お泊り
当然ながら、人と話すのに難のある桐生綾香が水瀬と別れた後、西条莉奈の会話と云える会話らしいことは家までの二キロずっとなかった。水瀬と別れた直後、妹が話題に持ち上がったけど、妹が可愛く健気であることを話した以外に特に盛り上がった様子はなかった。
そもそも、色々な意味で表情豊かな綾香にかける話題が見当たらないこともあって、莉奈を悩ませ会話に踏み込めない原因ともなっていた。
一戸建ての綾香の家が視界に入ったところで彼女が「こ、ここがうちです……」と口をもごもごさせながらいったところで何とも言えない沈黙は打ち破られた。
「おー」
莉奈は感嘆の声を漏らした。
彼女が家を仰いで見ているところで、玄関の戸を開ける。中から、可愛く健気な小学生の妹のおかえりとの挨拶が聞こえ、自然とそれに返した。
「さ、西条さん上がって」
少しだけ驚いた表情のまま家を見ていた莉奈が綾香の呼び声に反応して、綾香のほうを向いた。綾香の視線は相変わらず下を向いているが、一瞥するように目線を上にやろうとしている仕草を見て莉奈はほっこりした。
「お邪魔します」
彼女はそういって、それに続いて綾香が家へと入った。
「お姉ちゃん、お帰り。晩御飯できてる――」
玄関にそそくさと迎えに来た綾香の妹は莉奈を見るなり言葉を詰まらせた。
「こんばんわ?」
こんばんわというには少しばかり早い時間のために、莉奈は若干訝しげになって挨拶をする。反射的に、綾香の妹もお辞儀をして、こんばんわ、と返すがちょっとだけぎこちなかった。
「ど、どうしたの? 千夏」
綾香も莉奈も靴を脱いで上がったところでも千夏は硬直していた。莉奈を凝視して、まるで幻想の生物でも見ているように体は動かず目は丸くなっていた。
「お、お姉ちゃんが……」
ついに千夏は口を開いていう。
「と、友達っぽい人連れてきた!」
精一杯驚いていう。しかも、嬉々としていうので綾香は赤く照れた。
「ち、千夏っ」
恥ずかしく妹の言動を止めようと思うけど消極的な自分に、積極的な彼女の言動は止められずに妹は莉奈に話かける。
「あの、あの、お姉ちゃんのおともだちですか?」
ドキドキさせて妹は莉奈に訊く。
「もちろん!」
莉奈もうれしげになって即答した。
「やったね、お姉ちゃん」
ほころんだ笑みの妹がやさしく綾香に微笑んだ。妹の表情は確かに驚きに満ちていたが、口調は安堵でいっぱいのようで柔らかい。友達を家に連れてきたこととか後で聞きます、と立ち話を終わらせリビングのほうでご飯を食べましょうと言ってうれしそうな足取りでリビングのほうへ向かっていく妹が小声でつぶやいていることが綾香には聞き取れた。言葉に難がある代わりに聞き耳が良いのか彼女もわかっていないが、それでも、本当に姉思いのできた妹が安心しきったように『よかった』とつぶやくのは姉の立場として心にしみわたった。
「桐生さん」
妹がリビングのほうへいったところをしばし見て呆然としていた綾香を心配して莉奈が声をかける。綾香の二言やさしい声をかけられれば泣いてしまいそうな表情を見て心配になったのだ。
「あ、うん。え、と、千夏の作るご飯は美味しいんだよ。楽しみにしてね、西条さん。千夏を手伝わなきゃ」
言葉を出すのにあまり時間がかからず自分でも驚くほどにすんなりといえた。家にいるせいか、それとも妹の素敵な事を聞いてか。しみじみとした気持ちもすぐに切り替えれたし、このままちゃんと話せるくらいはなりたいものだ。
そう思って、いつも挙動のおかしい綾香がまともに見えて感心して見る莉奈を抜けて妹の手伝いをしようとリビングに急いだ。
「私も何か手伝えるかな?」
後ろから莉奈の声がかかる。
後ろに振り返って自然と笑顔を作って綾香はいう。
「うん、西条さんもお願い」
綾香はそういい終わった後に、あまりにも自然な態度で莉奈と接したことにまた内心驚いていた。
気恥ずかしそうに、隠れて妹のほうにかけていったのを、顔を赤らめて莉奈が見ていた。
1
綾香と同い年の莉奈は妹と同じくらい料理が上手で手際がとても良かった。
綾香というと、真っ先に千夏の手伝いをしようとキッチンで莉奈の分ともう一品料理を作ろうとしている千夏に申し出たところ清々しいほどズバッと断られた。千夏は知っているのだ。綾香に料理を任すと黒焦げの物体ができてしまうことを。
残念に思ったものだけど、一通り手を洗う、着替えなど帰ってきてからの所作を、ちょっとだけ仲良くなった気がする莉奈と、千夏が料理を作っている最中するのだが、着替えの時点で莉奈はどこか行っていた。
着心地の良いジャージに着替えた綾香は、自身の部屋を急ぎ足で出て一階のキッチンの場所へと向かう。すると、綾香が目にしたのは仲良く料理をしている千夏と莉奈であった。
「莉奈さん、包丁使いお上手ですね」
「千夏ちゃんだって小学生なのに手際がいいよ」
和気あいあいと料理に勤しむ二人。なんだか、妹が莉奈に奪われたようで複雑な気持ちになった。今までずっと慕われていたのに鞍替えされたような気分……。
露骨に落ち込む様子を醸し出すが和気あいあいとした空間にマイナスのオーラは通じなかった。肩をすくめながら、キッチン前のリビングのソファーに大げさに腰かけてゲームの電源をつけた。
「お姉ちゃん、ごはん作っているときにゲーム止めてよ」
「別にいいじゃん」
「そんな、勝手な……」
「勝手だもん」
綾香は顔を膨らませていじけていた。千夏が料理をしているときに、ゲームをしてほしくない、と言っているのは綾香がすぐにゲームを止めない(止め時がわからない)からである。
「ふふ……」
その光景を見ていた莉奈が笑みをこぼした。
「そだ、莉奈さんがお姉ちゃんに言ってくださいよ。毎回聞かないんですよ」
妹が莉奈に頼み込むので、綾香は焦って言う。
「ちょ、止めるよ!」
急いでゲームの電源を切る。
「別にしててもいいと思うけど。こんなに饒舌でアクティブな桐生さん……ここではややこしいかな。えっと、綾香さんを見るのは新鮮だし、気持ちがいいよ」
照れもなく莉奈は率直にいった。こちらを微笑んでみてきて、綾香は無性に恥ずかしくなった。
まだ綾香自身、莉奈に慣れていなく言葉も帰り際まで流暢に話せていなかったはずなのに、千夏の存在が口を軽くした。
恥ずかしいのは千夏と話す態度が流暢であるだけでなく、自然に下の名で呼ばれたことである。ギャルゲをプレイしている彼女にとって下の名を呼ぶというのはちょっとだけ特別な感じがして、何ともこそばゆい気持ちになる。
「あ、あの」
莉奈に向かって話そうとする態度はやはりたどたどしい部分があるものの綾香の目はしっかりと莉奈の目を見ていた。
「なに?」
柔らかい口調で返事をする。
「わ、私も名前で呼んでいいですか?」
冷や汗をかきながら綾香は言い切った。言葉も途切れ途切れではなく、聞き取りやすい声で言った。
しばしの沈黙。ぐつぐつと煮ている鍋の音が沈黙の中に鳴っている。そこを切り出したのは、小気味のいい莉奈の笑い声である。
「そんなのもちろんだよ! だって、友達だもん」
さも当たり前のように返された。清々しいほどに素直で暖かかった。態度とか、雰囲気とか、曖昧なものじゃどのような関係なのかわからない綾香だ。こんなに気持ちよく率直に言ってくれることがとてもうれしかった。
「えっと、じゃあ、あ、あの、っと」
言葉に難があるように話しているが、それはいつもの綾香特有の悪癖とかじゃなくて緊張からくるものだった。
莉奈は待っていた。催促せずに、綾香が自分の言葉で、自分から話してくれるのを彼女の目を見て待っていた。
「り、り、莉奈、ちゃん」
思わずちゃん付けで呼んでしまって、言い終わった途端に慌てふためいて莉奈のほうをちゃんと見ると彼女は愉快に笑っていた。
「じゃ、私も綾香、ちゃんって呼ぶね」
「りり、莉奈ちゃん」
若干きょどってはいたものの感銘を受けて嬉しそうに顔がにやけた。
莉奈は、奇妙に顔がにやける綾香の表情にまだ慣れていなく引きぎみであったものの寛容な態度を示していた。
そんな光景を鍋の煮加減を伺いながら喜ばしく思って千夏は見ていたのだった。
2
夕食終わり。綾香より優秀な妹はお風呂の準備までしていて莉奈に向かって先にお風呂はどうか、と尋ねた。客人に対して尤もな態度をして機敏に振る舞う千夏に莉奈はよく出来た可愛い妹だな、なんて思いながら後からでいいよ、と断った。
千夏は一つ返事をして姉にそれを振った。もう着替えて寝る準備満タンの綾香は断ろうと、わがままのいう子供のように、拒否しようとするが莉奈の手前みっともない態度は見せられない(すでにみっともない態度を見せている)と思い口を引き締めて返事した。
莉奈に、先に入るね、と自然に言って綾香はお風呂場にかけていった。
「……変な姉ですみません」
千夏は姉がお風呂場に姿を消したのを見計らっていう。
食後のお片づけの最中に、彼女は神妙な顔つきでいったので莉奈は皿を持ち上げた姿勢で静止した。
「人より思慮が深くて、正直で……不器用な姉なんです。よろしくお願いします」
千夏の献身的で姉思いの姿勢に莉奈はまず感心した。瞬の阿吽の末、目に笑いを浮かべ彼女に向けた。
「最初は戸惑ったけど、この二日間で進展があったよ。昨日、綾香ちゃんと友人になって、仲良くなるのにとても時間がかかると思ったけど、くすっ、今日のお泊りだけで、可愛いところいっぱい知れたよ」
「よかった」
千夏は安堵の吐息を漏らした。
莉奈は洗面上のほうに皿を持っていき、流し台に置いていった。千夏は皿洗いを嬉しそうに始めてた。
千夏が姉の話をするとき、毎回顔を真っ赤にして話すのを莉奈は見逃さなかった。緊張による紅潮にしては話す姿勢は真面目だ。まあ、莉奈から言えば人が誰かを話すときに頬を染めるのは好意があるものがとわかっている。
「…………」
顔を染めている千夏の顔を見ている。じっと、皿洗いの最中の彼女を見ていると、その視線に気がついた千夏が顔をこちらに向けた。
「どうしたんですか?」
染めた頬を戻し彼女は瞳を丸くして見上げてきた。
「千夏ちゃんってお姉ちゃんのこと好きなの?」
率直に真意を訊いた。
「え、え、な、なんで、そ、そそそそうなるんですか!」
動揺している千夏は言葉に難がある状態の綾香に似ている。
「今時こんなに姉に献身的な妹なんていないよ」
「だからって、私がお姉ちゃんのこと、す、す、好きなんて」
もはやその態度が姉LOVEを示している。そういったことに敏感な莉奈だ。莉奈の瞳が微妙によどんだ。
「あ、そ、そういえば莉奈さんはどうして今日お泊りに? 昨日の今日で変なお姉ちゃんのとこにお泊りに来るなんて」
千夏は話を逸らして別の話題を莉奈に向けた。
莉奈の目は焦点が合わないのかちょっとだけ揺らいだ。その様子については千夏は気づかなかった。
「え、そうだね。お化けが怖いの」
ろれつが回らないようにいう。
「お化けですか?」
「うん。高校生だけど一人で家にいるのが怖いの」
千夏は純粋なまなざしで莉奈の話をきく。
「お化けってとても冷たそうに思わない? だから、そんなものが出てきたらって思うと一人の家で眠るなんて怖いんだよ」
千夏は彼女の言葉を素直に聞き入れていたために解釈としては、お化けが冷たそうだから怖いというものだ。だから、それが家で一人だから怖いとは捉えにくかった。
しかし、笑顔の多い莉奈に疑いを向けることなく千夏はいう。
「変なお姉ちゃんでよければくっついて寝てください!」
冗談っぽくいった。莉奈は小さく笑った。
お風呂場のほうから上がってきた綾香は急ぎ足でリビングにきた。
「ふー、気持ちよかった!」
タオルに首をかけた状態で綾香はソファーにだらしなく腰かけて、千夏を探して目線を動かしていると莉奈を見つけて驚嘆する。
「あ、莉奈ちゃんいたんだった……」
また莉奈のことを忘れ、無作法でみっともない態度をとってしまった。
「気にしなくていいよ」
と、莉奈はなだめるが、
「駄目です。甘やかさないでください」
と、妹は姉に厳しい姿勢を見せた。
肩をすくめて残念そうにする綾香を横目に、莉奈は千夏にいう。
「お風呂入っていいかな?」
「あ、はいもちろん。服は姉のを用意しますね」
千夏の言葉を聴き終えてお風呂場に向かう。
お風呂場への道は綾香の匂いがあった。お風呂上りのシャンプーの匂いというものだが、綾香の時折見せる無邪気で可愛らしい姿を知ってこの匂いを嗅ぐと気分が高揚してしまう。
頬を叩いて正気を取り戻す。目は淀んでいた。
3
お泊りの雰囲気というのはどこか浮きだって緊張して誰もすぐに眠りにつかないものだ。
綾香と莉奈もその例に漏れず、一つのテーブルを囲み会話をしている。
「なんかいっぱいあるね……」
しばらくして、莉奈が綾香の部屋の感想をいった。
散らかった漫画など本の山。無造作に置かれたゲームソフト。部屋の色調は明るく女の子らしい雰囲気はあるというのに、部屋の散らかり様は燦々たるもので莉奈も反応に戸惑いを隠せなかった。
「い、いつもはこんなんじゃないんだよ!」
慣れた感じで流暢に話す。
「そうなの?」
「えっと」
いつもは妹に片付けてもらってる。昨日は綺麗だったのにまさか一夜でこうまで散らかるとは……。
「調子悪いかも」
と、歯切れ悪く言い訳した。
「もしかして、片付け千夏ちゃんにしてもらってるの?」
ギク。
「甘えん坊なんだね」
「はいぃ……」
気の抜けた声で認めた。
「なんだか、昨日の印象とは別人みたい。こんなに可愛い子ならもっと早く仲良くなればよかった」
嬉しいことをいってくれる。綾香はそっと頬を染めた。
部屋の戸が鳴る。こんこん、と聞こえ綾香は返事をして戸の前に立って戸を開けた。
「ミルクティーを入れてきたんだけど。莉奈さんと飲んで」
戸を叩いたのは妹の千夏で、白猫黒猫でワンセットのカップにミルクティーを入れて持ってきてくれた。
「ありがとう」
お礼をいうと、千夏はにっこりとしてここを後にして自分の部屋に帰って行った。
「妹がミルクティーを入れてくれたの。よかったら」
二人で囲むテーブルに白猫黒猫のカップが置かれ、黒猫のほうを莉奈に渡した。
「ほんと気の利く妹ね。このカップかわいいね」
莉奈はカップに口つける前にカップをほめた。
「かわいいでしょ」
そういいながら白猫のカップをじっくりとみる。丁重に作られた猫ではないが、どこか愛らしくカップの淵でくつろぐように持ち手に尻尾を添える猫はかわいく作られている。
「これくっつくんだよ」
綾香はちょっと貸して、と黒猫のカップに白猫のカップを近づけた。カップの淵にある猫の頭部がちょうどキスするように黒猫と白猫のカップがくっついた。
「かわいい……」
莉奈は見とれていた。
「あんまり有名なブランドじゃないけど、カップの他にも同じように白猫と黒猫がくっつくように作られた製品があって、お皿とか、リボンとか、後ハンカチとかもあるんだよ」
綾香はテーブルを離れ、自分の机の引き出しをごそごそと何かを探し始める。莉奈はそれを眺めて、カップの黒猫と白猫をそっと話して黒猫のカップに口をつけた。
「あった。これだよ」
と、テーブルに持ってきたのは黒猫のハンカチだった。すでに開封しているようで中心部分には目立つしわがあった。
「白猫は私がいつも持っているんだけど、買った時に黒猫もあけられていて、そのまま引き出しにしまってたの」
そういいながら、自身の鞄から白猫のハンカチを出して広げた。
「かわいいデザインだね」
「そうなんだよー。元々お母さんが趣味で買っていて、出張でお父さんと何度も遠くに行くようになってからは私が全部もらったの」
自慢げにいう。
「これセットなんだよね? 千夏ちゃんと一緒に持たないの?」
「えっと、それはね」
途端に綾香は口元をもごもごとさせた。
「大切にしたい人にあげなさいってお母さんが言っていたの」
「えっ」
驚いて思わず莉奈は声が出た。
「あっ、ち、違うよ。べ、別に深い意味なんてないから! わ、私あんまり友達できるタイプじゃないし、なんていうか、その」
怯えながら慌てふためく綾香に、莉奈は人差し指を綾香の口元にあてた。
「ふふ、ありがとう」
穏やかで優しい声は綾香をほっとさせた。
「よかったぁ」
安堵が思わず口に漏れた。
「何がよかったの?」
「う、ん? いや、なんでもないよ。黒猫のハンカチ受け取ってくれる?」
心配そうなまなざしと震えた小声で訊く。
莉奈はすぐに顔を縦に振って肯定を示した。
彼女は、黒猫のハンカチを手に取ると口元のほうへ寄せた。
「あ、と、しばらく机の中に入ってたから臭いきついかも……」と、綾香は忠告する。
「え? ああ、大丈夫よ。ちょっとどんな感じか近くで見ていただけだし、それに匂いも悪くないよ」
「えっと、それは……」
フォローで言ったのだろうと綾香は胸にしまった。
寝る時間はすぐに来た。翌朝は学校はないものの、莉奈は早めに家に戻るというのでゲーム(流石にギャルゲーをしない)を切り上げてベッドに入り込んだ。
ベッドは一つしかないし、布団も用意できないため、綾香は今日お風呂で念入りに洗って臭いを確認していた。一緒のベッド寝よう、と提案するとすんなり莉奈はいい返事をしたために、驚きはしたが一緒にベッドで寝転がった。
「暖かい」
莉奈はそういった。
「ひと肌があるから」
眠そうに綾香はいう。
「綾香ちゃんは誰かと寝たことあるの?」
「うん。千夏とだよ。一月に一回は今でも、怖い夢を見た、って言って私の部屋に来るの」
目をつむっていう。
「そうなんだ。本当に仲がいい姉妹なんだね」
その答えは返ってこなかった。代わりにかわいげのある寝息が聞こえた。
莉奈はか細い息を吐いて深呼吸をする。ちょっとだけ、綾香との隙間を詰めてベッドに入り込んで丁度、彼女の髪が鼻にあたる位置で目をつむった。
今日はいい夢を見れそうだ。なんてことを、綾香も莉奈も同じことを考えて眠りについたのだった。