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番組放送後 案その1 テロリスト大作戦!

「うーん……これは有りなのか?」


差し出した企画書に、あまり良い反応がなく、ラッコは口元を不満げにひん曲げた。


「なにがですか?」


「日常にドンパチを入れるのがだ。怪人を使わなければいいだろうというのは危ない考え方じゃないか? そう言うのを避ける為に、地球の先進国でも安全度の高い”日本”を選んだ訳だろう?」


「まあ、確かにそうです。とはいえ、事件は発生しうるじゃないですか。これはその一例ですよ」


「ブルーはこれで、他のメンバーの警護が必要だと考えるんじゃないか?」


「いえ、これは突発的な事件です。ブルーもそこまで警戒しないでしょう」


「そうか? それならいいんだが……」


自信満々のラッコの言葉にキリマンは引き下がった。とにかく現状維持ではどうにもならないもの確かだからだ。


「対象は誰を選ぶつもりだ? 全員は無理だろう?」


「レッドのつもりです。一人のほうがいいですからね……彼のクラスメイトにお金持ちの子が居るのは覚えていますか?」


「いたような……いなかったような」


「ほら、丁寧な言葉で喋る、キャラが立った子が居たじゃないですか。黒い髪の長い」


「ああ、いたな。そう言えばいた」


編集中の動画で見たことを思い出したキリマンの様子にラッコは言葉を続ける。


「その子が誕生日パーティーをするようなんです。それもクラスメイト全員を呼ぶ。正直これはチャンスだと僕は思いますね!」


「この犯罪者……テロリストの当ては付いているのか? 探すの大変そうだが」


「ええ、何かに使えるんじゃないかと集めさせていた情報で良い感じのが」


「安全なんだろうな? 5人のメンバーには替えが聞かないんだぞ?」


「大丈夫ですとも! 日本は鉄砲が手に入りにくいんです。敵の武器は片手で持てる、拳銃って奴にするんですよ。あれだったら、スーツは撃ち抜けません。キリマンさんも、ブルーが試していたのは見たでしょう?」


ブルーがこちらで回した防具や武器をさんざん試しているのは確かに見ていた。


変身スーツの耐久度をこれでもかと調べているのを見て、スタッフ全員で人員選びを間違えたのではないか? など噂したのがつい昨日の事のようだ。


誰もやった事が無いヒーロー番組。スタッフ側も手探りだった。


戦いも手探りの中、ファイバーズを引っ張っていたブルーの活躍で、最初期の番組は成り立っていたというのも大げさではない。


右も左も分からない戦場で、どのように振る舞うべきか。


四人の子供達に示したブルーの背中。


それを見て奮起したのは四人だけではないのだ。異世界の壁の向こう、番組スタッフ達も勇気づけられていた。


最近ではほぼほぼ下働きだったレッド、イエロー、グリーン、ピンクそれぞれの特徴も出て戦場での活躍も増えてきた。


ラッコはこの番組も思えば遠くに来たものだと思った。


道は半ばであるがそれこそ、番組最初期にこんな企画は出そうにも出せなかった。


だからこれは子供達の成長を感じての企画でもあるからだ。


「レッドは安全ですし、戦うにしろ、戦わないにしろ、どう転んでも面白い。それでですね、これを解決したら、上司の方から。もしもの時の為に武器を携帯させたらどうか? っていう訳ですよ」


「なるほど、見た目がおもちゃのファイバーソードとブラスターを逆手に取るか」


キリマンは感心したように頷く。


「確かに尺としては、日常パートの方が長い時もあるからな。そのときに、武器が見えれば良いわけだ」


「そうですそうです! 後は日常で事件を起こして行けばいい。これはむしろ、伏線といいますか、呼び水になる回になるわけです!」


なるほど、聞けば聞くほど妙案だとキリマンは唸る。


自分がこいつをメインに据えたのはまちがいではなかったとさえ思った。


「よし、ではそれでいこう」


キリマンは書類に許可のはんこを押しかけて止まった。


「どうしたんです?」


「くれぐれも干渉しすぎるなよ? 素の反応を引き出す為に日常への手出しはほとんどしてこなかったんだからな」


「わかってますよ。襲う奴等の手配をしたら、後は様子を見ます。大丈夫です、最低限でなんとかできますから」


その言葉にキリマンは止めていた、はんこをポンと書類に押し付けた。


これで内容は決定された。


「だが、くれぐれも派手にするなよ。番組にも枠ってのがあるからな」


書類を渡しながら一応注意しておく。


面白いから来週にも引き続かせましょう、なんて事は難しいのだ。


「わかってますよ。怪人作成のチームも別案で動いてて、余裕が無いみたいですし……上手い事やりますよ」


ラッコはそう言って、許可のはんこが付いた書類を持ってスキップをしながら部屋を出て行った。


廊下を歩きながら、彼は良い感じで話が成り立つようにはどうすべきかあれやこれやと考えていた。

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