探し上手のアマリアさん 〜ラジオの声〜
以前書いた『探し上手のアマリアさん』の続編です。
どうも、しがない男爵令嬢のアマリア・ノールドです。
以前、第2王子のアルフォート様の依頼を受けて幼なじみの女性に関する事件に巻き込まれてから一ヶ月が経過しました。
相変わらず落とし物を見つけては落とし主に渡す、という地味な日々を過ごしております。
たまにアルフォート様や婚約者のミランダ様にお呼ばれしてお茶会に参加したりしてますけど明らかな場違い感で石化する事もしばしば。
特に荒波の無い学生生活を過ごしているんですが……。
「アマリア、これを見てくれ」
「なんでしょうか、この装置は?」
アルフォート様に呼び出された私はある装置を見せられました。
「これは『魔導ラジオ』と言って国が開発している装置なんだ。魔力回路を使って放送をする物なんだ」
「へぇ……、これが広まれば画期的に世の中が変わりますね」
「あぁ、国民にも我々王族の思いや国の情報が共有される事になるだろう」
「それでこのラジオがどうかしたんですか?」
「うん、実はとある森でスタッフが録音作業をしていたんだがそこで不気味な声が聞こえたらしいんだ」
「不気味な声?」
「女性の声で『サガシテ』、『ミツケテ』と言う声が入っていたらしくて……、今このラジオは試験的に一部の貴族に配布しているんだが問い合わせがあってね」
「国としては放ってはおけない、と」
「それで頼みがあるんだが……」
「まさか、その声の主を探してほしい、と?」
「そういう事だ」
「いやいやいや、流石に名前もわからない相手を探すなんて無理ですよ。前回は遺品があったから見つけられたんですから」
「しかし、父上から即効で調べよ、とのお達しなんだよ……」
また、とんでもない無茶振りですね。
「うーん、とりあえずその現場に行ってみましょう」
流石に無下には断れないのでとりあえず現場に行ってみる事にした。
「ここがその森ですか……」
私とアルフォート様、そしてその声を聞いた、というスタッフの方々と共に森へとやってきた。
「この辺りで録音していたんだな?」
「はい、録音中は気づかなかったんですが放送されて問い合わせがあって気づきました」
アルフォート様の質問にスタッフの方が答えます。
至って普通の森なんですけどね、若干風が冷たい様な気がします。
と、録音装置を持っていたスタッフが何かビクッとしました。
「お、王子! 聞こえました!! 女性の声で『タスケテ』と!」
「ホントかっ!?」
私達は慌てて録音装置に耳を傾けます。
『タスケテ……』
「た、確かに聞こえた……」
「やっぱり幽霊の声なんじゃ……」
「この辺りに埋まっているのか……」
私も背筋がゾーッとしてしまいましたがここで及んではいけません。
私は森の何処にいるかわからない声の主に大声で語りかけました。
「私は貴女を探しに来ました! もし私の声が届いたなら貴女の名前を教えて下さい! 必ず貴女を見つけ出します!」
するとラジオから何かが聞こえてきました。
『カ……タ……リ……ナ……』
「カタリナって聞こえたよな?」
「それがこの声の主か?」
「アマリア、出来るか?」
「多分いけると思います」
私は地面に手をやって呪文を唱えた。
「失せ神様失せ神様、この大地に眠るカタリナの元へ導いてください」
すると白い光の玉が地面から出てきてフヨフヨと浮かび動き出した。
「あの玉の後を追うぞっ!」
アルフォート様も2回目ですから慣れてますね、戸惑っているスタッフさんに声をかけ光の玉の後を追います。
森の中をどんどん歩いていきだいぶ奥まで来たんでしょうか、とある場所で光の玉は地面の中に消えていきました。
「ここに埋まっているというのか、早速掘り出そう」
用意していたスコップで地面を掘っていきます。
暫く掘っていくと固い物に当たりました。
「コレは……箱か?」
現れたのは人一人ぐらい入るぐらいの木箱でした。
「もしかして棺桶ではないでしょうか?」
「という事は……」
アルフォート様はゴクリと鍔を飲んで箱の蓋を開けました。
「うっ! これは……」
そこにあったのは腐乱死体でした。
服はドレスっぽかったので女性でしょう。
多分、この方がカタリナさんだと思います。
「すぐに兵士を呼んでくれ」
「わかりました」
あれから数日後、アルフォート様から事の詳細を聞く事になりました。
「後から失踪届を調べたら数年前にあの森の周辺に住む商家の娘のカタリナがパーティーに出て以来行方不明になっていたらしい。身元確認をしてもらったら間違いない、と」
「間違い無く殺されたんでしょうけど犯人が誰なのか……」
「犯人はもう特定されているよ」
「えっ!? 早いですね」
「犯人は既に捕まっていてね、若い女性ばかり狙う連続殺人犯だ。顔をナイフで斬り裂かれていた跡があってそれでわかったよ」
「捕まったんですか?」
「いや、変死体で発見されたんだがどうも妙でね」
「妙とは?」
「自分で全身掻き毟り死んだんだそうだ。凄い形相だったみたいだ」
うーん、連続殺人犯だったら相当怨みを買っているはずだからきっと怨念にやられたんだろうな。
「今回の件はラジオに流す事になっているからアマリアの名前もまた有名になるかもね」
「私は普通に過ごしたいんですけど……」
実際一部の貴族から注目されまた騒動に巻き込まれる事になるんだけどそれは別の話。