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やってみなきゃ気付けないこともある

この話から学校通わせようかと思いましたが、1クッション挟むべきかと思いました。

どうやらこの家の家事全般は、父が一手に担っているらしい。洗濯や洗い物や家のきめ細かな清掃、果ては庭の手入れまで手慣れた様子で段取りよく片付けていっている。これがシュフ?の日常との事だ。

今も俺の目の前で忙しなく動き回り朝と昼の溜まった洗い物を目まぐるしい速さでこなしている最中だ。忙しいだろうし邪魔しちゃ悪いだろう……学校の件について話したいが、何となく声をかける気が退けてしまう



「……父さん。それ一緒にやってみてもいい?」



なぜかそんな言葉が口からついて出てしまった。

俺に背中から声をかけられた父の手が一瞬止まるが暫くしてから動き出す。

余計な申し出だったかな、どこか居た堪れない気分になった



「……手伝ってくれないんですか?今日は徹底的にやりますよ」



「望むところ!!」



かつて俺が魔王だった時代、住んでいた大きな城の名前は"エンド"といった。最期は見るも無惨に破壊し尽くされてしまったが、思えばあの居城は常に綺麗だった。いつ見ても窓に曇りは無く埃の一つすら落ちていなかった。

エンドの管理は侍女長ティアベルを筆頭として近衛侍女たちに任せきりで、気にかけてすらいなかった。感謝の言葉を述べた記憶もない。

が、やってみて分かった。あの当たり前に思えた光景は、俺が見てない所で彼女たちの献身的な支えがあったからこそだったのだ。

二千年経って、今更それに気付き、もう遅いのだけれど、それでも頭が下がる思いだ。



「学校にまた行きたいんですか?」



不意の言葉に思わずドキリとした。



「……うん。あの、なんで分かったの?」



父は眼鏡をクイッと上げた。ただそれだけの所作で。一気に。理知的に。理性的に。賢く見える!

俺の細かな動作からその心情を結び解いたとでも言いた気だ!



「顔に書かれてる」



「え?」



「君が思ってるより、親ってのは子どもの事をちゃんと見ているものだよ。だから分かるんだ」



紅葉と父は完全に別個体である。魔法的な繋がりは感じられない。それなのに。超常的な力だとするなら縁か?否。あれは命と場所を繋ぐ明確な糸だ。

きっとこれは。



「……愛だ」



「はい?」



「……」



今俺なんか凄い小っ恥ずかしい事口走った気がする。なんだこれ!今すぐ布団にくるまって足バタバタしたい気分!枕に顔を埋めて大きな声で悶え叫びたい気分!

全力疾走したい!消え去りたい!

そう思っているとちょうど玄関が開く音がした。

きっと母だろう。父を置き去りにして、急いでそこへ向かう事とする



「ヒック……!ママのお帰りだよー、ぱぱー!紅葉ちゃーん!これ隣町の新商品のパンケーキでドラヤキンって言うんだって!一緒に食べようずぇ〜!」



「おかえりー!母さ……ん?」



真っ赤な顔をした母。それ以上に髪の毛が紅く発光している。近付くと、ぶはぁ〜!と息を吹きかけられた。くっさ!なにこれ!くっさ!エールの臭い。お酒を呑んでいるのか!?



「大分酔ってますね、今日の相手はそんなに強かったんですか?」



「うん……?そーらね。つょかった。こんなおーきな隕石鳥(ストライクバード)だった。

しかもすげー速くてビューって!音よりはやかった!でも勝った!この町の平和はママが守るぜ〜」



隕石鳥とはその名の通り隕石みたいに音速で高速移動する鳥型の魔物だ。しかもやたらめったら頑丈で、普通の攻撃が殆ど通用しないくらい結構強めの魔物。

その大型を倒すとなると、やはり母はかなりお強いのだろう。



「はいはい。これからもよろしくお願いしますね」



父が子どもでもあやすように抱き抱えて、母を居間に運んでいく。っていうか、なんでこんな髪の毛がピカッと光ってるんだ?




「髪の毛が光る理由?それは紅羽さんが"酒呑童子"の子孫だからですね」



一息ついたのちに質問するとそんな答えが返ってきた。



「シュテン?」



「酒呑童子。千五百年前の初代九帝の1人で、お酒を呑めば呑むほど強くなる特殊体質の方だったらしいです。紅羽さんはそれを色濃く受け継いでるから、剣帝の前は、"酔剣"の紅羽と呼ばれてたんですよ」



なんだその呑兵衛の極みみたいな体質は。

"観る力"を強める。確かに髪の毛が発光している間、母はべらぼうに強くなってる。膂力も魔力も。

数多の強者がいたかつての魔王時代にも流石にこんな奴はいなかったな。



「あれ?私って純粋な人間だよな。酒呑童子は何族なの?父さんと母さんの子どもなら半人だと思うんだけど」



「……。僕は純血の人族で紅羽さんは赤鬼族ですよ。そして紅葉さんも純血の人族です。ここから先は難しい魔法のお話になるので、もっと君が大きくなったら学校で習うはずですよ」



人と鬼の子なら半人半鬼だ。だがそうではない。母は本当の母ではなく継母……いやそういう事ではなさそうだ。大体の察しは付くがな



「そういえば学校の件、良いですよ。明日から程々に頑張って下さいね。無理だけはしちゃだめですよ」



「うん」



やれる事をやろう。紅葉のためにもな。

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