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Murderer  作者: 樋後 雅
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プロローグ 最果ての先に

戦闘もの書いてみました。読んでみてください。

辺り一面には子供に無惨にこぼされた食物のように原形をとどめていない無数の死体が浜辺に打ち上げられた魚の如く散々としている。そして、頭上には烏を思わせる暗黒色の空が広がり、太陽が見える見えない以前に日の光の残片すら覗かない。しかし、それらに代わって時折、暗黒の雲間を蒼い一筋の光が駆け抜ける。その光が今にも地面に突き刺さりそうだ。直後、俺の思考を読んでいたかのように閃光が地に舞い降りた。そして、一瞬にして天に帰った。

ー俺を天に、みんなのところに連れて行ってくれないかー

ふいに、心の奥に眠っていた弱音がこぼれた。それも無理はないと自分に語りかける。

この国は17の区から成っていた。しかし、今や17の区のうち16の区が天界より出でし者や魔界より這い上がりし者によって制圧されている。残る領地は戦場と化しているこの地【トリデナ】のみ。そう、もう後がないのだ。そんな疑心暗鬼でいる俺に向かって横にいる少女が鈴の音のような声をあげた。

「兄ちゃん、来るよ。」

「ああ。」

直後、地が恐怖で怯えた幼子のように震え始めた。

ダン…ダン…

遠くから響き渡る足音は一定のリズムを刻みながら徐々にこちらへ向かってくる。

ー早まる心臓の鼓動ー

不定期的に押し寄せる恐怖の波。

敗北のビジョンから生まれる不安感。

自分の弱さ故に仲間が死んでいったという罪悪感から生まれる虚無感。

「怖い。逃げたい。闘いたくない。」

心の内に潜むもう一人の自分が悲鳴をあげる。そして、胸に這い寄る。

ー死んで楽になりたいんだろ?ー

「そう…かもな。」

ーお前はどうしたいんだ?ー

「いっそのこと死んで楽になりたいさ。」

俺はどんどん底無しの心の闇に飲み込まれていく。

ーお前は弱い。どうせ負ける。ー

「そう、負けるんだ。俺のせいで。」

ーお前は妹にとって枷同然だ。ー

「そうなのかな?」

ーせいぜい、最後まで足掻くといい。ー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「…ちゃん…兄ちゃん!」

俺の意識は漆黒の闇で覆われた世界から鈴の音によって引き戻された。

「しっかりして!集中しないと死んじゃうよ?」

いつも笑っている妹の顔は真剣そのものの顔になっていた。

「ごめん、悪かった。俺がしっかりしないといけないのに。」

「気にしないで行こう。」

「本当にごめ…」

パシンッ!

俺の言葉は途中で途切れてしまった。精神的な物で途切れたのではない。物理的な物によって強制的にシャットアウトされた。

耳栓をつけられたかのように右耳だけ聴力が低下し、頬には電気が流れたかのようにビリビリした鋭い痛みが走った。

「兄ちゃん、これ以上謝らないで…まだ、謝罪の言葉を並べるって言うならここでお前を切る。」

妹は俺を大蛇のような鋭い眼光で睨んだ。

俺の背を殺気と寒気の両方が走り抜けて行った。

「兄ちゃんは自分の事を弱いと思っていない?兄ちゃんは弱くない。強いんだよ。だから、惜しみなく闘って!もしもの事があったら、兄ちゃんは私が守るから。」

さっきまでの表情とは一転して満面な笑みを浮かべ、俺を雪解け水のように澄み切った眼差しで見つめている。

俺の心は漆黒の闇で覆われた世界から引き戻され、心の奥に引っかかっていた恐怖や不安などの雑念が吹き飛び、暗黒色の空に隠れ、今は見えない太陽のように心が晴れた。

「よしっ!いくぞ!」

俺たちは背にかかっている2本の剣を両手に持ち、臨戦態勢に入る。すると、灰色に覆われた世界に一つの大きな影が見え始めた。

……バリバリバリバリ。

さっきまでの工事音のように大きかった足音は止まり、代わりに紙を裂いたような電撃音に変わった。身体と思われる部位を暁色の電撃が覆い始める。

「桜!おそらく、あの電撃を発射してくるだろう。だから、左右から回り込んで電撃を一方の方に分散して片方が背後を狙うぞ!」

「了解!」

「死ぬなよ。」

「兄ちゃんこそ。」

俺は両足に地が砕けるほどの力をかけて、一気に蹴り出した。

俺は左から、桜は右側から敵の後ろへ回り込む。少しずつ近づくにつれて、砦のように大きい身体。刃物のように鋭利な牙が現になっていく。俺はその怪物と大きく距離を取りながら前進していく。俺の予想通り、電撃が放出された。標的は桜。ジグザグしながら迫る。そして、桜に襲いかかる。桜は真っ直ぐ向かってこない電撃を野原を縦横無尽に駆け回る蝶のように何度もかわしていく。俺はその隙を見て怪物の背後に回り込む。怪物は当てようとしても避けられる事が気にくわないのか賭け事に依存し続けるギャンブラーの如く電撃を何度も放ち続けている。俺は桜のお陰で見事に背後に回り込んだ。

「ここだ!」

俺は両足に全身全霊の力を込め、一気に踏み込む。そして、体勢を地面ギリギリまで低くして走るスピードを限界まで上げた。

ーいける!ー

シャキーン!

俺の手に握られている双剣が見事に怪物のアキレス腱付近を劈き、周りには双剣が奏でるハーモニーが響き渡った。そして、紫水晶色の鮮血が噴水のように噴きあげる。そして、立つ力を失った怪物は膝から地面へと倒れ込んだ。

「桜!今がチャンスだ!」

約50メートルもあろうかという距離を桜は電光石火の如く迫った。

シュイーーンーー!

桜が両手に持つ剣が音を上げ、光り輝く。その光龍のように光り輝く剣を振り上げ、怪物を何度も斬りつける。

シャキン!バサバサ!シュイーーーン!

「死ねーー!」

最後に振り上げ放った一撃が、怪物の急所を見事に切り裂いた。








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