模擬戦、あるいは試合。
「模擬戦をするにあたってなにか武器を使うようならこの部屋にあるものを使ってくれ。」
ヴィジョンが連れて行かれたのは装備庫だった。
さまざまな装備があり、中にはヴィジョンが見たことも聞いたこともないようなもののあったが、ヴィジョンはラルグとの修練でよく使っていたということもあり木で作られた訓練用の両手剣を選んだ。
「これにさせていただきます。」
「そうか、ではここの通路をまっすぐ行ってくれ。その先にある円形闘技場で模擬戦を行う。」
「わかりました。」
ヴィジョンは自分の足音だけが響く通路を進みながら考え事をしていた。
「能力のことを『切断』って書いちゃったからその範囲を超えるような威力で能力を使えないんだよなぁ。」
意図はしていなかったが、ヴィジョンの行動は自分自身に枷をかけるものになってしまっていた。
「まあ使い方と出力を調整すればなんとかなるかな。いざとなったら降伏すればいいだろう。」
ちょうどそこまで考えたところで、闘技場の入り口に着いた。
中に入り、周囲を見回す。
中心付近に試験官らしき筋骨隆々の老人。
端の方に採点官らしき数人の男女。
そして
(女の子?)
観客席には明らかに異質な金髪碧眼の美少女がいた。
(まあ見られるだけなら別にいいし、今はそんなことを気にしてる場合じゃないな。)
ヴィジョンは中心へと進む。
老人が手を差し出しながら言う。
「君が次の受験者かな?」
ヴィジョンは手を取らずに反応する。
「はい。」
「ほう?」
老人はヴィジョンの腰の木剣見やりながら好戦的な笑みを浮かべてそう言う。
「どうやら多少は心得があるようだな。」
そして採点官の方を見ながら
「あいつらが合図としてベルを鳴らす。3回目がなったら試合開始だ。」
「わかりました。」
そして、1回目のベルが鳴らされた。