防災無線の鳴る頃
ねぇ、知ってる?
この街の防災無線って、毎日午後の5時に鳴るじゃん。
ただね、一ヶ所だけ違う『音』が鳴る所があるらしいよ。
それを聴いた人はね――
▪▪▪
(はぁ、はぁ……観たいテレビが終わっちゃう!)
小学5年生の湊は、学校のクラブを終えて家に帰っていた。
(あと、もうちょっと!)
丘を越えて、見慣れた古いポストがある角を曲がろうとした時だった。
午後の5時を知らせる、防災無線が鳴り響く。
(……?)
湊は、違和感を覚えて足を止める。
いつもは町の町歌が流れるはずなのに、違う音が聴こえたのです。
耳を澄ませてみると、どこか聴いたことがあるような音。
でも、それは町歌に紛れて微かに聴こえるだけ。
「うーん……まあ、いいか」
大した音ではない、そう感じた湊は家の方へ向かうのだった。
▪▪▪
それから、というもの。
湊の周りで不可解な事が起きました。
「……えっ?僕たちが飼っていたちよちゃん死んじゃったの!?」
あの音を聴いた数日後、クラスで飼っていたウサギの『ちよ』が急に死んだと先生から聞いたのだ。
「ああ、本当さ。昨日は元気だったんだが、朝冷たくなっていたんだ」
ウサギは寂しいと死ぬ事は、5年生の湊でも知っていた事だが……
腑に落ちないのは、他のクラスのウサギと一緒に飼っていたのに自分達の子だけ死んだというもの。
死んだ理由は、正直わからない――
そう先生が付け加えた。
それ以上、湊は言えませんでした。
(ちよちゃん、可愛がっていたのに……)
そう思いながら湊は教室を出ると、同級生の早良まほが話しかけた。
「ねえ、湊くん」
「……なに?早良さん」
そう返すと、まほは表情を曇らせながら手招きした。
着いていくと、正面玄関の下駄箱に案内された。
「……朝、全然気付かなかったけど」
そうまほが言いながら、湊の靴箱を指差します。
(………!?)
そこには、血のような真っ赤な手のあとがあったのです。
「ん?どうしたんだ、二人とも」
その時、たまたま教頭先生が通りかかりました。
「……先生、これ」
僕は、静かな声で例の血塗られた部分を指差しました。
「なんだ、これは」
教頭先生は聞きますが、湊は『分かりません』と言わんばかりに首を横に振ります。
「悪戯にしては、やり過ぎだな。……俺から、校長に話を通しておくぞ」
その言葉に、湊は頷きました。
▪▪▪
あれから何事もなく過ごしていた湊だったが、またクラブが遅くなって走って帰っている途中でした。
あの日のように、古いポストが見えた時でした。
午後5時を知らせる、防災無線の音楽が聴こえました。
(……!?)
また違和感がして、湊は足を止めます。
あの時には微かに聴こえていた『違う音』がしっかりと聴こえました。
『 コノサキハ イッチャダメ 』
音だと思っていたのは、あの子の声―――………
▪▪▪
「ねぇね、知ってる?」
「なに、早良さん」
――防災無線のウワサ、キミは知っている?