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38話 ストレスもお湯に流しましょう

かなり不本意だけど、今日は虎太郎サンと一緒に泊まる事になってしまった。一緒に泊まった事が、既成事実という形に取られる可能性については、もう諦めている、1度ならず2度目だから、どれだけ否定しても無意味だろう。噂を誇張する人も沢山いるだろうし、茜自身が記者だ、知り合いにリークする可能性は悲しいけれど高いと言わざるを得ない。


「何だか胃が痛くなりそう」

「隣の部屋に殴り込みに行くか? スッキリするぞ」


準規君はともかく、伊織ちゃんにいちゃつくなと言うのは気が引ける。旅行に行ったら、大事な人とのひとときを過ごしたいのは当然至極な訳で……。


「良い、それより温泉に入るから」

「まあ、それが良いだろ」


着替えやら諸々を持って、服を脱いでお風呂場の扉を開ける。中には三河湾が一望出来るガラス張りの壁の近くに大きな湯船がある。いやー絶景だね、ちょっと色々あったけど来て良かったかも知れない。


「ふぅー極楽極楽……」


湯加減も少し熱めで気持ち良い、胸が大きいのとデスクワークが多くて肩が凝りやすいから筋肉が解れて正に極楽だ。


「竜姫さーん!」

「ひゃう!?」


後ろからみのりちゃんが私の胸を揉みたくしてきた。夢心地って一瞬で終わるんだね、私の守護霊役に立たないな!


「み、みのりちゃん、覚えてる?」

「竜姫さんの乳、大きくて綺麗で良いなー」

「セクハラ禁止って言ったでしょうが!」

「うわっ!」


何とか脱出し、固め技で動きを封じた。憧れるのは一向に構わないし、許可を取れば多少のタッチは大目に見るけど、同性も守備範囲なのに許可なく胸を揉みまくるのはどう見たってアウトだ、バイセクシャルだからって許さないぞ!


「痛い痛い!」

「もうやらないと言うなら、解除するけど」

「出来ない約束はしないから」


カッコつけてるけど出来ないの!? そこすら出来ないと絶対にダメだよ、半分犯罪だからね!


「竜姫、お風呂の中で暴れないで……」


現れたのはイザベルと伊織ちゃん、こういうところだからスタイルとかはっきり分かるんだけど、イザベルって凄い着やせするんだね、ハーフなのもあるのかも知れないけど、クビレが凄い! 伊織ちゃんも脚が綺麗で羨ましい、どうしても私は鍛えているから脚が太くなりやすくて、太ももがちょっとコンプレックスなんだよね。


「いや、セクハラ禁止って言ったのに胸を揉むのはどう見てもアウトでしょ?」

「……そうだけど、ワタシは別に気にしない……」

「良いんですか!?」


伊織ちゃんの綺麗なツッコミが決まった所で、みのりちゃんが絞め技から脱出し、イザベルの方に向かっていった。


「じゃあお願いしまーす!」

「……ん、じゃあ虎太郎さんとシンに報告しておくから」


ピタっとみのりちゃんの手が止まった、あの2人なら確かに、怒った時は凄そうだ。わりかしイザベルも考えているかもね。


「風呂に入る時は騒ぎ過ぎない……楽しむのは構わないけど」


普段適当にまとめて縛ってある髪を留めて、お湯に浸かない様にしているし、イザベルって、案外温泉好きかも、ポーカーフェイスな顔が、幾分か柔らかくなってるし。


「ワタシはフランスの血も、日本の血も入っている、だから日本の温泉も大好き」

「確かに良いよね、温泉って……」


その後しばらく何事もなく温泉を堪能した、すると気分が良くなったからなのか、女子トークを伊織ちゃんが切り出して来た。


「準規くんってわたしといて楽しいのかな……」

「……嬉しそうだったと思うけど?」

「でも、この前……」


伊織ちゃんの相談内容は、時々休みの都合が合わず、合っても時々呆けて話を聞いてない事があるという。確かに時々準規君はクタクタに疲れている所をリビングで発見する時がある、本人に聞くのが手っ取り早いけどいないし、一安心させるべく声をかける。


「準規君は2股する程恋愛慣れしてないし、この前も伊織ちゃんと旅行って浮れてたから、虎太郎さんにローキック喰らわされてたよ」

「兄さん、最近竜姫さんにも蹴られてるし、シバかれキャラを確立させてるかも」

「それはちょっとイヤです……」


ふざけた事を言わなければ私はシバかないよ! もしもそれが嬉しくなってきたならば、伊織ちゃんがシバく快感に目覚める様にしてみよう。


「でも、凄い勢いで働いていてさ、親の借金返すのに必死になってるんだ」

「えっ、幾らくらいあるの?」

「最近200万に減ったって言ってた、虎太郎さんに肩代わりしてもらってるから、利子がつかなくて楽だって前に言ってたんだよ」


200万か……準規君の給料がどれほどかは分からないけど、少なくとも返すのに相当かかりそうだ。


「そんなにあるの……?」

「でも、この3年で1割まで減ってるから、今年中に返済するでしょ」


伊織ちゃんの心配を払拭する、良いデータをみのりちゃんが提示した、おおーすごく頑張ってるな準規君……ん? 200万で1割、それの10倍だと──


「3年間で1800万以上返してるって、準規君何やって──!?」

「タツ、ストップ」


イザベルに口を塞がれて、私は喋れなくなってしまった。いやいや、大学をパッと出てすぐくらいの人が少なくとも7、800万稼いでるって事だよ。それも大学在学中から!

流石におかしいので、場所を変えてイザベルにこそこそと事情を聞いてみた。


「……あまり綺麗じゃない仕事を、杏ちゃんからもらってる。……それに加えて虎太郎さんの事務仕事をしてるから、なかなか忙しい」

「それを伊織ちゃんは知ってるの?」


この話の核心なのだが、イザベルはちょっと曖昧な態度だった。


「……知ってると言えば知ってるけど」

「けどなに?」

「……察して」


彼氏が情報のエキスパートというだけあって、思ったよりも口が堅い。まあ、多分そういう事だろうけど。


「分かった、じゃあ戻ろう」


風呂に戻ると、なにやら2人がこそこそ話をしていた。こっそり聴いてみよう。


「……それで、ここのお風呂夜に男女共用になるらしいの」

「おおーそれはそれでメイ君の筋肉美が視れる訳ですね!」

「絶対入らせないから、ねっ!」

「あだだだっ!?」


ねっ、の所でヘッドロックをかましながら、みのりちゃんを締め上げる。みのりちゃんはいい子だと認めているけどね、まんま思春期の男子並みに下心丸出しで私の弟を見るな!


「そ、その辺にしましょう? 実際する訳じゃないんですし」

「襲って来ても、紅葉君なら逃げられるし大丈夫……」


その状況を大丈夫と言えるのかどうかは不明だけど、これ以上締めても仕方ない。私はロックを解除すると、みのりちゃんをこちらに振り向かせて笑顔で忠告した。


「もし下心丸出し、間違っても襲おうものなら、家に帰ってくる時には、頭だけ旅館に置いて帰る事になるからね?」

「……ハイ」


イザベルと伊織ちゃんがドン引きしてる風に見えるけど、それは仕方ない。みのりちゃんにはこれくらい言わないと無理だろうしって、これくらい言わないと無理ってどれだけだよ!


「虎太郎さん不倫出来ませんね……」

「……しないけど、確実に尻に敷かれそう……」

「なんで結婚前提なの2人とも?」


それにあの人と結婚はあり得ないし、そもそも付き合いもしないから、どうしてそんな私を結婚させたがるんだ!


「……じゃあタツ、結婚相手が優しくて金持ちでイケメンで……スポーツ万能で高学歴の人ならどうなの?」

「そんな人拒否する人は、相当なバカか酔狂か……」

「……じゃあタツはバカ?」


バッ……バカってなによ! 私は虎太郎サンがイヤって訳で、他にそんな人がいたら間違いなく結婚とかするよ。


「でも、確実に男運に恵まれてないよ」

「……そもそも男を見る目がない」

「準規くんから聞いてても、竜姫さんは一旦自分を信じない方が良いです」


ここまで言われると流石に自信を失くすよ……私の評価ズタボロ過ぎない? あと、準規君はみのりちゃん共々シバいておこう。


「みんなお節介が過ぎない? 絶対に付き合う事はないよ!」

「……もう手遅れ」


えっ、今イザベルなんて言った? かなーり不吉な言葉を言った気が……。


「……本当に嫌いなら、どうして家を出ないの?」

「それは、お金が浮くからであって……」

「でも……非常勤を掛け持ちすれば、負担は増えても確実にお金に余裕が持てるのに……」

「確かに、精神科とかって、引く手あまたって聞くなあ」

「好きの反対は無関心って言いますし、虎太郎さん脈あるかも」


無いよ! 恋が生き物なら生まれる前に死んでるからね!

そう主張しても、完全に無視されて私と虎太郎サンの話が更に盛り上がる。


「結婚したら、豪華なチャペルでやるんでしょうか」

「いや、虎太郎さんは無駄に豪華にせずにでもサラリと嬉しい事を竜姫さんにやるタイプだから」

「……同業者とかの余興が凄い事になりそう」

「いやだからやらないって」


私の主張は本日2度目のシカトとなり、話が進んでいく、そして話はどんどん膨らんでいく。


「子供とか何人出来るかな?」

「……少なくとも、2人は作りそう」

「さぞ凄い美形な子供が産まれそうですね」

「…………」


私はこっそり手首の柔軟をしっかりとして、少し息を吐いた……うん。


「勝手に本人無視して話進めるな!」

「あうっ!」

「っ……!」

「ぐはっ!」


目に入らないようにしてかつ、女性陣という事で軽めのビンタを往復で決めた。女性に手を上げて恥ずかしくない? 私も女性だからね!


「10代とかならともかく、30前の女性の色恋をあれこれ詮索しないの! 特にイザベルは同じ歳でしょう」

「……個人的にはタツの意見を尊重したいけど……」

「けど?」


イザベルの次の言葉に、私は驚く事になる。


「今……虎太郎さんとタツの恋愛成就ダービーが開催されてるの……胴締めがシンで、なるべく成就するかつ大穴になる方にしようって躍起になってるから……」

「うおおおおぉぉぉい!」


いつの間にか、私をダシにしてギャンブルが始まっていた。前回は法の網を抜けていたが、今の話を聞いてると違法感がひしひしと感じるけど。


「大丈夫……経費を差し引いた分は全額各慈善団体に寄付するから、汚れた欲望は綺麗な未来を作るって」


日本の公営ギャンブルを、正当化させたい人の言い訳みたいな発言だねイザベル。理論的には合ってるけど、私の怒りはそれで消える訳が無い。


「とりあえず、イザベルは後で話をしようか?」

「……ワタシにはシンがいるから、それを崩せる?」

「卑怯だよ、彼氏を使うなー!」


リア充に色んな意味で負けて、私は更に落ち込み、捨て台詞を吐きながら風呂から出た。神様、私はあなたになにをしでかしたんですか? そうだとしたらしっぺ返しがひどく無いですか、温泉旅行でメンタルボロボロになるってあんまりだよ!


アラサー女子が裸で涙混じりの雄叫びを上げてる時点で、もう危険物だと言われても仕方ないが、一通り叫んだ所で浴衣に着替えて、部屋に戻る事にした。


「おう、疲れは取れ……無かったみたいだな」

「ねえ、今日は温泉旅行だよね? 旅館でのんびりだよね? どうしてドンドン疲れるの!」


今回は過失もへったくれもない虎太郎サンだが、日頃の行いの分も含めてひたすらやつ当たる。私は悪くない、周りが休ませてくれないのが悪いんだ!


「大体茜は罠に嵌めてくるし、みのりちゃんは羽目を外してセクハラするし、イザベルは私をネタに賭けの主催してる。伊織ちゃんですら軽口を叩くんだよ!」

「……それは災難だったな」

「オマケに虎太郎さんと同部屋だし、ゆっくり休めないよこんなの!」

「……それはすまない」


そういう感じで不満をブチまけ、だんだん怒りと話が脱線して行った。


「大体なんでこんなハイスペックなのに、寄ってくる男はみんな変人ばっかりなの!」

「結婚したヤツもいるし、変人ではあるが悪いヤツでは無いだろうが……」

「自分を棚上げしてない?」


好意を寄せていると自他共に認めてるのに、他人事のような虎太郎サンを睨みつける。アンタも相当変人だからな!


「逆にタツの理想はどうなんだ?」

「は?」

「恋愛対象を選ぶセオリーとしては、これは外せないっていうのと、これをされるのは嫌だというのをキッチリさせておくのが基本だ。失敗がかなり減る」


むぅ……確かに吟味するのは大事だ。魚釣りに例えるなら、何でもってガッついて釣ったのがアオブダイだったとか。外見もアレだけど、それ以上に内臓食べたら死ぬし。


「じゃあ虎太郎さんから聞かせてもらうけど、どういう女性は嫌なの?」

「金遣いが荒い人、いざという時の度胸が無い人はどれだけ他人の評価が高くても外す。金目当ては嫌だし、ここぞという時に力が出ないヤツは一緒にいても、お互い辛いだろうから」


金遣いが荒い人というのはお金持ちの嫌がる事というのはよく聞く、自分が好きな訳じゃ無いんだと思うからだ。でも、いざという時に力が出ない人は嫌って、そういう状況が来ると思ってるんだろうか?


「俺は話した、タツの対象外を教えてくれ」

「年上と紅葉の事を蔑ろにする人は、絶対に無理」

「ブラコンだな……分からないでも無いが」

「虎之介君に結構甘い虎太郎さんに、言われたくないけど」


それと紅葉よりも年下もアウトだ、弟感覚で見てしまう。そう思うとかなり守備範囲が狭い、17歳以上28以下というかなり贅沢な恋愛願望かもしれない。でも、図らずも年上と不倫し、苦労をかけた紅葉を蔑ろにする人は絶対に嫌だ。


「ともかく、俺とは死んでも結婚しないと言われなくなっただけ、再評価してくれてありがとうな」

「なっ……!?」


しまった、それを忘れていた──って、虎太郎サンが嫌いという事実を、少し忘れてたという事実にかなり驚いた。でも周りが言っていた本当は良い人というのは、確かに納得は出来る様にはなってきた。問題はその優しさが、もっと私に来て欲しい事だけだ。


「ご飯はせめて舌鼓を打ちたい……」

「そんな事言ってると、また叶わなくなるぞ」

「普通逆でしょ!」


言えば追い込む事になるから実行しようと頑張るものなんだけど、悲しい事に言えば言う度、登頂寸前でリタイアしてるクライマー並みに目標が叶わない。努力でどうにかなるものは、死に物狂いで掴みとってるから何とかなってるけど。


「舌鼓が打てなかったら、俺がドラムを打ってやるから」

「うんうん、打楽器繋がりでね……ってやかましい!」


ノリツッコミプラス平手打ちでどついて綺麗にまとめた所で、食事の席に行く時間になり、重い腰を上げて食事処に向かった。

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