01:つばさ02:廃墟とハンドアウト
ひとはつばさを得て変わる。
01
西暦でいえば3317年かな。君たちの時間からどうしようもなく離れた時間に僕はいる。だから君たちは僕を見れないよ。直接は。
僕は両親なんて憶えてないし、文字も読めない。兄弟なんていたかもわからない。でも家族は確かに居たのだろう。
つまり僕は何もよくわからないまま、この荒廃した大地に生きている。
そんな僕が唯一確かに両親につけてもらったはずの名前は、ベリード・エイルという。
02
「ここか」
今日は千年くらい前はそらを研究していたっていう施設の周辺の場所にいる。施設はすっかり荒廃してて、けれども確かにボロい本や壊れた機械が並んでいて、どことなくそれらしい感じだ。面白い絵の描かれた本があるから、それを持ち帰る。それが今日の仕事。
目立たないよう1人で来たから、仕事も一苦労だった。
周りには住宅街だったらしき土地が広がって、その中にはそれらの建物たちの中でも異彩を放つ巨大な家が一軒建っていた。
「でかいなぁ・・・」
割れた窓から中に入ってみると、埃が舞って、窓から差す太陽の光が埃を輝かせた。
埃っぽいのは慣れている。
家というか館って感じで、二階に行くと書斎の様な造りの部屋があった。もちろん本棚もあったから、それを調べよう。
本棚はごく普通。というか、絵なんて描いてないつまらないのしか無かった。
「もう帰るかぁ」
帰ろうとして、ボロボロの書斎机がふと目に入った。
そして、
その書斎机の上に、
数枚の、なにか描かれた紙が置かれていた。
僕はその紙を手にとって見てみた。
「読めない・・・」
そうだった。
僕は字が読めない。
けれどこの紙に描かれた縞模様のマークが、無性に僕に胸騒ぎを感じさせた。
「ねーさんの所にもっていこう」
ねーさんは字が読める。
ねーさんの所なら・・・
しかし、
腹減った。
本当に帰ろう。