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晃輔の悶々


「〜〜〜〜昨日、何であんな事を言ったんだ……俺」


 翌日、晃輔は昨日の出来事を思い出して一人ソファで悶えていた。


 突然、自分の当時の事を話し出して、勝手に泣いて、それでななに抱き締められながら弱音を吐いて……晃輔は昨日の事を思い出して恥ずかしいやら後悔やらで頭がいっぱいになっていた。


 穴があったら入りたいとはこういう事だろう。

 あの時の自分は明らかにおかしかった……いきなり皆に自分の過去を話して、共有を強いて……皆には完全にヤバイ奴だと思われたはずだ。

 正直、皆に会うのが怖い。


 もう、何か色々な感情がごちゃごちゃになっていて、晃輔は朝から恥ずかしさのあまり顔を赤くしてみたり、逆に後悔で真っ青にしてみたりと、まるで壊れた信号機の様になっていた。


「晃輔大丈夫?さっきから顔を赤くさせたり青くさせたり……一人百面相大会でもしてるの?」


 朝食のお皿洗いを済ませたななが、心配そうな表情をしながら晃輔に尋ねてくる。

 なながいつも座る時は、晃輔とは多少の間隔を開けるのだが、何故だかは知らないが今日はゼロ距離で晃輔の隣に座ってくる。


「いやしてないけど……というか、一人でそんな事してたらただのヤバイ奴だろ」


 晃輔は必死に平静を取り繕うが、ななが視界に入ると、どうしても昨日の事を思い出してしまい頬が内側から熱くなっていくのを感じた。


「……そう。それはごめんなさい……ところで晃輔は何でそっち向いてるの?」

「……何でも無いです」

「なに今の間。あと、何で敬語」

「本当に何でも無いのでお願いですから今はこちらを見ないでください」

「……ふ〜ん」


 ななに背を向けた晃輔がそう告げると、ななからご機嫌な声が聞こえてきた。

 晃輔は背を向けているので見えないが、ご機嫌そうな声からして、多分ななはにやにやしているのだろう。


「……もしかして、気にしてるの?昨日のこと。私の胸の中で泣いたこと」


 なながそう言うと、晃輔の身体が分かりやすくびくっと震えた。


「ふふ」

「何だよ」


 見えないから分からないが、恐らくいたずらっぽい笑みで晃輔の事を見ているのだろう。


「やっぱりそうなんだ?」

「……」

「沈黙は肯定と捉えるけど?」

「……鬼かよ」

「鬼とは失礼な……晃輔、私の胸の中で泣いてたのに……」


 少し寂しそうな声でそう言うので、晃輔はどう反応したら良いか分からなくなる。


「……」

「ふふ」


 晃輔が反応に困り黙っていると、突然ななが晃輔の背中に自分の背中をくっつけてきた。

 突然ななと背中合わせの状況になり、晃輔は困惑した。


「何だよ」

「……何でも無い」


 晃輔が尋ねると、ご機嫌そうな返事が返ってきた。

 ご機嫌そうな声からして、この状況を随分楽しんでいるらしい。


 なながいったいどういうつもりでやっているのか分からないが、晃輔の方はもう色々とキツイものがあった。

 背中に人肌とななの温もりを感じて、晃輔の心臓が暴れ出しそうになる。


 このままではまずい、と判断した晃輔がななから離れようとして横にずれると、ななもそれに合わせて横にずれてきた。


「……ほんとに何だよ」


 晃輔が困惑しながらそう呟く。

 すると、晃輔と背中合わせになったななが話し掛けてきた。


「ねぇ晃輔」

「うん?」

「……私ね嬉しかったんだ。晃輔が話してくれて……」

「嬉しい?……いきなり自分の過去の事を話し出したただのヤバイ奴の話を?」

「卑屈ね……晃輔にとってはそれぐらい、忘れたいぐらい辛い辛い過去の話のはずなのに、晃輔はそれを話してくれた……私はそれが嬉しいの……こんな事言うのはおかしいんだと思うけどね……少しは晃輔に認めてもらえたのかな、って」


 そう言って、ななは少しだけ晃輔の方に体重を預けてきた。


「……」


 晃輔は大きくため息をつくと、ななの方へ振り返りななの頭に掌をおく。

 何を言ってるんだか、とそんなことを思いながら、突然の事に驚いた表情をするななの頭を優しく撫でた。


「え、こ、こうすけ」


 驚いたななだったが、ななは向きを変えて晃輔にされるがまになった。


「……ったく何だよ認めてもらえたって」

「だって、私は晃輔が部活を辞めた本当の理由を知らなかったし……それに、そんなに時間も経ってるわけじゃないから、聞くに聞けなかったから……だから」

「それはごめんって……いつかはななに話さないとーとは思ってたんだけど……まさか、あんなタイミングになるとは思わなかったよ」


 晃輔が優しく頭を撫でると、不安そうだったななの表情が和らいでいく。


「話すつもりではいたの?」


 晃輔に頭を撫でられて大人しくなったなながそう尋ねてくる。


「そりゃあそれはいつかは」

「本当に……?」

「そこで嘘ついてもどうしょうもないだろ……ななとはこれからもずっと一緒なんだし」

「……え、それってどういう意味……」

「?……俺とななはこれからも一緒の家で暮らすんだから……いずれかは話す事にはなるだろうって……どうした、なな」


 晃輔が話していると、途中からななの顔が茹でたこの様に真っ赤になった。

 そして何故か今、晃輔はななからポコポコと薄い胸板を殴られている。


 意味が分からず、晃輔が撫でるのを止めるとななが不満そうな表情に変わる。


「バカ」

「突然の罵倒」


 ポコポコと殴るのは止めてくれたが、今度は何故かななにじっと見つめてきた。

 晃輔をじっと見つめてきたと思ったら、突然視線を逸らしたななに、晃輔は理由が分からず首を捻る。


「ええっと……ななさん?」

「……バカ」

「ええ……」


 頬を赤く染めて可愛い罵倒してくるななに晃輔は困惑しつつ、このままだと何も進まないので、思い切って晃輔はななに尋ねてみることにした。


「ええっと……なな、俺は今どうすればいいんだ……?」

「……さっきまでやっていた、私の頭を撫でることを継続してください」

「何で敬語」

「…………」

「わ、分かったから、頭撫でるから無言でぽこすかは止めてくれ」


 晃輔はななの要望通りにななの頭に手を置いて、そのままゆっくりスライドしていった。

 優しく晃輔に頭を撫でられたななは、満足そうな笑みを浮かべていた。


 それを見た晃輔の心臓が跳ね、頬が内側から熱くなっていくのを感じて、そこから、しばらくの間ずっと晃輔の心臓が暴れていた。



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