02.ひゅ〜泥どろ(?)後編
2か月ですね!!不定期とかそういうレベルなのか…。まぁ、とにかく後編の始まりです!!つまらないですが読んでもらえると嬉しいです。
「利子です。北野利子。一応、幽霊です」
俺は、耳を疑った。
…いや、落ち着け俺。
こいつは泥棒。突拍子もない発言でこちらの思考を乱そうとしているのだ。
騙されてはダメだ。
「…ははは。面白い冗談だな。それで、何しに来たんだ?」
「あ、いや、そのぉ…本当に、幽霊、なんですけど…」
ふふっ。
流石に苦しいな、これは。
利子と名乗る少女は色白ではあるが、外見は人間と何ら変わらない。
それに実体を持っていることは、少女が手に持っているポテトチップスの缶
(俺のお気に入り、プルングルス・のりしお味だ。おのれ…)がバッチリ証明済み。
そもそも幽霊なんて、誰が信じるのだ。
「…めっちゃ疑われてますね」
「そりゃそうだろ」
…よし。
泥棒の策を順調に回避する俺。
「あのぉ…その…」
オロオロする少女。残念だったな。
超現実主義の俺に会ったのが運の尽き。
せいぜい刑務所で頭冷やすんだな…と、最後通告を言い放つ。
「手詰まりか、この泥棒が」
"ドロボウ"という言葉に少女はびくんと反応する。
おいおい…。
なんとなく、全ての穴が空いたビンゴカードを想像してしまう。
縦が5、横が5、斜めが2…だから12列ビンゴか。
…まぁ要するに、袋の鼠もいいとこってわけだ。
「ど、ドロボーじゃないですっ!!ほ、本当に違うんですよっ!!」
涙目で訴えてくる。
う…。
何なんだこいつ。
単なる罠にしても、はかなげな少女が涙を浮かべて上目遣いで見てくると
何というかこう…。なぁ。
べっ、別にロリコンじゃないんだからねっ!!
…おっと。危うく罠にかかるところだった。
こいつやるなぁ…
「本当ですよ…」
…はぁ。
そんなに幼いのに泥棒か。どんな事情があるのか知らないけど…。
ここで盗んだ物を返してもらって逃がすだけでは、この子が将来かわいそうだ。
致し方あるまい。
「…そういえば、どうやって家に入ったんだ?戸締りはきちんとしたはずだが…」
こんな歳で、もうチェーンロックを外すような技術を持っているのだろうか。
何気なくした質問に、少女は突然、
「あ、そうだそれだっ!!!!」
何かを閃いたらしく、壁のほうを向く。思わず身構える俺を尻目に、
「よく見ていてくださいね」
と言う。壁に穴でもあけるのだろうか。
何か取り出したら、すぐに止めねば。
…と思ったのだが、なぜか少女はなにもせず、ただただ壁のほうへと歩いてゆく。
な、何をしているんだ!?
少女の奇行に、さすがに不安になる俺。
「おい、何を―――」
しかしそんな俺をよそに、少女は壁に近づいてゆき…
「!?」
す り 抜 け た 。
「んなっ、バカな!?」
目を疑った。目をごしごしとこする。
しかし、その後再び壁の中から少女が戻ってきて、今のが見間違いではないことを
証明する。
信じられなかった俺はその後、手品であると期待し、他の壁をもう一度すり抜けさせた。
結果は同じだった。
「バカな…手品に決まってる…」
と呟きを漏らす頃には、手品ではない事くらいよく理解していた。
「だから言ったじゃないですかぁ」
さっきまでと変わらず間延びした声。
濡れ衣を剥いで安心したのか、少女は笑顔だ。
「…ありえねぇ…」
驚きと焦燥と不安のせいか立ちくらみを覚えた俺は、ソファーに腰掛けてうつ向いた。
きっと夢だ。そのはずだ。
そう思ってみるものの、自分も少女もこの空間も、夢にしてはあまりにリアルすぎた。
少女はしばらく、俺が指で目をこじ開けて夢から覚めようともがく姿を見つめていた。
こんなところまで読んでくれてありがとうございます。後編ってことになってますが、もうしばらく続く予定です。3話はすでに書いてあるので、程なく投稿すると思います。よろしくです。