さよならのハンカチ
はるとくんは、はじめての小学校がちょっぴり不安でした。
でも、となりの席のゆうたくんが「いっしょにあそぼう!」とさそってくれて、すぐに仲よしになりました。
いっしょにドッジボールをしたり、べんきょうをおしえあったり、雨の日は図書室で本をよんだりしました。
「はるとはすぐにわらうから、おもしろい!」
「ゆうたのなわとび、すごいな!」
ふたりはいっしょにすごすのが、だいすきでした。
だけど、ある日、ゆうたくんが言いました。
「ぼく、ひっこすんだ」
はるとくんの心が、ぎゅっとなりました。
「いやだよ! ずっといっしょがいいのに!」
ゆうたくんはにっこりわらって、ポケットからあおいハンカチをとりだしました。
「これ、はるとにあげる。ぼくのおきにいり」
「えっ、いいの?」
「うん。ないたときも、うれしいときも、これでふけるでしょ?」
はるとくんは、きゅっとハンカチをにぎりました。
「ぼくも、ゆうたにあげる!」
ランドセルの中から、おなじあおいハンカチをとりだして、ゆうたくんにわたしました。
「これで、ぼくらはずっとともだちだよ!」
ふたりはぎゅっとハンカチをにぎって、さよならをいいました。
そして、おたがいのハンカチをポケットに入れて、新しい一歩をふみだしました。
***
それから、はるとくんは毎日ゆうたくんのことを思い出しました。
おにごっこをしているときも、べんきょうをしているときも、ポケットのハンカチをぎゅっとにぎると、ゆうたくんのえがおがうかんできます。
ある日、はるとくんはドッジボールの試合でころんで、ひざをすりむいてしまいました。
「いたい……」
なみだがこぼれそうになったとき、ポケットのハンカチをそっととりだしました。
「ゆうたのハンカチ……」
そのとき、はるとくんはゆうたくんの言葉を思い出しました。
「ないたときも、うれしいときも、これでふけるでしょ?」
はるとくんはハンカチでなみだをふいて、ぐっとこぶしをにぎりました。
「ぼく、がんばるよ!」
それからも、うまくできないことがあったり、さびしくなったりしたときは、ハンカチをにぎりました。
そうすると、ゆうたくんが「だいじょうぶ!」っていってくれている気がしました。
***
そして一年後。
ある日、おかあさんが手紙をもってきました。
「はると、ゆうたくんからお手紙がとどいたわよ」
「えっ!」
はるとくんはドキドキしながら手紙をひらきました。
——
「はるとへ
ひさしぶり! こっちの学校にもなれて、たくさんともだちができたよ。
でも、はるととのことは、ずっとおぼえてる。
このまえ、おひるごはんのときに、はるとがくれたハンカチをつかったよ。
やっぱり、はるとのことを思い出した!
だから、また手紙をかくね!」
——
はるとくんは、ポケットのハンカチをそっとにぎりました。
「また、ゆうたにあえる日がくるといいな……」
そう思うと、なんだか心がポカポカしてきました。
「ぼくも、おへんじかこう!」
はるとくんは机にすわって、たのしく手紙を書きはじめました。
ハンカチは、ふたりをつなぐ“ひみつのきずな”みたいだね。
これからも、ずっとともだち!
—— おわり