すべての始まり
プロローグ
魔界極東の帝都では、反乱軍により魔王城は真っ赤に燃えていた。
城の中は火の粉が舞っており、兵士の死体がいくつも重なって転がっていた。
玉座の前では魔王とその親族たちが床に倒れていた。胸に剣が深々と突きたてられていて、目を剥いたまま事切れている。
「おやおや、生き残っていたのか。さすがだな、我が弟よ」
王座の間では、かろうじて優一生き残った少年は剣を青年に向ける。その青年の手には血が着いたもう片方の剣が握られていた。体には魔王とその親族を殺した時についた返り血がついている。
「何で……、どうして……?」
朦朧とする意識のなか、今にも崩れそうな足に力を込めて、少年が聞く。
青年は魔王に刺さっているもう片方の剣を抜き、返り血を布で拭った。
「な……、なぜ魔王を殺した、殺さないはずだったのに」
「く、クククククク、我が弟よお前のお陰で俺の計画は成し遂げられた」
少年のように無邪気に笑っている。
「俺はもともと魔王を殺すためにお前と組んでいただけだ。それにお前は賢いが魔王の器ではない。魔王とは非情になりたとえ親族でも殺せないといけない」
青年は剣を少年に向け、いきなり襲いかかってくる。少年は鋭い重い剣劇を完全に受け止めることができず壁に叩きつけられる。
「お前に代わって俺が目にかけている奴を魔王にする。心配するな、お前は殺さないでいかしておこう。けどお前は魔王殺しとして咎人としてこの新しい国に奉仕してもらおう」
剣を鞘にしまい青年は踵を返して、火の粉が待っている赤い炎の中に消えていった。