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幼馴染の体調不良


 ななとチーズケーキを食べた次の日の朝、晃輔は目が覚めるとベッドから起き上がり、隣でなな寝ていることを確認してから洗面所に向かい顔を洗う。


 顔を洗ったら晃輔はリビングに向かい、朝ご飯を作り始めた。

 晃輔はまだ寝ているのななを起こさないように、なるべく静かに、音を立てないように二人分の朝ご飯を作り、それが終わると食卓に作ったものを並べる。

 朝ご飯を食卓に並べ終わり、晃輔はリビングのソファに座る。


 晃輔もななも特に約束した訳ではないが、いつの間にか、ご飯の時は二人一緒のタイミングで食べるようになっていたため、晃輔はななが起きるのを静かに待つことにした。


「今日は随分と起きるのが遅いな……」


 晃輔は、リビングにある時計を見てそう呟く。

 晃輔が時計を見ると、あと少しで七時になるところだった。


 普段のななであれば、就寝時間がどんなに遅くても、六時半前後には必ず起きてくる。

 しかしこの時間になってもまだ起きてこない。

 晃輔はなんだか嫌な予感がして、寝室に向かおうとした……その時だった。


 ガチャ。

 寝室とリビングに通じる扉が開いて、起きてきたなながふらふらとした様子でリビングにやってきた。


「……おはよう」


 そう言って、ななは晃輔に軽く手を振る。


「おはよ……う……?」


 そう言いかけた晃輔だったが、起きてきたななをひと目見て、その様子がおかしいことに気付き困惑した表情を浮かべる。


「な、に?」


 歯切れの悪い晃輔にななが怪訝そうな顔をしながらそう言うと、晃輔は真剣な表情でななに告げた。


「……なな、なんか顔赤くないか?」


 晃輔がななの様子がおかしいことに気が付いた理由……それは起きてきたななの顔が赤く火照っているのだ。

 それだけで様子がおかしいとは言えないが、いくら寝起きとはいえ、流石にちょっと変だと思った晃輔はななにそう尋ねた。


「そう? 別に大丈夫……よ?」

「……はいこれ」


 ななが言い終わらないうちに、晃輔は戸棚から取り出した体温計をななに手渡す。

 体温計を渡されたななは、困惑した表情で晃輔を見る。


「……え!? なんで?」

「いいから。熱測って」

「え、でも」 

「いいから」

「はい……」


 晃輔が少し強めにそう言うと、何か言いたげ顔をしていたなななだったが、やがて晃輔の言う通り素直に体温を測り始めた。


 ななは体温計で熱を測るためか、晃輔が目の前にいるのに関わらず、着ていた服を脱ごうとして、晃輔が慌ててななを止めた。

 どうやら、ななの思考があまり回ってないようで、自分のやろうとしたことに気付いたななは、既に赤い顔をこれでもかと言うぐらい真っ赤にさせて、目をぐるぐるさせていた。

 結果、耳まで真っ赤になったななは、逃げるように自室に向かい体温計で熱を測った。


「熱は?」 


 晃輔は自室て体温を測り終わり、戻ってきたななにそう尋ねる。


「三十七度三。平熱よ。ちょっと休んでれば治るわ」

「そっか」


 そう言って晃輔は、ななから体温計を取り上げる。


「うん。だからそろそろ食べて、学校に仕度をしないとー」

「なな。これ、俺には三十八度三に見えるんだが?」


 晃輔はななが喋っているのを遮って、ついさっきななが使用したばかりの体温計を見せる。


「……」


 晃輔がそう告げると、ななは無言になってスッと晃輔から目を逸らした。


「晃輔の見間違いじゃない? その体温計が壊れてるのかも」


 ななは体温計を指差しながら、そう告げる。

 この体温計は、前に測った祭の数値がそのまま記録され残るので、先程使用したななの体温もしっかり記録されるのだ。


 なので、どれだけ体温計に表示された数値を見ても、三十八度三と表示されるだけだ。

 また、この体温計は晃輔がたちが一緒に暮らすために、新品を購入したものなので壊れているという可能性は限りなく低いだろう。

 もちろん例外もあるとは思うが。


「はぁ……あのな……言い訳が苦しすぎる」


 晃輔は呆れた表情でななを見ると、すすっと近づいてそのままひょいとななを抱き上げた。


「…………ふぇ!?」


 遅れて、晃輔に抱きかかえられたことに気付いたななは、少しだけマシになっていた顔の火照りが晃輔に抱きかかえたことにより更に増していた。


「こ、晃輔?」


 突然のことに頭が追いついていないななは、若干パニクりながら上目遣いで晃輔を見つめる。

 やはり、熱のせいもあったか思考が回っていないんだな、と晃輔は腕の中で狼狽えてるななを見てそう思った。

 勝手に女性の体を持ち上げるのも、この体制も、晃輔の心的にあまり良くないが、今は、恐らくそんなことを言ってられない状態だろう。


「なな、この状態のままベッドまで連れて行かれたいか、自分の足でベッドまで行くかどっちがいい?」


 そう言って晃輔はななの顔を覗き込む。


「う。う………晃輔の意地悪……」


 ななは耳まで真っ赤にさせ、睨むように晃輔を見るが、熱のせいかいつものような迫力はない。


「意地悪だよ」

「が、学校どうすのよ? テスト前よ?」


 ななは晃輔に抵抗するようにそう告げるが、いつもと違って声が弱々しい。


「今日は休め」

「え、でも……」

「学校に友達いるだろ? 希実や石見たちから聞けばいいだろ」

「……晃輔は?」

「俺も休むよ。こんな状態のななをほっとくなんてこと出来ないからな。それに、今のななを放置して学校に行くと良心が痛む。俺にとってななは大切な人なんだから」


 晃輔は、ななを見ながら真面目な表情でそう告げると、ななは一気に顔を赤くさせ目を右往左往させ始めた。


「どうした? というか、なんか顔もさっきより赤いし、熱上がってきてないか?」


 そう言って、晃輔はななの顔を覗き込む。


「誰のせいだと……」


 晃輔にそう言われたななは、恨めしげに晃輔を見て呟いた。


「それでどうする?」

「……わかった。今日は学校休みます」


 ななは小さくため息をつき、観念したようにそう告げた。


 晃輔は、抱きかかえたななをゆっくりベットに降ろすと、大きくため息をついた。


「ふぅ……」

「何で晃輔がため息をつくのよ……」

「……なんでだと思う?」

「……」


 晃輔にそう言われたななは、自覚があるのか気まずそうにして晃輔から視線を逸らした。


「ふ、そうだ。取り敢えず母さんとあおいに今日休むこと連絡してくるから」

「あ、ありがとう」

「ん。大丈夫」

「あと……なんか、ごめんなさい」


 そう言って、ななはしゅんとした表情になる。


「別に謝んなくていいし、そんな気負わなくても。一緒に暮らしているんだし、その辺は持ちつ持たれつということで」


 晃輔は苦笑いしながらそう言うと、リビングへ向かい真実とあおいのそれぞれに今のなな状態と、念のためとして自身も学校を休みたいとの旨を伝えた。


 あおいは「私まで休んじゃうと、多分怪しまれると思うから、今回はお姉ちゃんをお願いね」と返ってきた。真実は「今回だけだからね」と言って晃輔が学校を休むことを許してくれた。


 リビングで電話をした晃輔は、念のためということで、常備しておいたスポーツドリンクと市販薬、冷却シート、タオルを持って寝室に向かう。


「薬、市販だけどいいな?」

「うん。ありがと」


 ベットの上で上半身を起こしたななが晃輔を見てそう告げる。


「その前になんか食べないとな」


 晃輔はななに薬を手渡しながら告げる。


「食欲はあるか?」

「微妙」


 ななが首を横に振って答えると、晃輔は最近買って冷蔵庫に入れっぱなしになっているゼリーを思い出した。


「ゼリーなら食べられるか?」 

「うん」


 晃輔としても、病人に固形物を食べさせるのは流石に気が引けるので、正直助かった。


「じゃあ持ってくるから、ちょっと待っててくれ」


 そう言って晃輔は、キッチンに向かい冷蔵庫からゼリーを取り出してななに手渡す。


「ありがと」

「うん」


 晃輔はなながゼリーを食べ終わるのを見届けると、一度キッチンに戻り、コップに水を注ぐ。ついでについ最近買ったばかりの氷枕を冷凍庫から取り出す。

 戻った晃輔は、渡したコップでななが薬を飲んでいる間に、氷枕をタオルで包んで枕元にセットする。


「すごい……」

「こんなの大したことじゃないぞ」

「ありがとね。ほんとにいろいろ」

「大丈夫だから。ほら、寝ないと治るものも治んないから。おやすみ」


 そう言って、晃輔がななから離れようとすると、何かに袖が引っかかった。

 袖のほうに視線を落とすと、ななが晃輔の袖を掴んでいた。

 驚いてななを見ると、本人も無意識だったらしく、自分の手を見て離し、慌てて布団の中に潜り込ませる。


 その様子を見た晃輔は、昔自分が風邪をひいた時のことを思い出して、一度軽く布団をめくって、布団の中にあった掌を見つけると、その掌を優しく捕まえる。


「あ、ありがと……」

「大丈夫。寝ればすぐ治ると思うから。おやすみ」

「うん。いつもありがとう。おやすみ」


 それで安心したのか、ななは直ぐに眠りについた。


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