バーベキュー2
「やっと終わった……」
何故か晃輔にだけ課せられた仕事いう名の準備が終わり、晃輔は疲れ切った身体を休ませるためにいすに座った。
準備が終わった晃輔が疲れ切った身体を休ませるためにいすに座っていると、ななが晃輔の分の食材をお皿に乗せて持って来てくれた。
「お疲れ様。はい、これ」
「お、ありがとう。助かる」
「どういたしまして、ちょっと待ってて」
ななは小走りにクーラーボックスの方へ向かうと、ペットボトルのコーラを取り出して晃輔に渡した。
「サンキュ……」
「大丈夫よ。それにしても、料理関係以外はほとんど晃輔がやったのね……お疲れさま」
ななは呆れた表情でそう呟いた。
「あぁ、酷いよなー、嶺兄さんやあおいもいたのに……」
「仕方ないんじゃない? 嶺兄さんとあおいはお母さん達の手伝いをしてるし、ほら、お父さんたちはあの状態だし……」
そう言って、ななは皆が居る所に目を向ける。
晃輔もななにつられて目を向けると、少し離れた所で深くいすに座った両家の父親たちがイビキをかいて爆睡していた。
「爆睡……」
「まぁ、ほら、ここまで運転してもらったから大目に見てあげて」
「はぁ……わかったよ」
晃輔はこれ以上言うのを諦めて、ななが持ってきてくれたコーラを開ける。
パキッ、ぷしゅー。
晃輔はペットボトルに入ってるコーラを開けて飲むと、ななに持ってきてもらったものを頬張る。
「あ! こー兄! おつかれー! 食べてるー!?」
お肉を頬張りながら、ご機嫌なあおいは晃輔にそう尋ねる。
「食べてる、食べてる」
晃輔はあおいのそれを適当に返した。
すると、いつの間にか晃輔とななの母親たちすぐ近くに来ていた。そして、ナチュラルに晃輔たちの会話に混ざってくる。
「それにしても、久しぶりねー、こういうことやるのいつぶりかしら」
「ほんとよねー」
「お母さん!」
「母さん……それに……」
さっきまで父親たちの方に居たはずの嶺もここにいる。
「あぁ、ほら、晃輔の準備が終わったからさ。やっと落ち着いてみんなで話せるだろ。父さんたちはまぁ……ほっといて大丈夫だろうし……」
またも、晃輔が聞く前に先に言われてしまう。
「ありがとな」
「どういたしまして……」
嶺が素直に感謝してくるので、なんだか変な感じの空気になってしまう。
「そういえば……ななとうまくやってるか?」
「あぁ……割と」
いきなり話が変わったな、と晃輔がそんな事を思っていると、心なしか嶺の表情が少し曇っている事に気が付いた。
「そうか……」
「……? なんだよ」
「いや、ちょっと心配になっただけだよ」
嶺はどこか心配そうな表情で晃輔を見ている。
心配……嶺の口からそんな単語が出できて驚く晃輔。
それと同時に、晃輔は理解した。
嶺は嶺なりに晃輔を心配してくれていたらしい。
「大丈夫……なな相手だと平気らしい……」
「そうか、ならよかった……」
晃輔が答えると、嶺の表情は先程よりも少しだけ明るくなっていた。
「そういや、嶺兄さんは大丈夫なのか?」
「俺?」
「いや、ごめん言い方を間違えた。家の方は大丈夫なのか? 俺がいなくなってちゃんと生活できてるのか? って」
正直、あのマンションに住み始めた時から、疑問に思ってから聞いてみたかった。
些細なことかもしれないがやっぱり心配になる。
「流石に大丈夫だ。確かに、今までは晃輔に任せきりだったけど」
と、嶺は思わず苦笑いをする。
「そうか、ならよかった」
「ふふ、心配してくれたのか、ありがとな」
嶺は晃輔の頭をぐちゃぐちゃと撫でた。
「んん……髪崩れる」
晃輔は、そう言って軽く抗議をする。
「そっか、悪い悪い」
嶺は大人しく晃輔の頭から手を離した。
正直あんまり人に身体を触られるのは好きじゃないが、今回は、何故か不思議と嫌な気分はしなかった。