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第八話:変なことに巻き込まれる鏡輔

八、

 放課後、僕は一人で教室に残っていた。別に何かあるでもないし・・・・ただ、なんとなく暇だったからだ。まぁ、暇なら勉強でもしていろという話だが・・・他の人たちはどこかに行ってしまったのだろうか?僕が視線を動かす先に誰かがいるということもない。

「・・・そろそろ、帰ろうかな?」

「おいおい、一人でそんな風に教室でつぶやいていると危ない人だと思われるぞ、鏡輔」

 声のしたほう・・・掃除用具のほうを見ると、掃除用具が開いて中から父さんが現れた。

「・・・父さん・・・」

「よ、久しぶりだな。ちょっと、時間ができてお前の様子を見てこようと思ってきただけだ。悪いが、この状況を詳しく話せるほど俺は暇じゃないんだ」

 父さんは近くの机に座る。そういえば、父さんはこの学校の保健室の主でもあった気がする・・・・しかし、それが掃除箱からの登場という意味不明なことに繋がるだろうか?

「父さん、保健室に行かなくていいの?」

「・・ああ、そうだったな・・・だが、代わりがいるし、俺が今首を突っ込んでいることは校長からの要請でもあるからなぁ。そこのところは校長が何とかするだろう」

 そういって父さんは僕の顔をまじまじと眺めて眉をしかめる。

「・・・俺としては正直言ってお前に危ないような真似させたくなかったんだけどなぁ・・・これも、関わったらずっと続いていくんだろうなぁ・・・まぁ、いいや。鏡輔、家に帰ったら俺の部屋の机にあるノートを見てろ。それで大体のことがわかるんじゃないかと思う。あれは俺なりの研究結果という奴だ」

 そういって父さんは手を振りながら掃除用具入れに帰っていった。こういうところが本当に僕の父親なのか信じられない。父さんが消えて、今までそのことを言わずに黙っていた僕はその不思議な掃除用具を開けてみたのだが・・普通の掃除用具は普通のままだった。

「・・・まぁ、しょうがないかな?」

 一人で掃除用具の前に立っているとシルバがやってきた。

「・・・・鏡輔さん、なにしているんですか?」

「え・・・あぁ、これね・・・これは・・・まぁ、用具入れの片づけだよ」

「へぇ、がんばりますねぇ・・・そろそろ帰りません?」

 これ以上変なこと(もしかしたら黒板がいきなり開閉して母さんが現れるかもしれない)が起きないように僕はシルバと共に鞄を取って教室を後にしたのであった。


「鏡輔・・・あら、どうやら出遅れちゃったみたいね」

と、母さんが誰かの机から出てきたという話は後で聞いた話だ。


 ダークは既に帰っているようで・・・僕はシルバと二人で一緒に帰っていた。

「・・・へぇ、そうなんですか!」

「・・・うん、しょうがないけど・・そうなんだ・・・」

 普通の話をしながら僕達はそのまま家に帰りつく。いいにおいがしているところを見るとダークが料理をしているようだった。

「・・ふむ、今日はなかなかいいスープができそうだぞ。鏡輔、お前は早く手を洗って来い。カオスさんは既に準備完了だ」

「早くしてくださいね。あんまり遅いと鏡輔君を食べますよ」

「・・・・わかった、手早く済ませてくるよ」

「・・・それも大事だが、きちんと洗ってこいよ?腹痛はもうかんべんしてくれ」

 微妙にこの前のことを引きずっているのか知らないがそんなことをいいながらダークは僕に告げたのであった。

「シルバ、僕は先に荷物を置いてくるから鞄貸して?おいてくるからさ」

「そうですか?すみません」

 渡された鞄が異様に重いことを気にしながら僕はそのまま二階の部屋へと上がっていった。

「ふぅ、ここにおけばいいよなぁ・・・でも、さすがに三人でこの部屋一つって言うのは・・・やっぱり狭いかな?」

 いつの間にか僕の部屋は僕を含めて四人の共同部屋となってしまっている。それぞれの趣味のものが気がつけばあふれている。シルバは花、ダークはマニアックなもの、カオスは伝統工芸品を集めまくっている。ここにはあの本を置けないし・・・かといって誰かと相部屋のままもいろいろとやばい。

「・・・ここはやっぱり男の僕がどいたほうがいいかな?」

 これが一番の得策だろうと思って僕は立ち上がってその話をするために下に降りたのであった。


「・・・・ごちそうさま・・・」

 食後、テレビを見ながらゆったりしていた三人に僕は部屋のことを提案することにした。

「・・・急遽、会議を開きたいと思います・・・」

「会議・・・ですか?」

「ふむ、議題は何だ?」

「面白そうですねぇ」

 三者三様の賛成意見に僕は咳払いをひとつ・・・

「・・・部屋が狭くなってきたから僕は隣の部屋に移動します」

 そういうとううむと唸る三人。

「・・・隣は誰の部屋でしたっけ?」

「確か、空室だったな」

「でも、今のままでいいんじゃないんですか?」

「「うんうん」」

 うなずく二人と僕が移動することに反対しているような感じを見せるカオス。

「狭いのなら部屋を掃除すればいいんですよ!皆さんは変なものを集めすぎだと私は思いますけど?」

「む、それは聞き捨てなりません・・・悪いですけど、花よりまともかと・・」

 あれはどうかと思うけどなぁと思いながら僕は黙っていた。

「・・・私の漆塗りは捨てませんよ。あと、こけしも捨てません」

 そんなことを言っている彼女たちに僕は一つの提案を思いついて早速提案してみた。

「・・・あのさぁ、あの部屋は勉強と寝室にして・・・当然、僕は別の部屋で寝るけど・・そっちの空室のほうにみんなの大切にしているものを置いたらどうかな?」


 結果として、その案は賛成され、僕は自分の分の荷物を置いて今度は父さんが言っていたことを思い出した。

 部屋に入り、机の上に置かれていた一冊のノートを手にする。

「・・・『ザリガニの育て方』・・・いや、これじゃないな、こっちだな」

 僕の手には古ぼけた一冊のノートが収まっていた。題名は『龍について』と書かれている。この本がふざけた内容でなければ、父さんは龍の存在を知っているということである。

「・・・・俺なりに手に入れた情報や爺さんから聞いた話(一部、嘘だと思われる。)をまとめると、この世界に存在している龍はおのおのの力の象徴だという結果にたどり着く。龍から人へと姿を変えるのはそちらのほうが力の配給率が高くなるらしく、龍の状態から人型へとなったときに余った分は見えない力として蓄積される。つまり、巨大な龍が子供へと姿を変えればその分、見えない力は強大となるのである・・・・」

 そのノートにはそんな感じに書かれていたのだった・・・・

「・・・あとは、爺さんに聞けばわかるだろう・・・じいさんに会いに行くには・・・」

 爺さん?ああ、父さんにとってのお爺さんがいまだに生きていたなんてぜんぜん知らなかったなぁ・・・意外と、長寿かもしれない。

「・・・天国あたりにいけば会えることができるだろう」

 前言撤回、父さんの爺ちゃんは既に天に召されているじゃないか!そもそも、このノートが実際に本当なのかどうか確かめることも無理だと思うしなぁ・・・ノートのほうには

「龍である者もその事実を詳しく知らないらしく、目が覚めればこの世界にいることが多いということだった。龍が現れる前兆として、たとえば、雷が落ちたところにたまたま龍が現れたという話を聞いたり、雨が降った後に現れた・・・というものもある」らしいので、捜しにいっても無駄なのかもしれないなぁ。まぁ、この程度のことをいまさら僕が調べようなんて無理なことかもしれないし、ここは一つあきらめたほうがいいのかもしれない・・・・僕はそんなことを思って父さんのノートを静かに閉じたのであった。


 その夜、僕は他の部屋で寝ることにしたのであった。無論、彼女でもなんでもない少女(一応、人間じゃないが・・)の隣に枕を転がすことなどできず・・・他の部屋で寝ることになった。ふ、へたれな僕を笑うがいいさ・・・

 何をどう思ったのか・・・僕は一階の廊下へとやってきた。このあたりは風がよく通るので快い眠りが僕を誘ってくれるに違いない。

「・・・おやすみ・・・」

 誰に言うでもなく、僕は一人で夢見心地にはいったのだが・・・・


ゴトリ・・・・


という音が二階から聞こえてきた・・・と思うと、急になんだか怖くなってきた。高校生にもなってお化けが怖いというものもどうしたものかと思うだろうが・・・お化けにはパンチが当たらないだろう・・・倒せない相手に恐怖を覚えるのは当然のことだ。(例:殴った相手が

「もっと!もっと殴ってくれぇ!」と言う・・これは怖い!)

「・・・・ごくり・・・」

 生唾を飲み込み、僕は廊下を静かに移動する。近くにあった部屋に転がるようにはいって、耳を澄ますと・・・なぞの人物?は僕が先ほどいた廊下辺りで動きを止めたようだ。どうにも、僕の体温を感じ取っているらしい・・・うわ、こいつは人間じゃない気がするぞ!


ゴトリ・・・


 再び動き出した謎の生命体は間違いなく、こちらへとやってきた。僕はそろそろ心の準備をして相手を迎える準備をする。


ゴトリ・・・ゴトリ・・・


 しかし、予想に反して相手は締め切っていた扉の目の前を歩いていった。

「ふぅ・・・・」


がしっ!


 油断しきっていた僕の足を誰かが掴む・・・

「ひぃっ!!」

 間抜けな声が自分の声から出たことに気がつくこともなく、僕はその場に倒れた。僕の足を掴んだ奴のせいで、仰向けに倒れる。僕は腰が抜けてしまったことのみを確認して機を失ってしまったのであった。


 次の日、僕は目を覚ました。

「・・・・ぐぅ〜・・・」

「・・・・」

 目の前にはシルバの顔があった。僕に抱きつくような感じで眠っている。近くには何故か、壷に入っているカオスの姿もあった。その隣にはダークが布団を纏って寝ている。

「・・・なんだってんだ?」

「・・・うぁ・・・」

 どうやら、抱きしめているシルバ目を覚ましたようで・・僕はあわてて離れようとしたのだが離れられなかった。

「・・・鏡輔さんですか・・おはようございます」

「あ・・・う、うん・・・これは違うんだ!」

「?」

 そういってようやく僕は離れることができたのだった。その光景をみてシルバは眠たそうに目をこすると・・・体を動かしていた。

「・・・ああ、すみません。私たちはどうにも、契約した後は鏡輔さんが近くにいないとどうにも・・・不安になってしまうんです。せっかく寝ていた鏡輔さんには悪いですが・・一緒に寝させたもらったんです」

 つまり、昨日のあれは考えてみれば不自然なことではなかったのか?

「・・・・ねぇ、シルバ・・・」

「何ですか?別に鏡輔さんには何もしてませんよ。彼女ができたら、そりゃまぁ・・・一緒に寝ることは控えますがね・・・ええ、彼女ができるまでは一緒に枕を並べる所存です」

 寝起きが弱いのかどうかしらないが、意味不明なことを口走っているシルバにたずねることにした。

「・・・三人で一緒に来たの?」

「ええ、確かに三人で来ましたけど・・壷に入って寝ていたカオスさんは寝ぼけていたのか知りませんが・・・そのままの状態(壷入り)で階段を器用に下りていましたよ・・ダークさんは闇にまぎれてしまいましたけどね・・・私も眠かったので鏡輔さんの気配をたどって床にはいつくばってきましたけど・・」

 どうやら、足首を掴んだのはシルバだったようだ。

「・・・でも、鏡輔さんを見つけたときは既に、仰向けで寝ているようでした。だから、失礼ながらご一緒させてもらっただけです」

「・・・・」


 もしかしたら、昨日のあれは別のものかもしれない・・・・


さてさて、今回から鏡輔は厄介なことに巻き込まれていくと共に・・・シルバたちとの間を気にし始めます。コメディー要素が少なすぎると思っている方、これからは自分なりに気合を入れていきますんで、応援よろしくお願いします。

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