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月には蟷螂がいる  作者: 田村麻呂
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初対面

西暦2705年9月12日 12:00───第4部隊初顔合わせ当日 対策部隊基地ホールにて


1000人以上の人間が入っても余裕があるこの大きなホールに、全隊員が列をなして並んでいた。

月喰対策部隊は1部隊は20人で構成されており、その20人をまとめる隊長が存在する。

ホールに集まっている全隊員の中には、ユズキを含む第4部隊の隊員もいた。

しかし第4部隊の隊員達は互いに顔を見るのは今日が初めてであった。

全隊員の前には坂本、亮の他にも3人の人間が立っていた。


坂本は窓を勢いの声量を隊員達にぶつける。

「気を付けぇ! これより月喰対策部隊緊急会議を始める!」

ユズキは列の前方にいたので亮の顔を確認できたが、亮の顔は寝不足なのか病人のような顔していた。

「耳に入っている者も多いと思うが、本日から新たに第4部隊を結成することとした!」

隊員達の第4部隊の方を確認する視線がユズキの体を刺す。

「そのため新たな隊員を迎えると同時に各部隊の人数調整を行った!

 第1部隊からは八百波 水歩(やおなみ みなほ)、第2部隊からは春夏冬 鷹史(あきなし たかふみ)

 第3部隊からは勅使河原 式美(てしがわら しきみ)以上三名を第4部隊に異動とする!」

「(式美っていう名前なのに男なんだ…)」と思うと同時に「(これ以上人数が増えたら人間関係も大変になるな)とユズキは不安になっていた。

「第4部隊の隊長には、加瀬川 亮に任命する」

すると周りの人間は驚いた様子でざわめきだした。

「まさか噂通りだったとは…」「これなら関東を…」

辺りのざわめきを鎮めるように坂本は再び、窓を割る勢いの声量で喝を入れる。

「9月21日!新たな部隊を加え我々は、関東全土に集まっている月喰共を殲滅する!

 我々は必ず旧東京都を取り戻し、再び日本首都の復興を目指す!」

その後も数十分坂本は話を続け、会議は終了した。


「最後に、第4部隊の者は帰らずに亮の所へ集合してくれ」

他の部隊が帰っていくなか、第4部隊の隊員は亮の前に二列で並ぶ。

「あー、礼儀正しくしなくていいから…まあ俺が隊長の加瀬川亮でーす、よろしく」

ユズキ以外の隊員は大きな声で「よろしくお願いします!」と挨拶した。

「この部隊も他のところと同じように2つの班に分けるから、1班の指揮は俺、2班の指揮は副隊長にまかせるわ」

「副隊長は誰なんすか」

ユズキはいつもの口調で話してしまったため他の隊員からは白い目で見られた。

「副隊長は以前の班でもやっていた式美にやってもらう」

「了解です、しかし隊長は2つの部隊の総指揮を行うのでは?」

落ち着いた口調で式美は質問した。

「人数調整の関係でな、隊長と副隊長それぞれで指揮を執ることになった…あーあと、明日からミーティングとかするからここ出た廊下の突き当りの空き部屋でやりまーす、んじゃ解散!」


同日───19:30

「ここのラーメン、うまいんだよ」

亮がユズキを連れて、ラーメン屋に入る

「お、亮さん帰ってきてたのかい!」

強面の店主が笑顔で出迎える。

「あ先週な、塩ラーメン2つ頼むわ」

「はいよ」

2人は厨房から少し遠いカウンターの席に座り、ラーメンが完成するのを待った。


「会議の時に思ったんですけど、亮さんってすごい人なんですか?」

「んー、俺は少しみんなより強いだけだ」

「先週帰国したってことは海外の任務を任せられていたんですか?」

「…前にコティの肉体は各国がそれぞれ持っているって聞いたよな? 各国っていうのは日本、アメリカ、中国、ロシア、ドイツ、イタリアの6か国だ」

亮は水を一回口に含んでからまた話し始める。


「6か国は自分のところから特に優秀な兵士を集めて、対月喰の最強部隊を作ろうとした…名前は【ハーティ】…俺はそこに所属している」

「そんなすごいひとだったんですか!? なんで第4部隊の隊長に…」

「まぁ大きな任務の後だからな関東奪還作戦を行えるぐらいの時間はある」

「大きな任務…?」

「俺たちハーティは先月、ロシアから月喰を完全に殲滅した」

「そんなことが可能なんですか!?」

「ああ、元々ロシアが保管していたのは左足だからな気候の関係もあってそんなに月喰はいなかった」

「だとしてもすごいことですよ! これなら地球上から月喰を…」

「まあ世界も一歩ずつ平和に近づいてきてるってことだ」

ユズキは香ばしいチャーシューのにおいとスープのにおいに釣られて厨房を見ると、店主がラーメンを持ってこようとしている時だった。

「お、やっとできたか」

「はい、塩ラーメン2つね」

「ありがとうございます」

ユズキの目の前に現れた塩ラーメンは光が油で反射して黄金色に輝いていた。


同日───20:15

「美味しかったよ」

「亮さん次はいつ来てくれんだい?」

「ん-次の任務が終わったらだな」

「そうか、楽しみにしてるよ」

「それじゃご馳走様」

「ご馳走さまでした!」

「坊主もまた来てくれよ!」


「ありがとうございました、美味しかったです」

「おう、次はお前が初任給で奢れよ」

「そんな親孝行みたいな…」

「どうせお前は親孝行できねぇ人間だろ? それなら命の恩人の俺にしろ」

「わかりましたよ…」

ユズキは昔のhip-hopが流れる車に乗って帰路に向かった。


9月14日 13:00───第4部隊ミーティング室

「最後に部隊メンバーを言うわ、1班俺、八百波、高橋、久保田、佐々木、木本、森、西村、塚本、近藤

 2班は勅使河原、春夏冬、ユズキ、岡田、田辺、佐久間、田口、森下、上村、川崎」

ユズキは亮と離れてしまったが、チームメイトとも少しずつ打ち解けてきたためそれほど不安はなかった。

「それじゃ、これでミーティングを終わるわトレーニングは各班で行うように…解散していいぞ」


13:20 ───トレーニング室

ここには各隊の隊員も集まっており少し混雑していた。

ユズキ達2班はトレーニング室に入るための受付の順番を待っていた。

「ここも大きくすればいいのにね」

ユズキはチームメイトの春夏冬 鷹史(あきなし たかふみ)に急に話しかけられたので驚いたが、会話を続けるため言葉をひねり出す。

「ほんとにね、春夏冬くんはどこ出身なの?」

春夏冬 鷹史(あきなし たかふみ)───茶髪のセミロングヘアーでおっとりとした顔をした男だ。

「鷹史でいいよ、俺は宮城から来たんだ」

「宮城…結構()()()()()()から来たんだね…」

「ああ…実は僕、幼いころに高橋総隊長に保護されてここに来たんだ」


()()()()()()」というのも、東北や北海道、九州沖縄の地域は関東以上に月喰の進行も激しく軍事兵器や月喰によって人が生活できないほどに荒れていた。


「ユズキはどこから来たの?」

「ああ…俺も幼いころに保護されたらしいんだけどさ、苗字も親の顔もわからないんだ」

「最近じゃよくある話だよね、おれはギリギリ親の顔は覚えてるからさ保護を受けた子供の中でも幸せなほうだよ」

「いつかは宮城にも帰れるといいね…」

「ああ、そのために俺は隊員になったんだ…ユズキは?」

「えっ? おれ? おれは…」

「(そういえばなんでなったんだっけ…)」ユズキが急に黙ってしまったので、鷹史は心配した。

「ユズキ…? どうかした?」

「あっいや…」

「答えづらいなら無理に答えなくていいよ、ほらもう順番だ」

ユズキの心には雨雲のようなグレーなモヤモヤができていた。


9月16日 13:00───第4部隊ミーティング室

「今回の関東奪還作戦は4つの隊が地域を分担して行う、第1部隊は千葉と茨城、第2部隊は栃木と群馬、第3部隊は埼玉と山梨、俺らは東京だ」

「よりにもよって結成されて間もない僕らが東京ですか…」

式美はため息をつきながら言った。

「ああ残念ながらな、だが月喰は東京に集まっているからな、東京以外の場所は1日で終わると思うがな」

「各部隊の掩護が来ない1日だけ耐えればいいと」

「そういうことだな、被害は極限まで減らしたいから月喰いの深追いは絶対にするなよ、あとはできる限り遠距離でやり合え」

「最後にだが…作戦まで時間が無くなってきている覚悟しとけよ、必ず死傷者は出る」

最後の一言で全員に緊張が走った。

作戦決行日まで後5日───各部隊は最終調整に入り始めた。

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