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20話 オールスターダスト

良い年した大人達が大暴走の巻、女装やら酷い言葉やら出てくるので、苦手な人はご注意ください。

会場は前にSelfjudgeがやっていたよりも規模が小さい、1000人規模のホールで、私は会場で落ち着いて観られる席に案内されて少し恐縮した。ドリンク1杯サービスで、他に誰もいない個室だよ? ちょっとしたVIP待遇で驚いたよ!

そして時間が近づくと、舞台袖からメンバーが顔を出した。蒼山さんから始まり、鳴瀬さん神保さんと、上手側の人から順番に登場しているみたいだった。

唯一の例外はボーカルを担当する虎太郎サンで、みんなが来てから最後に登場してマイクの前に立った。


「皆さんこんにちは、オールスターダストのボーカルをやっている白虎です。本日は集まってくれてありがとうございます……そこ、肩肘張らず聞いてくれれば良いからね」


少し笑いが起こり、リラックスさせたところで、虎太郎サンは外ヅラ全開で謙虚にファンに語りかける。


「ポンドが復活するまで、少し活動させてもらうので、それまでほんの少しだけ付き合ってください」

「もちろん良いよー!」

「ふふっ、ありがとうございます」


観客席から声援が飛ぶと、笑顔でその方向ににお礼を言っていた。虎太郎サン、楽しそうだなー。


「じゃあ、リラックスして聴いてください」


ピアノの伴奏とともに、虎太郎サンの優しく切ないウィスパーボイスが流れでた。他のみんなも、いつもの様なロック調を少し抑え目にして、虎太郎サンの世界観を壊さない様にしていた。


──気だるげな体を起こしていつもの場所へと進む 何も変わっていないはずの今日がやけに眩しくて

駆け抜けたあなたにサヨナラは言えずじまい もうあの時には戻れないと知っていても


カラスはなくよ 青く澄んだ見慣れた空を飛びながら 素敵な街並みも 綺麗な自然も 今の僕には響かないのさ あなたが消えたその日から僕の日々は真っ黒です 夢でも良いからあなたに今逢いたい──


ノリが良いと言うよりは、しっとりと聴かせる音楽が多いかな、虎太郎サンの曲は。時間帯で言えば夜から朝方の、おだやかなのが本人のいじわるさを差し引いても私は好きだ。……別に虎太郎サンが好きな訳ではない、はず。

何曲か終わり、またトークに入ると、今度はメンバーの話をしだした。


「高校生の時に、今のメンバーと会ったんですけど、ロボが日焼けすると良くないんで屋内プールでトレーニングしたんです。男子がメンバーの誰が綺麗かって話してて、ふと気配を感じたんでそっと抜けたら、女性陣がこっそり聞いてて、主犯2人がプールに投げ飛ばされてたんです」

「オマエはいつも要領良かったよなー!」


鳴瀬さんがぶーぶーと茶化している、虎太郎サンいわく、宮崎さんと鳴瀬さんはツートップバカで、虎太郎総監督の元、追試対策にミホ理系担当コーチ、青狼文系担当コーチをつけて年下打楽器隊とともに勉強していたそうだ。ちなみに、神保さんと蒼山さんはすぐにツートップを抜き去り、コーチの手伝いをしていたそうだ。鳴瀬さん、宮崎さん、ご愁傷様です。


「でも、ロボさんにハメられて、罰ゲームで美女にさせられてましたよね」

「マンちゃんその話は止めてくれ……」


おやおや〜今度その辺を深く掘り下げて欲しいな〜。ついでに写真もあれば焼き増ししてください!


「遅刻とかの罰則が溜まると、恐ろしの黒箱があるんだ、──ちょうどカンパが先月累積で決定していて、ここに持ってきたんだ、引いてくれ」


蒼山さんの顔が真っ青になった、ライブ中に公開処刑とは、椎名さんもなかなかヒドい人だ……。

ごそごそと箱に手を入れて、取り出した紙に書いてあったお題は、『セクシーな衣装』というものだった。椎名さんは似合いそうだし、宮崎さんも堂々と着こなすだろうけど、ボンがひとつもない蒼山さんにこれはかなりキツい、というか対蒼山さん仕様じゃないかな?


「じゃあカンパ、着替えに行ってきてもらおうか」

「アネゴさん、そう言えばポンドさんの遅刻が何回か溜まってますよね」

「……まさかっ!」

「Selfjudgeルール、メンバーの責任はみんなの責任! ということでみなさんにも引いてもらいますよ」


蒼山さん全員を道連れにした!? 大人しそうだと思っていたけど、やる時はやるね。ファンの人も味方につけている分、結構したたかかも。

まず、ミホさんから。心なしか引きつった顔で引いた内容は『かわいい服でにゃんにゃんポーズ』という、これまたキツい内容。30過ぎてにゃんにゃんポーズとかイタい以外の何物でもないよね……。

お次は鳴瀬さん、なんだかやさぐれた感じで引いている様にも見えたが、内容が分かった途端、がっくりと膝をついた。その内容は、『パンツ一丁で女子がキュンとするひとことを言う』……って、なかなかシュールな光景だ。

3番目は青狼さん、緊張からか硬い表情で引き当てた内容は、『スク水で萌えセリフ』……誰だろ、こんなえげつないのを考えたのは。男子にも女子にも相当のダメージがくる。もちろん見る側もダメージが……。

なにか諦めた顔で引いた神保さんの内容は、『ゴスロリで1枚』さっきのインパクトがすごすぎて軽そうと一瞬思ったけど、よく考えたら黒歴史が思いっきり残っちゃうから、これもかなり大変だ。

最後に無表情の虎太郎サンが引いた内容は、『身体中に油性ペンで落書き』内容しだいでは、ハードな罰ゲームになる事うけあいだね。

でも、これだけえげつない罰ゲームだと、むやみやたらと遅刻しないで済むかもしれない。でも、たいていの人は1回痛い目みないと分からないものだ。多分、みなさんこれまでに最低1回は経験しているんだろうな。


「じゃあ、ちょうどマルチプレイヤーがいるから、1曲ずつ交代で着替えるか」


鳴瀬さんの提案に、全員ため息を吐きながら賛成した。虎太郎サンと蒼山さんは全員の担当楽器を演奏出来る。ギター、ベース、ドラム、キーボード、パーカッション、5つも演奏出来るなんてすごいって言ったら。


「ベースが弾ける様になると、ギターも多少の練習でそこそこ出来る、構造が似てるからな。ドラムやってる奴は、兼任でパーカッションやってる事も多いから自然に出来る。キーボードは少しコツを学べば、ドラムと感覚が近いから思った程大変じゃないぞ」


とか虎太郎サンは言ってたけど、それをプロレベルでやるのって天才で努力家しか無理じゃないだろうか……神様、虎太郎サンに何物与えれば気がすむんですか?


「はぁ……じゃあ、最初はわたしがいくよ。先代、バトンタッチ」


ミホさんが下がる際に虎太郎サンにハイタッチして、虎太郎サンがミホさんの場所に移動した。そうして次の曲を歌い出した。

曲が終わると今度は田邊さんが着替えに行き、虎太郎サンはギターを手にしと、全員のパートを虎太郎サンは完璧に演奏してしまった。


「白虎さん凄いよ……」

「あれはヤベェ、努力だけじゃできねぇよ」


トイレに行かせてもらった時にそんな声も聞こえてきたほど、観客からも驚きの声があった。やっぱり、努力した天才は怪物ってことか、今度モンスターと呼んでみよう。

そうして、曲の間に罰ゲームが開始された。トップバッターは蒼山さん、みんなも着ているから、追加で決めポーズもしていたけど……うん、なんかこう……事務職が天職なのに、無理やり営業マンになっちゃった人みたいな感じになってる。予想していた通りの似合わなさだ、逆にロリータファッションが似合うと思う。

次は鳴瀬さん、さっきからパンツ一丁でベースを弾いていて、そんなベースの人も他にいた気がするけど、地味なパートの割にかなり目立っていた。

そして、客席に、キュンとするひとことをアンケートし、採用された言葉を真剣な顔で披露した。


「今夜は君のナイトになってあげる、ご命令を、お姫様」

「キャー!」


その「キャー」は、黄色い歓声か、それとも嫌悪の悲鳴か……いずれにしろ、結構男前な鳴瀬さんでも、パンイチじゃ締まらないのはこれで実証された。

2曲挟んで次は神保さん、演奏時には足も使うからスニーカーだったけど、罰ゲーム実施にはパンプスに履き替えていた。

蒼山さんとは対照的に、ウィッグを着けて、おめかしした神保さんは、そこらのアイドルよりもかわいく、黙っていれば分からないクオリティの高さを見せつけていた。個人的には内股でモジモジしてると、本気で女子にしか見えないから、嫌ならしない方が……。

ミホさんは、ガーリーファッションにネコ耳を着けて、にゃんにゃん言いながらポーズを決めた後に、打ちひしがれていた。会場からは男女問わず、かわいいーと神保さんに劣らず大絶賛だったけど、本人のアイデンティティからか、モニターにはゆでダコ状態の頬になったミホさんが映っていた。


「ううっ……お嫁に行けない」

「誠実な旦那さんと、かわいい息子がいて何言ってるんだ」


虎太郎サンがツッコミを入れて、メンバー全員が笑っていた。4年前に結婚、妊娠して、幸せな家庭を築いているからそうなんだけど、何年か経って息子さんにこの光景を見られたら恥ずかしいだろうな……。仏教徒だけど言っておこう、アーメン。

色んな意味でヤバい田邊さんの罰ゲーム『スク水で萌えセリフ』はかなり際どいもので、トレンチコートの下にスク水を着用という、変態感丸だしの状態でライブをやっていて、いざ実行の時に、涙目で萌えゼリフを言っていたのには、私の目から熱い汁がこぼれ出た。多分1番痛みしか伴わない罰だ、断言する。痛みしか伴わないよ!

最後に虎太郎サンの引き締まった上半身と下着姿に、女子の声が響き渡った。そういえば、お姫様だっこされた時に、思ったよりもガッチリしていたのを思い出した。よく考えたら、170以上もある女子を軽々とお姫様だっこしたのだ、ガリガリのモヤシ君ではないよね。


「ここに日ごろの恨みをブチまけてやる」


鳴瀬さんが書いたのは『○○○○○○○』、いきなり放送で怒られるレベルのものをぶち込んできたよ!?


「次はわたしだな、覚悟しろよ」


ミホさんが書いた内容は、『バツイチの変態オス豚』……あのー遺恨は解消済みなんですよね? それでこれって……ミホさんには逆らわないでおこう。


「じゃあ2人とも酷いから、このくらいで」


なんて言っていたから、軽いのかなと思った神保さんの落書きは『皆様のペットです』、紳士的な物腰だけど、この人の腹黒さが少し滲み出ている様で、弱味握られたくない人ベストスリーにランクインした。


「じ、じゃあボクはこんな感じで……」


ボクっ娘の蒼山さんは『ポンコツお坊ちゃん』と比較的良心的な内容……でも、落差が大きすぎてもう罵倒と思えなくなって来たのを計算していたとすれば……いや、気のせいかな。


「はい、先代怒らないでね」


怒られる内容なのだろうかと、ヒヤヒヤしながら見ていると、相合傘で白虎、T姫と書いてあった……オオおおおぉい! 私の名前をなぜそこに書いたんだ!!


「……後で謝っておけよ」

「もちろん骨は拾ってね?」


安心してください、オール・スターダストは、全員まとめて星くずにしておきますからねこの野郎!

そして優しい音楽と、エンターテイメントにあふれたライブが終了し、私は楽屋に連れて行ってもらった。


「強行ツアーお疲れ様でした、カンパーイ!」


お酒かと思いきや、ジュースとお菓子で軽い打ち上げをしている皆さんに、ゲンコツ落としと正拳突きを食らわした。もちろん女性陣には、軽めなのと正拳突きはやらなかったけど。


「ってー……!」

「突然なんだ!?」


ミホさんが頭をさすりながら、私を驚きの目で見ている。鳴瀬さんはさらに腹を押さえてこちらを恨めしく見ているけど、そんな事知った事ではない。


「お前、最恐ヤンキーによく八つ当たり出来るよな」


緑色の頭もさすっている鳴瀬さんを見ながら、虎太郎サンも自分の頭をさすりっていた。ちなみに1人で不良になり、そこから北陸と北信越、岐阜のヤンキーをほぼ支配下に置いた総長のミホさんと、10人の幹部を1人で打ち負かしたのが鳴瀬さんだ。だがそんな事知らん、私に恥をかかせたんだから全体責任で全員シバくだけだから!


「オマエ、こんな暴力女がかわいいと思うのかよ!?」

「ピンチの時の度胸とか、普段人に接する時の優しさとかが、ギャップで可愛いと思うんだがな」


そ、そんな恥ずかしいセリフさらりと言うな!! もう一回殴るよ! あと、鳴瀬さんは暴力女とか言ったからアッパー入れてやった。


「く、口は災いの元ですね……」

「そんなんだからなかなか恋が実らないんです、彼女さんに逃げられますよ」


そういうあなた達もシバかれたんですよ、打楽器夫妻、まあ、神保さんの恋愛指南は聞いた方が良いだろうけど。プレイボーイの恋愛講座、聞いてみようかなぁ。


「みんなゴメン、今回の主犯はオレだから」

「謝るくらいならやらないでください」


田邊さんには、更に追加で頭をゲンコツグリグリおいた。皆さんルックスのレベルは高いけど、なんか常識とはかみ合わない人ばかりで、この職場は合っているんでだろうなと1人納得する。


「まあ、竜姫さんの怒りはひとまず終わりにして」

「それってどういう事ですか?」

「そこです、敬語しなくて良いですよって話ですよ、先代のガールフレンドですし、ボクと真凛は年下で、アネゴさん以外は同じ年齢じゃないですか、だからこの機会にフラットにしてもらっても良いです。名前で呼んでもらっても構いませんよ」


神保さん改め、裕二君がそう言ったので、年長者のミホさん以外はタメ口で話させてもらおう。では早速……。


「私の怒りを棚に上げて話さない!」

「ぐはぁ!」


遠慮なく近くにあった新聞で、裕二君の頭をクリーンヒットさせて小一時間バンドメンバーを反省させた。アラサー達、騒ぐのは勝手だけど、私を巻き込むな!

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