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幼馴染は凄むと怖い


「んっ……」


 ベットの横に置いておいたスマホから目覚まし音が鳴り、晃輔は目を覚ました。


 結局、昨日はななが欲しそうなものを見つけ出すことはできなかった。


 ななと一緒にご飯を食べてる時や、お風呂から上がってリビングで寛いでいる時など、ななの行動を注意して見ていたが、収穫はなかった。


 また、なるべくななと一緒にいれば、何かと気付けるのではないかと思っていたが、そう上手くいくはずもなく。


 結局、ななは今月末にある中間テストの勉強をすると言って自室に籠もってしまった。なのでそれ以上は何もできていない。


 ただ、晃輔が寝ようとしている時もななの部屋は電気がついていたので、少し心配になる。

 学生の本分として勉強するのも大切で、成績をキープするのも大切なのはわかっている。


 しかし、あれでは試験前に頑張り過ぎて体調を崩すのではないかと心配になる。

 体調を崩して試験を受けられませんでした、では本末転倒になってしまうからだ。


「まぁいいや……取り敢えず起きるか」


 恐らく、本人にそう言ったところで聞く耳を持たないだろう。「ありがと、でも大丈夫だから」と返ってくる事が容易に想像できる。


「あれ?」


 ベットから起き上がると、隣で寝ているはずのななが居ない事に気付く。


「……どこに行ったんだろう」


 晃輔は朝ご飯を作らなければいけないので、取り敢えずリビングへ向かう。

 

「おはよう」


 晃輔がリビングに向かうと、既にリビングにななが来ていた。


「あぁ……おはよう」


 ななが自分より早く起きてることに動揺したのか、返答が変な感じになってしまう。まさかこんな事で動揺するとは思わなかった。


「……? どうしたの?」


 晃輔の異変に気が付いたのか、ななが首を傾げて聞いてくる。


「いや、ななが俺よりも早く起きてるなんて珍しいなーと思って」


 大体、というかこの生活が始まってからは、ほぼ毎日、晃輔はななよりも早く起きる。

 なので、まさかななが先に起きているとは思わなかった。


「そう?」

「うん……」


 あおいとの約束のせいで変に緊張するというか、変に意識してしまって、返答にぎこちなさが残ってしまう。


「別に何にもないわよ。ちょっといつもよりも早く目が覚めただけ。というか、どうしたの?」


「な、何が?」

「なんか昨日からこっちをチラチラ見て……」


 ななは若干不機嫌そうに告げた。


「……!?」


 思わず晃輔は顔を引きつらせてしまう。

 どうやらバレていたらしい。


「あー、えーと……」


 なんて言おうかと晃輔は必死に頭を使って考える。


「晃輔」

「……はい」


 ななに凄まれた晃輔は思わず頷いてしまった。


「昨日家庭教師をしている時、あおいが『クラスのアイドルって言われてる美少女のお姉ちゃんと一緒に暮していて、なんとも思わないの?』って突然言ってきて……それでいて変に意識してただけ」


 我ながらちょっと苦しい言い訳かもしれないが、それでなんとか納得してほしい。


「……」


 晃輔が理由を話すと、突然、時が止まったようにななが固まってしまった。


「な、ななさん?」


 突然固まってしまったななに驚きつつ、晃輔は固まったななに声を掛ける。

 そして晃輔の方を見て、たっぷり十秒程固まっていたななは、晃輔にそう言われハッと我に返る。


「そう……」


 そう言って、ななは晃輔とは反対側に身体を向ける。ななが晃輔に背を向けていることで、ななの顔が赤くなっていることに晃輔は気付いてない。


「うん」


 これどうすればいいんだ、思わずそう思ってしまうほど、部屋の中に重く気まずい空気が流れる。


「えっと、なんかゴメンな」

「……? なんで晃輔が謝るの?」


 ななは背を向けた状態で晃輔に問いかける。


「え、だってななは不快な思いをしたわけだろ。実際こっちの問題だったわけだし……」


 実際、ななには不快な思いをさせてしまったのは事実であり、謝るのは、別に間違っていない。


「別に、大丈夫よ……」

「え、でも……」

「ほんとに大丈夫だから。だから、朝ごはん作ってくれる?」


 ななは晃輔の方を振り返ってそう告げる。


「……いや……だからが全然繋がんないんだけど……まぁいいや。じゃあ作るから、ちょっと待ってて」 

「ふふ、ありがと」


 そう言って、ななはいたずらっぽく微笑んだ。


 ななの微笑んだ顔に思わずドキッとしてしまい、今度は晃輔がななから身体を背ける形となった。

 晃輔はその場から逃げる様にキッチンの方へ向かった。


 晃輔がキッチンに行ったことで、リビングに一人になったななは、リビングのソファに深々と座り、近くにあったお気に入りのクッションを抱え込む。


「意識してくれてたんだ……」


 ななは、先程晃輔が言っていたことを思い出してしまい、誰にも聞こえないように小さく呟いた。

 せっかく収まりつつあった頬の赤みが再燃してしまったななだった。


 その光景をキッチンの方から見ていた晃輔だったが、頬を赤らめたななが何を言っているかまでは、晃輔には聞き取れなかった。



***



「なぁ、楠木さん何かあったのか?」


 学校に登校して早々に昌平がそんなことを尋ねてくる。


「なんで?」

「いやさぁ……ほら、ああなってるから」


 そう言って昌平は窓側にいる女子たちに視線を向ける。

 晃輔は昌平につられて窓側の方へ視線を向けた。

 何故かは知らないが、ななは教室の窓側のほうで女子たちに頭を撫でられたりして可愛がられている。


「さぁ……」


 そう言って、晃輔は思わず昌平から目を逸らしてしまう。

 それと同時に、朝のななとのやり取りでななが見せたあの表情を思い出してしまい、顔がニヤけそうになるのを必死に堪えていた。


「……」


 結局、あの後はしばらくの間お互いぎこちなかったが、登校時間になる手前ぐらいにはいつも通りの二人に戻っていた。


「というか、なんでそれ俺に聞く?」

「いや、だって昨日、帰りあんなことがあったわけだし、まぁ多分、あの女神様か晃輔絡みの案件なんだろうなーって思って」


 昌平は若干呆れながら晃輔にそう告げる。


[知らんけど]

「知らんけどって、あのなぁ……」


 思わず晃輔は顔を引きつらせる。

 ほんと、なんでこいつは時々鋭いんだと思う。

 恐らく昌平の気まぐれで、確証があれば多分、からかってくるんだろうなぁと思った。


「まぁさ、それよりも昨日、のんとさ……」

「また、はじまった……」


 晃輔はげんなりした表情をして、思いっきりため息をつく。

 晃輔にとっては、昌平は数少ない友達のひとりであり、親友なのだ。


 晃輔にとって数少ない友達だからこそ、友達の話を聞くのは苦じゃないのだが、朝の、ななとのやり取りで精神的に疲れてしまっている。


 だからこそ、まさかこのタイミングで昌平と希実との惚気話を話してくるとは思わず、余計精神的に疲れそうだなと思った。


「はぁ……」


 こうして晃輔は、授業が始まるまでの間、昌平と希実の惚気話を聞かされるのだった。


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