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ある少年が見る世界
少年は、常に一人だった。何をする時も一人だった。出歩けば当然人々と顔を合わせるのに、誰一人として少年のことを見ていなかった。少年が物心ついたときからずっとそうだった。今思えば、それは少年を「英雄」へといざなう「能力」のせいだったのだろう。
この世界では、一部の人々は特殊な「能力」を持っている。なんの役にも立たないような能力から、様々なことに活用できる優れた能力まで様々であり、特に優れたものは「異能」とまで呼ばれていた。そして、その少年の能力は「断絶」だった。
少年がそのことに気づくのは十二歳の時だった。ある日、突如として人々に視線を向けられるようになったのだ。しかし、その視線は突如現れた余所者に対して見せる警戒のものだった。
少年はその視線に耐えられなかった。その視線を向けられることに、耐えられなかった。そして少年はまた、一人の生活に戻った。
その、はずだった。
「どうしたんだ少年!そんな暗い顔をして。君のような少年はもっと笑うべきだぜ?」
それは忘れもしない十二歳の時の出来事。
少年はそのとき、確かに一人ではなかった。