女神様の実力
晃輔たちは今日、あおいの試合に来ていた。
正確には、あおいが助っ人として出場している試合を見に来ている。
「晃輔! 見て! あおい凄いよ!」
晃輔の隣でなながハイテンションになって叫んでいる。
「ああ、凄いな、ほんとに……」
「凄いね……」
「流石、勝利の女神だね……」
晃輔たちと同じように試合を見に来ていた生徒があおいを見て呆気に取られている。
ななは勉強ができるのに対して、あおいは運動ができる。
昔から、というわけではないが、男の晃輔と張り合える程かそれ以上に身体能力が高い。
恐らく、昔から晃輔などにくっついて遊んでいたからだと思う。
だからこうして部活の助っ人に呼ばれ、二年や三年のレギュラーを差し置いて大活躍をしている。
こういうことを繰り返しているから学校では、勝利の女神、とあおいは言われている。
本来は勝利や幸運をもたらす存在だが、あおいの場合は、このようにして自力で勝利を手繰り寄せる。
あおいが助っ人に参加した試合はほぼ負けなし、というとあれだが、結構高い確率で勝利するらしい。
結果、たった一ヶ月ちょっとでいつの間にか勝利の女神というあだ名が広まった。
「楠木さん! お願いー」
「はい!」
三年生からあおいにボールがパスされる。
あおいがボールを手に取ると、それだけでななが大興奮するのだ。
「見て! あおいがボールを持った!」
あおいはそのままドリブルをして敵陣の中に切り込み、バスケットゴールに向かってボールを放り投げる。
するとボールは吸い込まれるようにゴールに入っていった。
「やったー! 入ったー!」
あおいが点を決めると、ななは自分のことのように大喜びする。
こんなにもはしゃいでいるのはいいんだけど、はしゃぎ過ぎてななが倒れるんじゃないかと心配になったりもした。
あおいは、次の第三クオーターはベンチに戻った。
「あれ? もうあおいの出番は終わり?」
「いや、温存だろう。連続で出ていたら流石のあおいでもバテるだろうし」
晃輔の予想通り、あおいは次の第四クオーターで途中から出場した。
四クオーターの途中から試合に出たあおいは、その後もレギュラーを差し置いてバンバン点を決めた。
あおいが抜けている間に逆転されてしまい点数差があったのだが、あおいが入ることでそれがあっという間に縮まり、結果、四十点以上の点数差をつけて勝利した。
試合に勝利した後、晃輔とななに気付いたあおいは、汗ダクになりながら満面の笑みで両手にピースをしていたのが印象的だった。