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Brave Hearts  作者: 九JACK
黄のテイカーたち
9/127

第6話 情報屋 サバーニャ

「へえ、青のテイカーと白のテイカーね。青も白も戦ったことあるわ」

「えー、羨ましい! 俺、純冷とは戦ったけど、裕弥とは戦う前に離れちゃって……」

 昴は今、アミ、ハンナと共に馬車で黄の街[オール]に向かっていた。

 その馬車の中でお互いに情報交換し合っていた。

「で、今探してるのがその裕弥って子?」

「うん。召喚されたテイカーの中で、一番早くアイゼリヤに来たらしいよ。それに、ブレイブハーツ、すっごい強いんだ」

「昴くんが来る前はタウンショップ一のテイカーだったそうね」

 ハンナはシンから聞いて知っていたようだ。

「ふーん。あたし、白使いは苦手なんだけど、是非とも会ってみたいわね。一番最初にこっちに来たんなら、ヘレナのこと、あたしたちより詳しいかもしれないし」

 アミの一言に昴は苦笑いした。

「それは期待できないよ。裕弥は記憶喪失だって言ってた。初めて会ったときも、道に迷って森で寝てたから」

「何その天然」

 アミが信じられないというように青ざめる。

 昴はそこで裕弥の話を切り上げ、アミにアイゼリヤについて訊いた。

 アイゼリヤは主に五つの地域に分かれている。ブレイブハーツの属性と同じ色分けだ。

 昴がいた赤の街[エシュ]はアイゼリヤの南に位置する。今向かっている黄の街[オール]はアイゼリヤの中央都市だ。エシュからは北にある。

 更に北に行くと、黒の街、西には白の街、東は青の街、という感じで、黄の街を中心に東西南北で分かれているのだ。

 決して、その五つの地方同士が争っているわけではない。昴たちが参加することになったブレイブハーツウォーズはあくまで個人個人の戦いだ。ヘレナが示した、勝者の願いを何でも叶えるという条件を目指して。

「本当、ブレイブハーツウォーズは一対一よ。仕事で色んな街を回ったけど、強いやつはみんな一人で戦ってる。最近は何人かで組織クラン組んでやる人も出てきたけど、烏合の衆よ。まさしくね」

 アミの言葉は辛辣だったが、事実ではあった。

「カードゲームって、そうだよね……徒党を組んでやるようなものではないよ。でも、ゲーム仲間っていう感じなら、ありだと思うな。戦って、切磋琢磨するって」

「あんたそういうの好きそうね。馴れ合いっていうか、仲間となんちゃらってのが」

 何故か不機嫌そうにアミが言う。昴は首を傾げた。

「アミは仲間とか、友達とかは、嫌?」

「うんざりよ……」

 アミは機嫌悪そうに目を細めて、何か思い出したのか、盛大にため息を吐いた。

「そろそろよ」

 微妙な空気になりかけたところにハンナの声がかかる。

 黄の街[オール]に着いた。


 黄の街オールは商業都市。アイゼリヤの他の地域と比べて、黄の地域は人口が多く、賑わっている。

 アミはアルーカに送り出され、この街に出たという。

「ラテンっていう喫茶店でハンナに会って、ブレイブハーツをしたの。機嫌よく歌ってたら、アイドル、いいんじゃないかって。だから今こんなんやってるの」

「へえ。アミ、歌上手いよね。イベントの時も盛り上げ方上手かったし。元の世界では何してたの?」

 昴が何気なく訊く。するとアミは何故かむすっとした顔で黙り込んでしまった。

「……黙秘するわ」

 長い沈黙のあと、アミは低い声で答えた。昴は不審に思ったが、それ以上は聞かなかった。触らぬ神になんとやらだ。

「とりあえず、このオールは商業都市で人も多く集まるから、情報集めにはうってつけよ」

 気まずい沈黙になる前にハンナが言った。

「じゃあ、この街で一番大きいカードショップに行こう」

「……なんでカードショップ?」

 昴の提案にアミが問う。

「アイゼリヤで一番人が集まるのがカードショップじゃないかと思って。エシュでもそうだったし」

「なるほどね。カードゲームがしたいからなんて言い出すのかと思ったわ」

「もちろん、それも目的だよ!」

 昴は息を弾ませて答える。アミは呆気にとられ、表情が固まる。

「もしかしたら、とは思っていたけど、あんた、相当なカード馬鹿ね……」

 アミの呟きは昴には届かなかったらしい。さくさくとハンナに道を聞き、カードショップへまっしぐらだ。

「ほら、アミも早く」

 昴に急かされて着いたのは[楓の社]というカードショップだ。

 昴は中にどんなテイカーがいるのか、楽しみで仕方がない。


「こんにちは!」


 昴たちが入っていくと中はわっと盛り上がっていた。人が多い。その中心ではブレイブハーツが行われているようだ。昴は人混みを掻き分け、その中へ入っていく。

「何何? 誰が戦ってるの?」

「情報屋のサバーニャだよ!」

 昴の問いに誰かが答えてくれた。

「サバーニャ?」

「なんだあ? サバーニャも知らないのか? ブレイブハーツと交換で情報を売る猫獣人だよ! 只今連戦連勝中なんだ!!」

 興奮気味にその声は教えてくれた。

「連戦連勝? 強いんだ! 俺も戦ってみたい……」

「あんたねえ……」

 呆れたように追いついたアミがこぼす。

「だってさ、強いんだよ? わくわくしない?」

「このブレイブハーツ馬鹿……」

 理解に苦しむわ、とアミはテーブルの戦いに目を向ける。昴は特に意に介した様子もなく、テーブルを見る。

「さあ、攻撃よ! 我が相棒、[クリスタ]行きなさい!!」

 灰色の髪に灰色の耳を持つ猫獣人の少女が叫ぶ。彼女は黄属性使いのようだ。

 彼女のセンターのアタックでフィナーレを迎える。

「ツァホーブ!」

 勝利した少女が唱えると、それに応じて細い稲妻が対戦相手のもとに落ちる。

「あの子がサバーニャ……」

 サバーニャは辺りを見回す。

「さ、次の相手は誰?」


「俺っ!!」

 昴は人混みの中から思い切り手を挙げた。しんとしていた店内に昴の声はよく通った。

「あなたは?」

 サバーニャが昴に訊ねた。

「俺、紅月 昴。対戦お願いします!」

 昴は人混みから抜け出し、答えた。

 サバーニャは不思議なものを見るような目で昴の爪先から頭のてっぺんまで見回した。

 不意に笑った。

「ふふふっ、面白い子。いいわ、戦いましょう!」

 昴はテーブルについた。デッキをセットする。サバーニャがアイコンタクトした。

 ──行くよ!

 昴は頷く。


「Brave Hearts,Ready?」

「「Go!!」」


「BURN」

「宝物庫の守り神 クリスタ」

 二人がリバースメインアーミーを開くと、辺りの景色が一変する。水の湧く古代の神殿のような場所。神殿、といっても、建物は蔦や枝に覆われている。それが却って神秘的な雰囲気を引き立てている。

「わぁ、凄いや。でも、さっきは普通にテーブルだったよね?」

「この店のシステムは最先端なの。店主がアイゼリヤでもきっての魔法使いでね。あ、本人は知られたがっていないから、内緒よ?」

「いや、ここで言ったら……」

「大丈夫。外には聞こえないよ。外にはわたしたちのゲームの様子しか見えないの。ブレイブハーツのプレイの間、私たちは仮想空間に隔離されてる」

「あ、だから終了後の魔法を使っても大丈夫なんだね」

「そういうこと」

 エシュのタウンショップでは店内では魔法を使えなかった。もちろん、勝者にはきちんとハーツポイントが与えられたが。魔法で映し出された臨場感溢れるあの感覚が好きな昴は、このフィールドにわくわくを隠せずにいた。

「俺のターン、ドロー」

「あなた、ブレイブハーツ好きなの?」

 うきうきとプレイする昴にサバーニャが訊ねる。昴は勢いよく首を縦に振る。

「楽しいし、負けたら悔しいけど……やっぱり楽しいし!」

「面白い子」

 サバーニャも楽しそうだ。

「チューンシーン。エッジスナイプドラゴンをアブソープション! 能力で山札の上を公開。[古の竜 パドラ]をアドベント。バックアップを1枚セットし、ターンエンド」

「赤使いなのね。ドロー」

 サバーニャは興味深げに昴のBURNを見る。

「紅月 昴くん。あなたの名前は聞いたことがあるわ。なんでも、エシュのタウンショップでは負けなし。あのアイドルテイカー、ブレイカーアミのナイト役でイベントは大盛況。一緒にいたのがそのアミちゃんでしょ?」

 昴はぎょっとした。

「驚いた? 情報屋の名は伊達じゃないのよ」

 サバーニャは得意げに笑った。


 ターンが進む。

「チューンシーン。[祈りの女神 サアヤ]をアブソープション。[守り人 エリク]をアドベント」

「……サバーニャは、神様デッキ?」

 昴は現れたアーミーたちの神々しい姿に呟くように訊ねた。

「うん、そうよ。わたしは元々、神話の研究者なの。ヘレナ様にもいつかお会いしたいわ。でも、世界は今、ブレイブハーツのせいで大変なことになってる」

 わたしはね、とサバーニャは続けた。

「情報を売りながら、情報を集めているの。神殿に閉じ込められているヘレナ様がこのままでは可哀想だもの」

「ヘレナさん、閉じ込められてるの!?」

 昴は思わず聞き返した。おっと、とサバーニャは軽く手で口を覆った。

「情報はブレイブハーツが終わったら。っていうか、あなた、ヘレナ様のこと、さん付け? どういう関係よ?」

「ええっと……」

 昴は説明すべきか迷い、言葉に詰まった。サバーニャはいいわ、と微笑み、バトルシーンに移る。

「行きなさい、エリク、クリスタ!」

 クリスタのコマンドチェックでリプレイコマンドが出る。エリクが立ち上がり、もう一度BURNに攻撃する。 昴はシェルターした。

「ターンエンド」

 昴へとターンが回る。


「ターンアップ、ドロー」

 昴はサバーニャの後方に立つクリスタを見た。

「さっき、君はクリスタを相棒って言ってたよね?」

「ええ。クリスタはわたしの相棒。友達よ」

「実在するの?」

「そんなこと、問題じゃないわ」

 サバーニャはクリスタの白い手に触れる。実際はホログラムなので触った感覚はないはずだが、昴には確かに触れているように見えた。

「ブレイブハーツがヘレナ様によって広められたのは知ってるよね? わたしとクリスタはその時からずっと一緒なの」

 最初から、ずっと。

 昴はなんとなくサバーニャの言いたいことがわかった。

「わたしはね、クリスタに出会ったからブレイブハーツをしている。友達だもの。会ったときから運命を感じてる。あなたはそういうこと、ない?」

 昴は聞き返され、中央のサークルのBURNを見る。

 昴はアルーカに五つのデッキを示した時、昴は導かれるようにこのデッキを選んだ。──確かに、運命だったのかもしれない。

「そういうの、いいよね」

 運命とか、曖昧だけれど……そういうものを信じて戦える。昴は何かそれが嬉しかった。

 俺の夢も、そんな風に見つかったらいいのに──

「フィールドカード、炎竜の咆哮をセット」

 運命、か。

「……俺、まだ運命かどうかはわからないけど、ブレイブハーツって楽しいって思う」

 昴はリバースバックアップを一枚セットし、バトルシーンへ。

「パドラでエリクを攻撃!」

 パドラはバックアップがいない。だからクリスタには攻撃が届かない。だからエリクを攻撃するのだ。

 エリクは退却する。

「BURN、クリスタを攻撃!」

 サバーニャに一ダメージ。昴はターンエンドを宣言した。

「わたしのターンアップ、ドロー」


「ここでサアヤのアブソープションアビリティ。山札の上を公開」

 公開されたカードは[愛の語り部 ハイネ]。正規兵アーミーで種族は神。

「公開されたカードが神だったため、相手のアーミーを一枚破壊できる。古の竜 パドラ、退場願うわ!」

 サアヤの光の加護を受けたクリスタが、パドラに狙いを定め、矢を放つ。

「くっ……でも、バックアップオープン!」

 パドラの後方にあったバックアップが開かれる。[古の竜 イズマ]。オープン条件は前列のアーミーが破壊されること。

「イズマのオープン時能力で、イズマは前列に移動し、パワーアップ。シェルターサークルへの移動能力も得る」

「それだけじゃないわね」

 そう、昴のフィールドには炎竜の咆哮がセットされている。つまり──ドラゴンの連鎖だ。

「来い、クリムゾンフレア、火種の竜 アラク!」

 三枚目は[竜の友 サイ]のため、連鎖はここで止まる。

「わたしのターンに自陣の陣形を整えるなんて、大胆ね。でも、世の中そんなに甘くないよ!」

 サバーニャはカードを掲げた。

「フィールドカード[神々の祝宴]をセット!」

 黄属性のフィールド[神々の祝宴]は、相手の空きサークル一つにつきセンターの神を3000パワーアップする。

「この時神として数えるのはクリスタだけじゃないわ。アブソープションのサアヤもまた神。よって合計プラス6000になる」

 しかもこの能力は[相手の空きサークル一つにつき]だ。昴の空きサークルは今のところ一つだが、破壊系アビリティの多い黄属性デッキが相手だ。下手をしたらとんでもないパワーになる。

「さっきサアヤの能力で手に入れたハイネをアドベントし、バトルシーン!」

 ハイネはフィールドカードがセットされている時、パワーアップする。単体でもその矛先はBURNに届いた。

「イズマをシェルターサークルに移動!」

 たまらず昴はシェルターする。しかし、イズマがシェルターサークルに出たことでイズマのいたサークルが空いてしまった。

「クリスタとサアヤは更なる力を手に入れるーーBURNに攻撃!」

クリスタのコマンドチェックは──クリティカル。

 昴は四ダメージ目。後がない。

「ターンエンド。……ところでさ」

 サバーニャは昴に訊ねる。

「あなたがわたしに勝った時、欲しい情報って何?」


 サバーニャの問いに昴はうーん、と悩んで

「とりあえず、この勝負が終わったらでいいよ」

 そう答えた。

 サバーニャは唖然とする。昴は構わずターンを進めた。

「ターンアップ、ドロー。ねえ、サバーニャは、ブレイブハーツ、どう思う?」

「どうって?」

「楽しい?」

 昴の質問にサバーニャはきょとんとしてしまう。昴は答えを待たずに俺はね、と続けた。

「ヘレナさんが作ったゲームって聞いて、すっごい吃驚したんだ。でも楽しい。俺、色んなゲームやって、色んな遊びをして、勉強して……大体人並みにこなせて、でも特にこれって言えるものがなくて、悩んでた」

 なんで知り合ったばかりの異世界の女の子にこんな話をしているんだろう、と昴はちょっとおかしくなった。きっと、他には誰も聞いてないという安心感が手伝っているのだ。

 昴は続けた。

「俺、将来の夢が思い描けなくてさ。夢が、願いがないんだよ。そんな時、ブレイブハーツに出会った」

 これはもしかしたら、運命だったのかもしれない。

「俺、楽しいんだ。この世界はこのゲームのせいで今大変かもしれない。でも、本当は楽しいものなんだって思う。だから」

 昴はカードを掲げた。


 昴が新たに出したカードはフィールドカード[荒れ果てた大地]。サバーニャは驚く。

フィールドカードは自陣に一枚しかセットできない。情報屋の彼女はカードにも精通していた。だが、昴の使うBURNとそのフィールドは全くわからない。それに、炎竜の咆哮は数あるフィールドカードの中でもかなり使いやすく、強力なカードだ。それを破棄してまで出す新たなフィールドとは、一体ーー

 サバーニャの口端が持ち上がる。

「確かに。ブレイブハーツは楽しいわ」

 それ以上に、あなたがね──心の中で付け加える。

 昴は共感してもらえたことに目を輝かせる。意気揚々とターンを再開した。

「フィールド、荒れ果てた大地は、かつてその地に棲んでいた竜たちが再び戻ってくるのを待つ荒野。憐れな荒野に笛を鳴らしにやってくるのは──」

 山札から、呼び寄せられたのは[竜の友 ソル]。竜を呼び寄せる笛を鳴らす一族を人は[竜の友]と呼び、竜に畏敬の念を抱く者たちは竜を敬い、彼らを崇めた。

 そしてその笛の音に故郷を離れていた炎竜たちが舞い戻る。

「ソルのアビリティ。山札からドラゴンを1体呼び出す。呼び出すのは、古の竜 パドラ」

 竜の咆哮と笛の音が谺する。それは猛々しく、どこか懐かしく、何か悲しい調べだ。

「荒れ果てた大地は、竜のみではなく、友を呼び戻した竜の友たちにも、その力を与える」

「なっ……その上前列後列全てのアーミーを……!?」

「また、リバースバックアップオープン」

 サバーニャは目を丸くする。そもそもリバースバックアップは基本的に相手の行動で開くものだ。任意で開くなど聞いたことがない。しかもオープンされたのは[炎霊 かぐら]。オープン条件は相手から破壊カードに指定された時だ。

「オープン条件を満たしていないけど、開いたカードがドラゴンか竜の友以外のアーミーなら、別のアーミーと取り替えることができる。こんな風に」

 かぐらは山札に戻り、志願兵のサラマンドラと入れ替わる。

「な、なんて力……」

 圧倒的なパワー。手札を消費してフィールドを埋めたサバーニャには防ぐ手立てがない。

 フルアタック。そして、BURNのコマンドチェックは──

「フレイムサラマンドラ……クリティカルコマンドだ!!」

 僅か一ターンでの大逆転。

 昴は勝利した。

「アドム!」

 サバーニャはどこか清々しい表情でその炎を受けた。


「……で、結局何の情報が欲しかったの?」

 フィールドが解けないうちにとサバーニャが訊いた。昴はうーん、と頭を掻いて答える。

「実は、特にこれっていうのが思い浮かばないんだ。それより、ブレイブハーツ、楽しかった。ありがとうございました」

 昴はそう言って、手を差し出す。サバーニャはその手を見つめ、しばらく黙り──不意に噴き出した。

 昴は目を白黒させる。

「え? え? 何か面白いところあった? 俺、全然わかんないんだけど」

「あはははは! ……ん、失礼。純粋にブレイブハーツだけなんて、本当、久しぶりだったから」

 サバーニャはそう言って手を取った。

「こちらこそ、ありがとう」


 店の特殊フィールドが解けると、喝采の嵐だった。

「昴、やったわね!」

 アミが駆け寄る。昴はありがとうと言いながらはいタッチした。

「で? サバーニャに何か訊いたの?」

「いや、何も」

「あほ!」

 昴の即答にアミが呆れる。昴はわからず首を傾げる。

「だって、ブレイブハーツ、楽しかったし」

「だーっ! あんたここに何しに来たのよ!? 情報集めでしょう!? 裕弥ってテイカーの手掛かり、会うために探すんでしょう!? 当初の目的忘れてどうすんの!!」

 アミの言葉に昴ははっとする。裕弥のことを忘れていた……というわけではないが、手掛かりをサバーニャから得るという手段があるのに気づいていなかった。

「あら、人探し? なら、相談に乗るわ」

「えっ、いいの? さっきは欲しい情報ないって言っちゃったのに」

 サバーニャは微笑む。

「いいのいいの。楽しいゲームのお礼よ。それとは別に、わたしも知りたいことがあるの。知ってたらでいいから教えて」

「うん、いいよ」

 昴の安請け合いにアミがずっこけるが、もう突っ込むのはやめた。紅月 昴はこういうやつだと諦めた。

 昴にありがとうとにこやかに言い、サバーニャは訊いた。

「アルーカっていう猫の獣人知ってる?」


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