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テスト前の集まり


「お邪魔しまーす!」 


 玄関の扉を開けて、家に入ってきたあおいがそう告げる。

 今日はあおいの希望で、晃輔、なな、あおいの三人で勉強会を行うためにあおいが二人の家に訪ねてきた。


 エントランスの方で、あおいがマンションの下に着いたと連絡をくれたたので、鍵を持っていないあおいのために、予め玄関の鍵を開けておいたのだ。


「いらっしゃい」

「あ! お姉ちゃん!」


 リビングに居たななは、玄関のドアが開く音が聞こえた方に向かってそう告げる。

 すると、ななを見つけたあおいは、思いっきりななに抱き着いてきた。


「ちょっと! あおい、危ないから抱き着いてこないで!」


 思いっきり抱き着かれたななはその勢いで倒れそうになるが、なんとかぎりぎりで踏み留まる。

 なんかこれ前も見た光景だな、と晃輔は二人を見て思った。


「お姉ちゃん、体調もう大丈夫?」


 あおいは、ななに抱き着いたまま心配そうな表情でそう尋ねた。


「大丈夫よ。心配かけてごめんね。あおい」

「ほんと? よかったー」


 あおいは深く息をついて、安堵の表情を浮かべた。


「ほんとに心配したんだからねー。いい加減テストの時期に、こうなるのやめよね」

「ごめんね……」


 そう言って若干不満げに言うあおいの頭を、ななは優しく撫でた。


「わかってくれたなら別にいいけど……なに? どうしたのこー兄、私たちを見つめて……?」


 二人を見ていた晃輔の視線に気づいたあおいはニヤリと笑う。

 その笑顔に、晃輔は非常に嫌な予感がした。


「もしかして、こー兄もお姉ちゃんに頭を撫でてもらいたいの?」


 あおいは、ニヤニヤしながらそう告げた。


「……」

「!?」


 晃輔の予感が見事命中した。晃輔は思いっきりため息をつく。ななはあおいの発言に顔を赤くした。


「はぁ……酷い流れ弾だな……単純に、二人は仲いいなーと思って見てた。のと……」

「のと?」

「晃輔?」


 ななとあおいは晃輔の顔を覗き込む。こうして二人並んでいると本当に姉妹なんだなと心の中でそんなことを思った。


「勉強しなくてもいいのかなーって。あおい成績って大丈夫なのか? 今日ってその為の勉強会じゃないのかなーって思ってた」


 晃輔が真面目な顔でそう言うと、さっきまではしゃいで元気だったあおいは、突然猫を借りてきたみたいに大人しくなった。


「……こー兄のいじわる……」


 そう言って、あおいはジトっという視線を向けてくるが、実際今日は勉強を行うためにあおいはわざわざ二人の住まう家に来たわけで。


「ふふ。そうね、でもそれが今日のメインなわけだし」

「えー! お姉ちゃんまでー!」


 あおいは、顔を膨らして抗議の意を示そうとする。


「というか大変だったんだよー。特にお姉ちゃんとこー兄が同時に休んだ日なんてー」

「俺とななが休んだ日……ああ、やっぱりあの日なんかあったのか?」


 晃輔はあおいにそう尋ねる。

 正直、晃輔は、一番それ(・・)が気になっていた。

 ななが体調を崩したあの日、晃輔は、病人であるななを一人にはさせたくない、という理由で、晃輔も学校を休んだのだ。


 ななは、念のためもう一日休みにして、晃輔は別に風邪を引いているわけではないので、一日ぶりに学校に登校すると、なぜかクラスのみんなから、生暖かい視線と嫉妬みたいな視線を一日中向けられて、晃輔は全然落ち着けなかったのを覚えている。


 あの日、あおいは一体どういう説明をしたのだろう。


「なんかあったって言うか、こー兄たちのクラスによった時、お姉ちゃんの友達が詰め寄ってきたんだから」


 あおいは此間のことを思い出したのか、疲れた顔をする。


「友達……あぁたぶん、希実と梨香子あたりね。絢音や藍子はそういうことはしないと思うし。たぶんそこで聞かれたのね?」


 ななは、あおいに詰め寄ってきたのが誰か直ぐにわかったようで、額に手を当て、大きくため息をついた。


「そーだよ。ついでに、こー兄についても聞かれた」

「俺のことも? なんで?」


 クラスが一緒のため接点がないわけではないが、希実ならともかく、石見たちとは、特にこれと言って関わってこなかったので、どうして晃輔のことを尋ねられるのかわからなかった。


「二人が同時に学校休んだからじゃないの?」


 そう言って、あおいが呆れたような目で晃輔を見る。

 それに関しては、完全に晃輔のポカが原因なので、迷惑をかけてしまったあおいには何も言い返せない。


「う……石見のほうはともかく、希実の方は、昌平のやつにしっかり彼女の手を握っておくように伝えておくか」


 そう晃輔は真面目な表情で呟いた。


「それで、なんて梨香子たちにはなんて言ったの?」

「んーと、先週、お姉ちゃんの誕生日会があって、その時にこー兄も呼んで、そしたら、家族が風邪気味だったからそれがお姉ちゃんに移ったんじゃないかなって。たぶんこー兄もって」


 晃輔は、あおいの話を聞ききながら、胃がキリキリと痛むのを感じた。そして、ようやく一昨日の謎の視線の正体が何なのか理解した。


 あれはあおいが前日にそう言ったから、翌日、晃輔は謎の視線に晒され続けた。

 色々とあおいに言いたいところだが、本当に助けてもらっているので何も言えない。


「ねえお姉ちゃん。お姉ちゃんって体調不良ってこと一応連絡してたんでしょ?」


 あおいにそう聞かれたななは、無言であおいから目を逸らした。


「……」

「お姉ちゃん……」


 あおいは呆れたようにそう呟いた。


「学校には、けど希実や梨香子たちには連絡してなかったかも……」


 ななは、あおいと目を合わせないようにして、そう告げた。


「……え」


 今度こそ、本当になにも言えなくなるあおいに、晃輔は苦笑いした。


「そしたら、そろそろ勉強を――」


 晃輔がそう言いかけた時だった。


 ピンポーン!


 突然、モニターの方から来客が来た事を示すチャイムが鳴ったのだ。


「!?」

「え?」

「誰!?」


 晃輔、なな、あおいの三人は、驚いてそれぞれ顔を見合わせる。

 どうやら玄関の方のチャイムではなく、エントランスのほうから鳴らし来ているらしい。


 今日尋ねて来るのは、あおいだけと聞いていたので、完全に予想外の来訪者となる。

 なんだか嫌な予感がしてモニターを確認すると、エントランスの方のインターホンに手を振る希実と昌平の姿が写っていた。

 


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