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空箱庭のディストピア  作者: 北山アツヤ
チャプター1:エピソード・フィリア
7/8

06:結実する謎

一日空いてしまい申し訳ないです。体調不良に見舞われまして……!そして明日明後日はどうやら家にいられないフラグが立ちそうで更新できないと思います……(謝ること多すぎて辛い)。

そんなこんなで次回明後日ですがよろしくお願いします!



 《知識的能力(テオリア)》。


 そのいささか詰屈な言葉は馴染みのあるものではない。


 しかしその単語でカイトは確信を得た。


 目の前の事象を考えてみれば《テオリア》でなければ説明できないし、そうでないと説明がつかない次元の話だ。


 そしてカイトの得た確信はそれとは別にある。


 何故なら《テオリア》が発現するのは()()人もどき(フォルス)》だけだからだ。


 この若さで、しかも通常通常発現がほぼあり得ない異能種の《テオリア》。


「――――君……《フォルス》、なんだね」


 カイトの問いにユリアは目を逸らす。


「……ごめんなさい」


「別に謝ることじゃない。俺は今の《フォルス》が迫害されているこの状況こそ問題だと思う。だから君を差別しないし、現に君はこうして奇跡を起こしてくれたじゃないか」


 そんなカイトの態度にユリアは少し驚いたように固まっていたが、カイトには聞こえないくらいの声でぶつぶつ呟いてから重々しく口を開く。


「私なら、この人を助けられる……かもしれない。でも()()()()かもしれない……今ならほんの少しかもしれないけど、お話はできる。だから、決めてほしいの――――」


ユリアは続けた。



「――――私の《テオリア》で助けるかどうか」



 ユリアはカイトの目は見ずに振り絞るような声でそう言い放った。


 カイトには解らないがユリアの《テオリア》にはそれなりのリスクがあるのだろう。


 仮にテオリアを使ったとして助かる保証はない。そして《テオリア》の力に頼らないのであれば、ほんの少しだけ最期に話すことができるという。


余命宣告された患者が手術して延命の賭けに出るが、手術せず余生を暮らすか、みたいなのと似たような問題だ。


 確実性を取るか、不確実性を取るか。


 しかしカイトの心はもう決まっていた。というかこの問題には元から確実性なんて言葉は存在しない。


 医者がそう宣言したから必ずそうなるとは限らないことからして前者は不確実なのだから。


「……やってくれ。もしダメでも君の《テオリア》に賭けようと思う」


 カイトは少し大げさに笑って見せた。そのくらいでないとユリアはきっと負い目を感じてしまう。


 ユリアはわずかに頷いた。そして呼吸を整えるようにふぅ……と長い息を吐く。


 ユリアは床に横たわる白木の上に手をかざし、目を閉じる。


 その瞬間、ユリアの白髪の髪が、ふわっと宙に浮かび、ユリアの全身に薄らと集積回路のような紋様が刻まれていく。そうして再び開かれた双眸はいつもの猩々緋色ではなく琥珀色に様を変えていた。


「…………」


 《テオリア》を発動させたユリアは発動させる前に増して機械的にカイトの目には映った。日本の古い伝承に例えるなら《神憑り》したような、人という概念そのものを超越した何かであるとすら感じる。


それほどまでに今のユリアから漂う雰囲気は常軌を逸していた。


続けて聞いたことのないコードを発する。


「アクセス……、《反芻されし(クォーリィ)()環の終止符(オーダー)》……!」


「――――!」


 そこからの変化は明らかだった。白木の四肢が時間を巻き戻したように修復……再構成される。


 散らばった細胞(セル)が患部に集まるようにして、それが凄まじい勢いで延長していく。


 そのスピードは擦り傷をしたような場合の自己治癒とは別次元の速さだった。


 明らかに異常な再生。異能種の《テオリア》。


 医療系統に有効とされる異能種については学会の論文で目にしたことがあるが、これほどまでの再生速度を可能にするレベルの《テオリア》の報告はなかったはずだ。


 この白髪の少女はいったい何者なのか。


 しかしカイトがそう思わずにはいられない要因は彼女のテオリア以外にもある。


 昨日、カイトがユリアと出会ったときだ。カイトは地裏に倒れていた彼女を抱きかかえ学生寮まで走った。そのとき、気が付いてしまったのだ。


 ユリアの身体が身長を考えても()()()()()()()ことに。


 ほとんど重さのない身体。カイトはそれがどうしても気になっていた。それこそ白木に訊ねたかったことだった。


 気が付けば白木の四肢は切断されていたのが嘘のように再生していた。


 血にまみれた切り取られた白衣までは当然ながら再生していないが、腕には傷の一つさえ見当たらなかった。


「なあ、博士は……――――――!?」



 ユリアは糸が切れたようにその場に倒れた。




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