第7話
久しぶりの投稿です。
「待っテェーーー!」
全裸の男が変則的な走り方で発狂しながら追いかけてくる。
この追いかけっこはかれこれ10分ほど続いている。
右手の指の出血は止まったのだが、足の裏が一歩また一歩と地面を踏みつけるたびに火傷したような痛みがやってくる。
「待っテェーーーーーー!」
あれ?さっきより声が大きく聞こえる。
間違いない。距離を詰められた。
僕は後ろをチラッと見た。
さっきまで結構離れていたはずなのだが、やつは2メートルほどまで迫っていた。
もし、捕まったら喰われるだろう。
正直、その絶望した未来しか見えていない。この世界はラノベでよくある死んでも蘇るということはありえない。
某人気ラノベの「死に◯り」の能力などまずない。
捕まったら死の運命しか待っていない。
僕はありったけの力を振り絞り、走るペースを上げた。
ここを真っ直ぐ抜けた先には我が家が待っている。
そこに戻れば…
「次はお兄ちゃんの番だよ。」
思い出した。なぜこんな短い間にも一番忘れてはならない大事な事を忘れていたのだろう。
この圧倒的窮地はそんな出来事さえも忘れさせてしまうのか。
だめだ。だめだと分かっている。
だがこの状況を抜け出すには誰もが一生で経験しないような修羅場が起こった我が家に戻るしかない。
今はつべこべ言っている暇などない。別の手段を考えている間に捕まってしまうだろう。 捕まれば…
ムシャッ。ブシャーッ。ガリガリッ。ボキッ。(僕の脳内)
おっと、ご想像の通りだ。
「ウォーー!」
僕は躊躇せず今朝晴れて事故物件の仲間入りを果たした我が家へと一直線。
全力という名の全力(=全力二乗)を振り絞った。
今の走り方はどうせ◯人の奇◯種のようになっているだろう。
そう思ったって?似てるって良く言われるんだよ。
家までもう少しだ。僕と男?(ごめんなさい、もう人とはおもってないです。)の距離は努力の成果もありさっきの倍以上は離れた。
あと、もう少しだ。この出来事≦この後に起きるであろう出来事を前にしているにも関わらず、少しばかりの安堵感に包まれてしまった。失敬失敬。
「キェェェェーーーー!」
キモ声がどんどん遠ざかっていく。ふふっ。私の大勝利だな…!ひれ伏すがいいッ!と心の中で厨二病風にセリフを決めた時だった。
あっ…
ドテッザザザー…
…………
転んだった。テヘッ。
「調子乗ったセリフ言っといてこれはダセーよ…」
うん。流石に笑えな。
死んだ。これで人生本当に終わりだ。
「キェェェェーー!」
足音は丁度後ろで止まり、そのキモ声はちょっと音程が高くなったように感じた。これは喜んでる証拠だな。どうせ食べるなら美味しく味わってくれよ。
ゆっくりと目を閉じた。後悔などないというのがテンプレートだが、正直後悔しかない。
ブシャーーーーーッボトッ
横たわった僕の背中に何か温かくて重たい物が落ちてきた。
「暖かい…」
服を通して温かい液体が肌に触れた。
「大丈夫?お・に・い・ちゃ・ん❤️」
悪寒がしてきた。その聞き覚えのある聞き慣れた声を聞いて。
その声の主は僕の怪我の状態など御構い無しに僕を強引に仰向けにした。
「桜…?」
「どこ行ってたの?心配してたんだよ?」
呆気にとられた僕は身動きすら出来ない。脳がしようとしない。
「お兄ちゃん…」
妹は目が虚ろなまま顔をゆっくりと近づけてくる。キャミソールの間からは中学生とは思えない富んだ胸が丸見えになっていた。
「目を閉じて…」
その言葉に従い、ゆっくりと目を閉じた。徐々に徐々にと近づく吐息。妹の心音が体に伝わってくる。
「大好きだよ。」
ズボッ。
尻の穴に何かが入ってきたとともに身体中に痛みが走り、意識が吹き飛んだ。逝った。(イッた)
続く?