レッドこと紅くんの孤立奮闘1
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ある日、謎の光線が地球に降り注いだ。
その光線により、超人となった五人の戦士。
彼らこそ、選ばれし勇者。人は彼らをファイバーズと呼ぶ!!
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僕は思わず呻いていた。
今日はクラスメイトの金里さんの誕生日。超お金持ちの彼女がクラスメイト全員をお誕生日会に招待してくれた。
会場は高級ホテルとして名高いオーシャンデリアホテルの最上階ホール。
誕生日会と言っても、こじんまりとしたホームパーティーの域は超えていて、正直高校生の僕らじゃ気後れしてしまうくらい。でもお金持ちの人達からすると一般人の僕らは新鮮みたいで会場は盛り上がっていた。
僕も楽しかったよ、料理はおいしいし、オレンジジュースも新鮮だったし……。
事件が起こったのはパーティーが始まって一時間位したときの話。
僕はちょっと会場から席を外してトイレに行ってたんだ。
トイレは会場の外にあって、会場を出た廊下の隅に設置されていた。
高級ホテルだけあって、トイレもきれいだった。
並んでいる男子トイレもピカピカに磨かれてて僕の顔が反射してたくらい。
オレンジジュースをがばがば飲んでたのが、良くなかったのかも……。
そんな事を思って用を済ませた後だった。
そんなお気楽な事を言ってられなくなったのは、会場から聞き覚えのある音がしたから。
バババババババババババ。
続けざまに連続して聞こえる破裂音。
手を洗っていた僕の耳がおかしくなったかと最初は思った。
洗面台から顔を上げるとトイレの大きな鏡がある。
そこには僕に襲いかかろうとする覆面姿の男の人が映っていた。
手に持った銃を振りかぶっていて、僕はあわててそれを避ける。
そこから一連の流れでその男を投げ飛ばせたのは単に運がよかっただけだ。
多分、一昨日の訓練で緑川くんと格闘技の訓練していたおかげだと思う。
でも僕の投げ方は下手だった。覆面の人を頭から落としてしまう。
ゴンともグキッとも言えない、すごく痛そうな音がした。
な、なんだかぴくぴくしてる。気絶してるみたい。
『紅さん。実際投げるときは気をつけてくださいね。下がコンクリートだと大事になるときもありますから』
緑川くんの助言を思い出す。下を見ればトイレの床はタイル。
つま先で叩いてみると、とにかく固かった。
だ、だめじゃないかな!?
焦る僕の耳に次は悲鳴が聞こえてきた。
声は隣の女子トイレからで、悲鳴はすぐに聞こえなくなった。
判断は一瞬。倒れている男の人の腰には拳銃がぶら下げてあった。
ホルスターからそれを引き抜き、マガジンを確認する。
うわ、みっちり入ってる。
青島さんに習った拳銃の使い方を思い出す。
『拳銃の作りは基本的にだいたい一緒だよ。マガジンを入れて、頭を引っ張る。そうすると最初の弾が装填されるからね。後は安全装置を外して、バンバンバン』
女子トイレに入る前に、僕は教えに従って拳銃の頭を手前に引っ張り、弾を装填する。
そうして女子トイレに入ると覆面を付けた男の人が女性に襲いかかっているところだった。
のしかかるようにしている男の頭を僕は拳銃のグリップでぶん殴った。
襲いかかっていた男が崩れ落ちる。あ、頭はまずかったかな?
『銃は鉄のかたまりだからねぇ、殴ると痛いんだなぁ、これが。でも殴るときはグリップのお尻でね。それと絶対に銃口のほうを持ってハンマーみたいに叩かないこと。怪人相手には使わないと思うけど』
青島さん、人間相手のことあんまり教えてくれないもんなぁ。
糸が切れた操り人形みたいになっている男の下で、悲鳴を上げる女性が居た。
綺麗な黒髪の女の子。
それは今日の主役の金里さんだった。




