15.薮から棒にうまい棒。
予定よりも大分遅れて更新。
「地球に〜やさしい〜」
利子は朝からハイパーマンのテーマソングを歌っているようだ。
相当感化されたらしい。
いい感じにスルーのスキルを発動中の俺は、さっさと朝食を摂るべく トーストの袋を開いて、
「ん?あ、トースト切らしてた……」
トーストがなくなっていたことに気付く。
帰りに買ってくるとしよう。
「ん〜、それじゃあ朝は何食うかなぁ」
冷蔵庫を適当に開けて食い物を探す。
しばらく食物探索行動にいそしんでいると、利子がぱたぱたと寄ってきた。
「お米食べろっ!!」
「食べねぇよ!!」
ていうかお前中学生女子だろ生前は。
「じゃあしじみとか?」
「……よくわからんが、しじみなんて家にはねぇよ」
「がんばれがんばれ諦めんなよお前ならできへぶっ」
チョップしてみた。
「朝から熱くなるなよ」
「うぅ……いたいですぅ……」 上目遣いやめい!!
「しかし、朝飯がないな。食べ盛りの俺に朝抜きは無理ゲーだろ」
「じゃあコンビニで何か買っていったらどうですか」
「不経済すぐる。一人暮らしで金ないんだから一食に何百円もかける訳にはいかん」
「100円でうまい棒10本買えますよ」
「……。」
なぜか、本当にうまい棒10本を購入する俺だった。
くっそ。トーストの重要性に改めて気付いた。
「あぁ、おいしいなぁ。うまい棒は本当においしいなぁ」
教室につくと、俺は朝食のうまい棒を幸せな気分で味わいつつ咀嚼していた。
嘘100%濃縮還元です。本当にありがとうございまし(ry
「お、うまい棒じゃん。俺にも一本くれよ」
隣の敬司が身を乗り出してきた。
「ダメだ。これは俺のなけなしの100円を……って、うおい!!」
敬司は俺の言葉に耳も傾けず、うまい棒(たこやき味)を開封しようとしていた。
「何だよ。一本くらいいいじゃん」
「やめろ。食うならせめてたこやき味じゃなくてこっちの納豆味にしろ。それは楽しみに
とってあるんだ」
実は、コンビニに行ったらうまい棒が品薄で、たこやき味が1つだけしかなく、残りは
納豆味しかなかったのだ。
「え〜、雄真ケチぃ」
「何とでも言え。そもそも、朝飯にうまい棒を食うほどのケチは類を見ないだろう」
「確かに」
「わかったらうまい棒を食べるというこれ以上ない至福の時間を邪魔するんじゃない」
「ダウト」
「たぶん正解」
さて、くだらない話はほどほどにしてうまい棒(納豆味)を食べるか。
「うん、おいしい。おいしいよ納豆味」
嘘20%増(当社比)の独り言を漏らす。
「ていうか、何で納豆味なんだろうな」
……おい敬司。正論言うなよ。
「んむ、甘いな敬司少年。納豆は体によいのだぞ」
「そもそもうまい棒は体によくねぇよ」
「何を言うか。空腹を満たすには充分だ。心にはよくないが」
……あ、言ってて泣けてきた。うまい棒の咀嚼に集中して涙を止めることにする。
「お味のほうはいかがですか」 手をマイクの形にして聞いてくる敬司。
「いい質問だ。さくりとした食感に濃厚な納豆の味がよく合う。710ねばねば平城京」
「……ごめん、俺も泣けてきた」結局、涙を流しながらうまい棒を食べる俺であった。視線?何それおいし以下略。
10本目のたこやき味を食べたときは感動もひとしおだった。
所詮はうまい棒であるという現実からは逃げた。多分回りこまれなかった。
学生なら一度は通るうまい棒の壁(?) うまい棒が金欠のときに助けてくれる蜘蛛の糸と思うか、貧乏を思い知らせる逆ピースと 思うかはあなたしだいです。僕は前者に一票。 読み返して、後半利子が影だったなぁ〜と今更気付く。 利子から一言。 「私は納豆味好きですけどね?」