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アルオトコガミタセカイ
そこは、なにもないセカイだった。
ただ一つの生物の影もなく。
それどころか空と大地の区切りすらわからない。
そんな、セカイだった。
そんな世界にただ一人佇む男がいた。
その世界には、彼しかいなかった。
彼は、考えた。
なぜ、このようなセカイになってしまったのかを。
自分は「英雄」としての役割を果たしたはずだ。
絶えない争いを終わらせ。
世界に平和をもたらしたはずなのに。
そこに残るのはなにもないセカイ。
彼は「英雄」になれたのだろうか。
この世に生を受けたときから英雄の力を持ち。
彼はその力を奮ってきた。
彼は「英雄」だったのだろうか。
それはもう、誰にもわからない。
そんなセカイで、彼は思う。
もしも、もしも次があるなら。
もしも、もしもやり直すことができるのなら。
その時は。
その時こそは。
「英雄」になりたい。
そうして彼は最後に残った自分のことを「断絶」した。