頑張ったあとのご褒美
「見てた!? お姉ちゃん! こー兄!」
あおいの試合が終わり帰ろうとした晃輔たちは、同じように帰ろうとしたあおいに捕まった。
「ああ」
「見てたわよ、凄かったわね」
そう告げるななの表情は、いつにも増して穏やかで、ななから出ている雰囲気が妹を大切にするいいお姉ちゃんっていう感じだった。
「えへへ~、ありがとう!」
「流石だったな」
「えぇ、ほんとに凄かったわ!」
「ありがと! でも……お姉ちゃん、なんでそんなに疲れてるの?」
「そんなことないわよ?」
「そう……?」
そう言ってあおいは晃輔の方を見る。
ななはあおいの試合を見て終始興奮してからその影響だろう。わざわざ口に出したりはしないが。
「でも、わざわざありがとね! 試合見に来てくれて! 結構遠かったでしょ?」
あおいはななが疲れてる理由を追求するのを諦め、別の話題に移った。
「大した事はないわ。電車で一本なんだし」
「どちらかというと、駅から学校までの距離のほうが遠いな」
「そうね」
晃輔たちが通っている学校は、急な坂道を登るか、段数の多い階段を登るかしないと行けないところにある学校なのだ。
最寄り駅は新横浜駅からあざみ野方面に一駅。
もしくは住んでる人によっては二駅の場所で、特徴としては、横浜なのに自然に囲まれていて、緑豊かな場所で地域の人もとても親切で優しく暖かい町。
少し前までは晃輔たちもこの町に住んでいた懐かしい場所だ。
「ねぇねぇ! こー兄! アイス食べたい!」
そう言って、あおいは最寄り駅の目の前にあるコンビニを指差す。
「……家の前なんだし、家帰ったら食べれば良くないか?」
「良くないの!」
「えぇ……」
「頑張った子にはご褒美あげないと!」
それはこのコンビニの、駅を挟んで反対側にある歯医者さんのガチャガチャの……と晃輔はツッコミたくなった。
「晃輔ごめんね。私からもお願い。あおいのお願い聞いてあげてほしい」
「ななまで!?」
「今日はあおい頑張ったから」
そんな上目遣いで、可愛らしい子犬みたいな目でこっちを見ないでほしい。
「はぁ……わかったよ。何食べたい?」
「こー兄! ありがとう!」
「ちょ、あおい、いきなり抱きつくな!」
嬉しいから抱き着くとか犬かなんかだろうか、晃輔は内心そんなことを思う。
「ちょっと! 晃輔!?」
「いや……これ俺悪くなくない?」
何故かは知らないが、ななが顔を真っ赤にして晃輔を睨んでいた。