幼馴染へのプレゼント
「ありがとう!!」
晃輔とあおいから祝いの言葉を言われたななは、顔を赤らめて嬉しそうにはにかんだ。
「さぁ、早く食べましょ。せっかくの晃輔くんが作ってくれた料理が冷めちゃうわよー」
「そうね〜」
両家の母親たちは、ななの反応から上手くサプライズできたと思ったのか、早くご飯を食べようと急かしてくる。
時計を見ると既に十八時半を回っていた。夜ご飯の時間としては、丁度良いぐらいだろうか。
「晃輔のお母さん! それに嶺兄さんも!」
ななは、真実や嶺たちの存在に気付き声を掛ける。
「それに……え、晃輔が作ってくれたの? 今日のこれ」
ななは、楠木家の食卓に綺麗に並べられたご馳走を指差しながら、晃輔にそう尋ねる。
「……まぁな」
晃輔がぶっきらぼうにそう答えると、ななは驚いて目を見開く。
「なんでそんな照れてるの〜?」
「……照れてない」
「いや、じゃあ今の間は?」
あおいにからかわれたので即座に否定したら、すかさず嶺にツッコまれた。
「はいはい。アンタたち、じゃれ合わないの」
パンパンと手を叩いて、晃輔たちの注意を真実たちのいる方に向けさせる。
「はーい! いやー、こー兄とお姉ちゃんが面白くて、つい」
「は!?」
「ちょっと!」
あおいが突然笑顔で変なことを言い出し、晃輔が思わず反応する。
すると、完全に無関係だったななもあおいの流れ弾を食らったため、同じ様な反応をした。
「わ、私今関係無いでしょ!?」
真っ向から思いっきり否定していく今日の主役。
「う〜ん……そう?」
あおいは首を傾げながら、黙って晃輔たちの会話を聞いていた嶺にそう尋ねる。
すると、あおいに尋ねられた嶺はなんとも言えなさそうな表情でそう返した。
「どうだろうな……」
「嶺兄さんも……もう! いいからご飯食べましょ!」
これ以上話をし続けているともっと絶対面倒くさい事になる、そう判断したのだろうかななが強引に話を進めようとする。
「そうね……この後ケーキもあるんだから。早く食べ始めましょうか」
「ほんとに、いい年して何やってるのよ……」
両家の母親たちは、呆れた表情を隠そうとせずに晃輔たちにそう告げた。
「いや何が……というか、どの口が言ってるんだか……」
「それは俺も思った……」
晃輔も嶺と同じことを思った。
晃輔と嶺は恥ずかしくて着けられなかったが、晃輔と嶺を除いたメンバーは、皆目立つパーティー帽子を着けて、ななを出迎えていた。
「ん? 何か言ったかしら?」
「「いいえ」」
晃輔たちは声を揃えて否定する。
「ふふ」
「あははー!」
それを見ていたななは小さく笑い、同じくその様子を見ていたあおいは、腹を抱えて笑っている。
「……真実ちゃんも、案外人の事を言えないのよね……」
呆れながらに千歳はそう呟いた。
千歳がそう呟いたのを皮切りに、それぞれご飯を食べようと席に着き皆で「いただきます」をしてからご飯を食べ始めた。
因みに、両家の父親たちは晃輔たちがご飯を食べている最中に帰宅してきた。
晃輔たちが夜ご飯を食べ終わると、あおいの強い希望で楠木家に置いてあった世界中から支持させる大人気のレースゲームをする事になった。
晃輔とあおいはこのゲームで遊ぶことが多かったので、特に問題も無くやれている。
嶺は「そういえば、相当久し振りにやったな」と言いながら、楽々一位を取っていた。
そんだけプランクあってなんでできんだよ、晃輔は心の中でそんな事を思っていたが、どうやらななやあおいも同じ事を思っていたらしく若干引いた目をしていた。
凄かったのは、ななが最初のうちは、最下位争いをしていたのだが、徐々にコツを掴んだのか、晃輔たちと一緒に一位を争そうようになっていた。
白熱したレースゲームが終了し、目の休憩のため全員休んでいると、あおいが突然ななに何かを差し出した。
「はい! お姉ちゃん!」
「これは?」
困惑するななはあおいにそう尋ねる。
「誕生日プレゼントだよ!」
あおいは元気良くそう答える。
「え……ありがと……」
ななは突然のことに困惑しながらも、あおいに感謝の言葉を告げた。
「開けてもいい?」
「もちろん!」
ななはあおいから了承を得て、恐る恐る箱を開ける。
「これは……くま?」
あおいが渡した箱から出てきたのは、亜麻色の柔らかな毛並みの、どこかあどけない、そんな顔に縫い付けられた光沢のある黒のつぶらな瞳が特徴のぬいぐるみだった。
「うん!」
「…………ありがとう!」
そう言って、ななはぎゅーとぬいぐるみを抱き締める。
あまり大きすぎず、ななが抱き締めると丁度フィットするぐらいの、そんな大きさだった。
「どういたしまして!」
「はい、これは俺から」
そう言って嶺は、あおいと同じように、ななに綺麗にラッピングされた箱を手渡した。
「え……!」
嶺から箱を貰ったななは驚いて声を上げる。
「いつの間に……」
これに関しては晃輔も知らないことだった。
「えっと……これ……」
「ああ、開けてもいいぞ」
ななは困惑した表情で、嶺に尋ねる。
嶺から了承をもらったななはあおいの時と同じように恐る恐る箱を開ける。
「ハンドクリームだ……」
嶺が渡した箱から出てきたのはハンドクリームだった。
「………………」
「これからの季節には、まぁ、あんまし使わないとは思うけど……嫌だったか?」
「ううん、全然そんなことないよ」
嶺が尋ねると、ななは首を振ってそう答えた。
「嶺兄さんもありがとう!」
「ん。どういたしまして」
あおい、嶺、と順にプレゼントを渡していっているので、あと残すのは、まだプレゼントを渡していない晃輔だけとなった。
「あのさ、なな――」
「晃輔! ななちゃん! アンタたち、そろそろ帰らなくても大丈夫?」
晃輔がそう言いかけた時、母親の真実が時計を指差しながら告げた。
時計を見ると時間は二十時半を過ぎていた。
「いつの間に……」
「もうこんな時間なんだ……」
晃輔とななは口々にそう呟く。
「えー! もう帰っちゃうの?」
「まぁ、ほんとは、もっとゆっくりしていけばって、そう言いたいところだけど、流石にそう言うわけにもいかないからな……」
あからさまに残念そうな表情をしているあおいに、嶺はそう告げる。
「まぁ、お家遠いからねー」
「別に遠くはないわよ」
「あれ、気使ったつもりだったのに……」
「どこがよ……」
ななは、若干呆れながらそう告げる。
すると、嶺はななとあおいが繰り広げる意味不明な会話を遮り、晃輔の方に顔を向けた。
「まぁまぁ……晃輔」
「ん。なな、そろそろ帰ろっか……結構いい時間だし」
「……わかったわ」
そう言って、嶺に促された晃輔とななは帰る仕度を始める。
「今日はありがとうございました」
晃輔とななの帰る仕度が終わり、晃輔とななを見送るために玄関に皆が集合すると、ななが見送りに来た皆に向かって、丁寧にお辞儀をする。
「いいのよ! 気にしないで! その代わりって言うのもなんだけど、晃輔のことお願いね!」
「えっと……はい……」
ななは困惑しながらそう答える。
「……それじゃあ」
晃輔は、今の会話を耳にして色々と言いたいことがあったが疲れるので今はもう気にしないことにした。
「うん! じゃあねー!」
藤崎家と楠木家の皆に見送られた晃輔とななの二人は、自分たちの家に帰っていった。
***
晃輔は、家に着いたものの、一体どのタイミングでプレゼントを渡せばいいか悩んでいた。
家に帰ったものの、結局、全然プレゼントを渡すタイミングがなかった。そして、気付くといつの間にかもう、あと寝るだけとなってしまっていた。
ななは、今日は夜の勉強はないらしく初日ぶりに一緒のタイミングで寝ることとなった。
「………………なな、ちょっといい?」
晃輔は寝ようとして準備しているななを呼び止めた。
ななには悪いが、晃輔はもうこのタイミングしかないと思っていた。
「……なに?」
ななは晃輔を真っ直ぐ見つめる。ななの瞳に晃輔の顔が映し出された。
晃輔は軽く深呼吸をする。そして、緊張や不安などの色々な感情で心臓の音が早くなるのを感じながら、晃輔は勇気を振り絞った。
「本当は、もっと早くに渡そうかと思っていたんだけど……」
そう言って、ピンクゴールドのブレスレットが入った箱を手渡す。
「これ……おめでとう」
……これが今の晃輔の精一杯だった。
晃輔がプレゼントの箱を手渡すと、恐る恐るななの表情を伺うようにゆっくりと顔を上げる。
緊張やら羞恥などの色々な感情で顔が赤くなるのを感じながら、しっかりななの顔を見据える。
晃輔から箱を受け取ったななの顔は、ほんのりと赤く染まっており、瞳が少し濡れていた……様に見えた。
「……うん……ありがとう」
一、二秒程停止していたななだったが、ハッとして晃輔に優しく微笑んだ。
「これ、開けてもいい?」
「ん」
晃輔のそれに苦笑いしつつ、ななは丁寧に包装されている箱を開ける。
すると、中身を見たななは驚いて目を見開いていた。
「なな?」
驚いた表情で固まっているななに、晃輔は思わずそう訪ねてしまう。
「ピンクゴールドのブレスレット!」
「え、うんそうだけど……」
「こ、これ! 前に私が欲しいって言ってたものだよね!?」
「ああ」
「え、嘘! 凄く嬉しい!!!!」
ななが珍しく大はしゃぎをしている。
いつもは大人っぽい姿を見せることが多いななだが、今は子供みたいにはしゃいでいる。
晃輔は、ななの反応を見て良かったと思うと同時に、普段見ることのできないななの姿に、晃輔の脈は大きく波打つ。
「ありがとう! 大切にするね!」
そう言って、ななはとびっきりの笑顔で晃輔を見つめた。
その笑顔を間近で正面から見てしまった晃輔は、心臓がバクバクとなって、結局、朝まで一睡もできなかったという。




