表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/41

番組放送後 プロであるから

ラッコの仕上げてきてくれた新しい展開のシナリオが上がり、キリマンはそれを元に会議を終えた。


着々と準備が進み、ブルーが死ぬその日が近づいてきている。


進路変更に対して予算は掛かる。だがそれによりスポンサーの心証が良くなれば、予算の追加が見込めるのだ。


だがこの予定変更はイバラの道だとキリマンを始めスタッフの誰もがわかっている。


おそらくブルーの死後、視聴率は落ちるだろう、そうすれば予算は今よりも減る。


そうなれば火の車。行く先は打ち切りである。


もちろんそうならない可能性はある。視聴率は上がり、おもちゃも売れるかもしれない。


けれどもそうはならないだろうというのがスタッフの気持ちだった。


問題はブルーの存在ではない。ブルーの戦闘能力だ。


ブルーは戦闘の要、ファイバーズの主力である。


戦いの根底には彼の存在があり、それ故に他のメンバーは戦えている。


地盤にして、根底の存在を引き抜けばどうなるかはわからない。


戦いが成り立つのか? 成り立たないのか? それさえも不明。


もしも戦いが成り立たなかったら?


そのときは番組が続くかどうかも怪しい。なにせ、再度のテコ入れの予算を引っ張って来れるかも怪しいからだ。


「賭けに出るしかない」


キリマンの下した判断は文字通りの賭けだった。


ブルーが死ぬ事は盛り上がりに直結する。


視聴率も瞬間には上がるに違いない。


おもちゃが売れるかどうかはわからないが、スポンサーにアピールは出来るだろう。


そのチャンスを逃さないように予算を放り込むのだ。


ブルーの死を大きく演出し、話題性を上げる。


そうしてスポンサーへ追加予算の話を持って行く。


瞬間でも良いから話題が大きくなれば、追加予算を出してくれる可能性も上がる。


そうキリマンはこれまでのテレビ生活の中で培った経験を元に判断していた。


もし追加予算を持って来れなければ、番組はさらに手痛いダメージを被る事になる。


だが、そうしなければ低空飛行から抜け出す事は出来ない。


どちらにしても打ち切りが見えているならば起死回生を狙うのは悪くない判断であるとキリマンは考えていた。


「これだけ予算かけて効果が出なかったら悲惨ですね」


とんでもないことを言う部下のケツを先ほどの会議では叩きあげてきた。


何にしても準備は進んでいる。ブルーは……一人、あるいは二人で戦う事になるだろう。


なにせ、異世界TVはリアル……段取りはするが、ブルーが結局どう動くのかはわからないのだ。


キリマンとて、いやスタッフの誰もがどう転ぶかわからない。それが異世界TVの恐ろしい所だ。


しかし、何にしてもファイバーズにとってはブルーの死は確実な転機となるだろう。


そうした確信めいた不安がスタッフ達全員の胸の内に立ちこめているのをキリマンも感じていた。


キリマン自身も不安に思っている。


ああ、こんな事ならば今までのように番組を作っていたかった。


そうした思いがハマンディ局長への不信感となっている。


その燻りをキリマンは立場上、消さなくてはならない。


彼が仕事をしているのはもはや……夢や希望の為ではない。明日の生活のためだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ