本気で義弟になるのではと思っている。

認めてはいるが、お決まりの【お前に妹はやらん!】の件は本気でやるつもりである。

やるったらやるのである。決してシスコンだからではなく、あくまでも興味本位でな。


「将来、生活に困ってもお前がいれば安泰だな」

「当たり前だろ。俺が養ってみせる。本条はそれほど柔ではないよ」


こんなふうに思考を読まれているかのように返事をしてくる親友が怖い。

いや、普段から少し重い言動をするこいつのことだ。

常日頃から思っていることをそのまま言っているだけのように見える。


こいつのこんな表情をみせられて寄りかかって生きられるやつは

そういないだろうなと思いながら帰るためにワックスがかけられたばかりの廊下へ歩を進める。


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