2話
「ばば様」
「どうしたんだい?フー」
泣きながらフーは家に走るとフーの育ての親であるばば様と呼ばれる老婆に駆け寄った。
「ばば様、みんなが私のことを罵倒するわ!なぜ私には力が宿らなかったのかしら」
フーは泣きながら自らの胸のクリスタルを触る。
力を宿された者はその力に応じて胸のクリスタルの色が変わり、心臓の鼓動と共に点滅する。
しかし彼女のクリスタルは空であった。
「ばば様は神様に力を宿していただいたの?」
涙で濡れた長いまつ毛を瞬かせ、老婆を見上げる。
「私は神様からいただいた力を神様に返したのじゃ、ばばはもうすることがないからの」
老婆は若い頃足を痛め、それ以来歩くことが困難になったため狩人をやめてしまったのだった。
なのでフーが町へ働きに出ては口々に悪口を言われるのだ。
「でも悲観せんでいいと思うんじゃが」
「どうして?」
「残り物には福があると言うじゃろ?大丈夫、きっとフーはすごい力を手に入れる。ばばはそう思うておるよ」
「13年も耐えたわ!そろそろ力が宿ってもいい頃よ!」
頭を撫でようとした老婆の手を払い、フーは家を出た。
分かっている。分かっているのだ。自分を育ててくれた老婆に当たってもただの八つ当たりにしかならないのだ。むしろ老婆には感謝すべきなのに。
苛々した気持ちを落ち着けるため、フーは森の中の高台を目指した。