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レッドこと紅くんの孤立奮闘2

「全く冗談じゃありませんわ」


プリプリと怒っている金里さんに対して、僕は困りながら覆面顔の二人をトイレに縛り付ける。


ちなみに縛り付けるのに使っているのは、男の人たちが着ていたシャツだ。


二人ともとりあえず息はしているから、死ぬ事は無いので大丈夫だとは思う。


襲われて、身を守ったのだから正当防衛となるのだろうか? わからない、不安だがしょうがない。


とにもかくにも何とかしなくてはならない。


男達が持っていた武器は両方同じマシンガンだった。


サブで持っていたらしい拳銃のほうはそれぞれデザインが違う、別の銃だろう。


拳銃で持って行くのは最初に拾った方にしとこうかな。


サブマシンガンはMP5……だと思う。


さきっちょとかは違うけど、胴体が同じデザインだから多分そうだ。これなら使った事があるとホッとする。


『紅君が持つサブマシンガンは元々拳銃の弾を撃つための物なんだ。将来的には出来ればアサルトの方が良いけど……まずは練習だ!』


青島さんから勧められるがままに武器を使っている僕には銃の事はてんでよくわからない。


MP5も最初の頃しか使ってなかった。


慣れたところで変な形のP90っていうのに変わった。そっちの方が威力のある弾を使えるとかなんとか。


今ではそっちの方が慣れたけど、使い方を忘れるほどじゃない。


それはさておき、男達の懐から予備の弾が入ったマガジンを抜き出す。


元々銃に付いていたのを合わせると、これでマガジンは六つになった。


とりあえず、ポケットに入れておこうか。


ジャケットのポケットにマガジンを入れて、胸のポケットにも入れる。結構重い。


『銃を撃ち始めて二の腕がカッチカチなんだけど、紅さんはどーですか?』


黄野さんのそんな言葉を思い出す。


あんまり運動をしてこなかった僕からすると最近の自分は健康的すぎる。腹筋も割れちゃったし……。


「あの、あなた。クラスメイトの人ですわよね?」


金里さんがそう話しかけてきて、装備を確認していた僕はきょとんとする。


その反応に金里さんはあわてて手を前に振って口を開く。


「わ、わかってないってことは無いんですのよ? 確認です。皆さん今日は私服ですから、間違っていたらよくないでしょう?」


「ああ、いや。わからなくてもしょうがないよ。殆ど話した事もないし……」


僕はそう言って、気にしてないと首を振ってみせた。


金里さんは超が付くお嬢様でクラスの中心だ。それに対して僕はクラスの脇役その三くらいかな?


地味なグループに所属している。最近はそうでもないけど趣味もインドアだしね。


「わ、わからないとは言ってませんわ」


「ああ、ごめん」


「あ、謝ってもらわなくても大丈夫です。それより、ありがとうございました。助かりましたわ」


「へっ?」


いまいちぴんと来てない僕の様子に、金里さんが言葉を続けてくれる。


「その、襲われたところを助けてくださった事です」


「あ、ああっ。とっさだったから、金里さんが無事で良かったよ」


僕はごまかすように手をひらひらさせる。


戦ってお礼を言われるという事に全く慣れていないので、びっくりしてしまった。悪い気はしないけど……。


「あ、あのそれでですわね。お願いしたい事がありますの」


「……ええっと、ご希望に添えるかどうかはわからないけど」


「簡単ですわ。私がその、トイレの床に倒されたのはご内密にお願いしたいんですの」


……なんだかズレた意見だった。


まあ、トイレの床に倒れて居たなんていうのは、あんまり人に知られたくはないだろう。


それでもどちらかと言えば、僕だったら襲われた事のほうを口止めしたくなるような気もするけど。


「話すつもりないよ。あれはその……不慮の事故だから」


僕がそう言うと、金里さんは安心した表情を浮かべて胸を撫で下ろしていた。


「とりあえず、警察に電話をして。トイレに隠れていて」


「……なんでですの?」


僕の言葉に首を傾げる金里さん。


僕は肩をすくめて、会場の方を指差す。


「多分、会場の方にもあの人達みたいなのが居るから……、隠れていた方が良いよ?」


そう言って指差した先には縛られてぐったりしている覆面を付けた男達が居た。


「な、なんでそんな事わかるんですの?」


「だって、銃声がしたから……会場の方で。バババババって、音聞かなかった?」


「そういえば、鳴っていた気もしますわね。てっきりクラッカーかなにかだと」


そう呟いた金里さんはハッとした表情浮かべて言った。


「でもそうすると会場にいる人全員が危ないですわ!」


今更ながらに気がついた事で駆け出そうとする金里さんを僕は慌てて肩を掴んで止める。


「まってまって、なにするの?」


「助けるに決まってますわ。私のバースデーパーティーですもの!」


「……どうやって?」


僕の問いかけに金里さんはたじろぎ、そして言った。


「気合いですわ」


ノープランってことじゃないか。


どうにもトイレに倒れていた事を秘密にしてほしいなんて、間の抜けた事を言うと思ったら、事態を把握していなかっただけのようだ。


「……警察とかに任せた方が良いと思う。銃撃戦になったらケガ人がたくさん出る」


僕の言葉に、金里さんはしばらく考えて頷いた。


「そうですわね。貴方の考えに従いますわ。じゃあ、私はどうしたら良いんですの?」


「とりあえず、警察に電話をして。それから男子トイレの方に隠れていて」


「……男子トイレに隠れるんですの?」


なんだか、嫌そうな様子だ。だけど僕も困る。


「あの人達は女子トイレに居るけど。気にしないなら」


そう言って僕が縛られてぐったりしている男二人を指差すと、金里さんは困るとばかりに首を横に振る。


さらさらとした髪の毛が左右に揺れていた。


「しかたありませんわね。男子トイレに入った事も内緒にしてくださいね」


案外、小学生みたいなことを言うんだなと僕はちょっと笑った。


学校に居るときの金里さんは挨拶のときに、ごきげんようなんて言うほどのお嬢様だ。


上品で、いつでも背筋がぴしっと伸びている……ろくに喋った事も無い金里さんの印象はそんな感じだったから、妙に親近感が湧いてくる。


「貴方はどうするんですの?」


その問いかけに、僕は銃で出口を指して答えた。


「ちょっと外の様子を見てくる。逃げ道がありそうなら、君だけでもとりあえず逃がさないと」


「あなた、銃が撃てますの?」


その問いかけに、僕はまずかったかなと反省する。でも今更なので、ちょっと考えてこう言った。


「……うーん、ないしょだよ?」


僕がそう言うと、金里さんは目を丸くする。


「貴方、変な人ですわ」


僕は苦笑いしか返せない。


まあ、僕には命の危険は無いのだし、そう説明できない歯痒さはあった。


ファイバーズの事は秘密だから。


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