16.JOKER
久々に投稿です。どぞ。
「ユーマさん、私は学んだのですよ」
「ん、何を?」
夕食後、特にすることもなかったのでゴロゴロしていたら、
さっきまでどこかへ行っていた利子がぱたぱたと戻ってきた。
こういう挙動一つ一つが本当に中学生(生前)とは思えない。
……で、その手にはトランプ。妙に嫌な予感がする。
「ババ抜きなら、俺はパス」
「ふぉっふぉ。甘いですよユーマさん。カカオ99%のチョコくらい甘いです」
「そういうのを世間一般では苦いと言うな」
「何でです。チョコはカカオで出来てるんですよ」
この子はカカオが甘いものだと思っているらしい。
「とにかく、今回はババ抜きではないのです。私は学んだのですから」
「ほほぅ、続けてくれ」
「というわけで、ババ抜きではなくジジ抜……」
「パス」
「うぅ……」
やっぱり利子は利子だった。
「ん〜、俺今日は宿題もないし寝ようかな」
「ちょ、ちょっと待ってください!!じゃあ大貧民!!大貧民やりましょう!!」
「む」
大貧民のルール知ってるのか。じゃあなんでババ抜きにこだわるんだ。
俺が反応したのを見て、利子はにっこりと笑う。
「それじゃ、カード配りますね」
カードが配られた。手札は……まぁまぁか。
というか、そもそも二人だと全てのカードが必ずどちらかの手に渡るので、
そもそも手札の善し悪しもあまりない。革命の種も1〜2個は来るし。
俺は、4枚ある5を使って革命をすることにした。
革命をすればカードの強弱が逆になる。
利子が革命をしてくる可能性もあるが、しばらくは11、12、13、A、2あたりの
強いカードを通していこう。利子に先手で革命されたら、4〜9あたりを切り、
それらが切れたら隙を見て革命し、たんまりと残った強カードを通していく。
……などと頭の中で考えていると、
「では先攻は頂きますよ……革命!!」
「おっ」
利子は初手で4の革命。5で革命返しできるが、ひとまず見送る。
利子は4枚の4を長し、7。様子見か……面白い。
その後、しばらく下のカードの出し合いが続いた。
そしてここで俺は9以下のカードを切らす。温存していた3を切り、利子見送り。
残ったのは5、5、5、5、2、2、2、A、A、K、K、Q、J、J。
ここで革命すれば、おそらく利子は手出しできないだろう。
「悪いがもらったぜ……革命!!」
温存していた4枚の5をバシッと出す。
そして、利子を見やりながら、さっさと流そうと手を伸ばすと、
「あ、ちょっと待ってくださいです」
「なっ……!?」
そして利子は、手札から4枚のカードを抜き出す。
「すみません……その革命、返させてもらいますね」
3、3、JOKER、JOKER。
……やられた。
手札になかったせいでJOKERの存在を忘れてた。
革命を返された俺は、利子のQ×3枚→J×2枚→10×3枚→10→9→6に
全く対応できずに敗北。っていうか、10を4枚温存してたのか。
「……こりゃやられたな」
「えっへん。やっぱり甘いですね。カカオ99%のチョコくらい」
俺そんなに苦くない。
利子は勝って大変ご機嫌なようで、笑顔20%増し(当社比)だった。
それは本当に屈託の無い笑顔で……なんだかちょっと、ドキッとしてしまう。
「それじゃ、俺そろそろ寝るから」
「じゃあ私もです〜」
電気を消して布団に入ると、利子もいそいそと布団に入ってきた。
何となく利子に触れようとして、手を伸ばして……思いとどまった。
妙に照れくさくなった俺は、そういえばトランプで利子に勝ったことないな……
などとくだらないことを考えてごまかしたのだった。
ここまで読んでくださりありがとうございます。
大貧民は誰でも一度はやるトランプゲームだと思うのですがどうでしょうか。
利子から一言。
「ババ抜きよりもジジ抜きのほうが面白いですね」